新しいゴーレム
二週間後。セレーネは、錬金術の実験室でゴーレムの製造を行っていた。現在作っているゴーレムは、通常の倉庫整理用のゴーレムではなく一風変わったゴーレムとなる。そのゴーレムは、鳥型ゴーレムだった。
基本的に生産魔術による金属成形で形を作っていき、基本は【熱接合】という火属性の生産魔術を利用して溶接していく事で形を作っていく。
そうした熱い作業をするために、セレーネはカノンから難燃性素材の服を着させられている。その上から厚いエプロンもしているので、セレーネにとっては、重く熱いという状態になっていた。
それでもそれはセレーネを守るための服であるために大人しく着ていた。
同じ実験室にて、フェリシアはその様子を見ながら、自分の作業をしていた。海の防衛用の装置を作っているのだ。そうした作業は、あまり慣れていないものの少しずつコツを掴んでおり、しっかりとしたものを作れるようになっている。
「その鳥型ゴーレムって完成しそうなのかしら?」
「う~ん……思ったよりも大きくなって困ってるところ。魔術陣をもっと最適化した方が良さそう。コアが大き過ぎるんだよねぇ」
「頭に搭載するからじゃないのよね?」
「うん。これがコアだから。人の頭とほぼ同じなんだよね。そうなると、ちょっと大きすぎるって感じ。普通の小さな鳥は人の頭くらいの大きさしかないでしょ? 大型の鳥にしても大きすぎるし、ほとんど魔物と同じくらいの大きさになっちゃうんだよね。でも、偵察とかをさせたいから機能的には今の状態じゃないと意味がないんだよなぁ。むぅ……発想自体は良いと思うのに……」
セレーネが鳥型ゴーレムを作ろうと思った経緯は、自分達の領地が外敵が来た際の壁になるという事を考えたからだった。【空間探知】で調べるという方法もあるが、それではある程度の形と数しか分からないという問題がある。
それを考えて、見た情報を思考機に送って【投影結界】で確認するという方式を取ろうとしていた。情報の送受信は同期術式を利用する。だが、【思考演算】を使いつつ情報を的確に処理するためには、ある程度のコアが必要になってしまう。更に言えば、見ている内容を【投影結界】に映すという関係上、【思考演算】の他にも魔術を使う必要がある。
「う~ん……視界をなくすか……そうしたら大分軽くなるけど、そもそも作る意味が無くなるんだよね。どうしよう……」
「偵察用と考えると、見えている方が都合が良いのよね。それ以外で考えると、鳥型ゴーレムを中心に【空間探知】を使わせるって方法もあるわね」
「それって意味ある? あ、そっか。【空間探知】は中心から放射状に放たれるから、敵の近くで発動させる方が早く調べられるのか。でも、場所の問題もあるよね。【投影結界】にいきなり海が映し出されても、どの海か判別しにくいし」
「浜辺とゴーレムの両方で【空間探知】をして、情報精度を高めるのはどうかしら?」
フェリシアの提案に対して、セレーネは首を横に振る。
「逆に交錯するかな。【空間探知】は情報を常時更新するものじゃなくて、定期更新でしょ? まぁ、探知用の膜を放つ関係上仕方ないんだけど、二つの【空間探知】を一つの【投影結界】に反映させる場合、二つに情報が同時に表示されるようになるの。そもそも人物の識別とかが出来る訳でもないから、相手が常に動いていたら実際の人数よりも多くなっちゃったりしそうなんだよね」
【空間探知】の仕様上、フェリシアの提案では【投影結界】に上手く反映させる事が出来ない。索敵という役目からそれぞれの検知結果をそれぞれで反映させるのは、迅速且つ正確な情報には出来ないというようにセレーネは考えていた。
「なるほど。その分析機能も入れたら、余計に大きくなるものね。思考機で判別しようにも下手な処理になったら、混乱の素ね」
フェリシアもセレーネが懸念している事に納得する。これを解決する方法は、セレーネが目指している小型化を妨げるものになる。それどころか、現在のセレーネの身体と同じくらいの大きさよりも更に大きくなってしまう可能性があった。
「う~ん……ひとまずこれで起動するかの実験はしたいから完成させるかな。小型化とか諸々はその後!」
セレーネはそう言って工具を手に取り、鳥型ゴーレムを仕上げていく。鳥型ゴーレムは、羽が本体から僅かに離れた状態になっている。これは、【座標指定】を利用して羽が持ち上がると本体も持ち上がるようになっている。接合部分への負担をなくし、軽量化をするためのものだ。全体的に軽量金属で出来ているので、攻撃されてしまえば一溜まりもない。
そのため戦闘は前提として作ってはいなかった。偵察専用のものとしているために攻撃を受ける事を想定しては作っていない。そもそも攻撃を受ける前提の耐久性を持たせると、浮かせるための力が多く必要になる。それは偵察向きではないと判断された。
最悪【装甲結界】を付けるという事も考えているが、消費魔力の関係でギリギリになるため現在は外されていた。
「結局大きいから結構重いかな……カノン」
「はい」
セレーネはカノンに鳥型ゴーレムを持ち上げて貰う。そして、体重計に鳥型ゴーレムを乗せて重さを測定する。
「…………まぁ、許容範囲内か。羽の重さは含まれていないってところも大丈夫そうかな」
【座標指定】によって固定されているだけなので、本体を体重計に乗せたところで、羽の分の重さは加算されない。
それを確認したセレーネは、最終調整を重ねていく。風の抵抗を受けてしまいそうな部分などを見極めていき、調整を重ねる事でしっかりと飛べるようにしていった。
「よし。【流線結界】も問題ない。これで風の抵抗は大丈夫なはず。簡易型思考機とも繋げてある。良し! 飛行試験に移ろう!」
「いってらっしゃい」
フェリシアに見送られて、セレーネはカノンと共に外へと向かっていった。見送ったフェリシアは、自分の作業に戻っていく。




