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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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変わらずのセレーネ

 二週間後。【記録媒体】の安全な小型化の目処が立たないため、セレーネは別の研究を進めていた。その研究は属性魔術の研究であり、主に闇魔術に関するものだった。

 セレーネの戦闘スタイルは、氷と闇の複合魔術を使うものだ。その中で氷魔術は水魔術の派生系という事もあって、フェリシアほどではないが精通している。しかし、闇魔術の方は授業で習った理解度で止まっているために、自分で研究する事にしたのだ。

 戦闘魔術の研究も含まれるので、セレーネは街の敷地外での研究となる。カノンのみ付き添いで付いてきている。その関係で闇魔術の復習も行っていた。


「大分闇の操作にも慣れてきたかな」

「これらが戦闘以外にも役立てる事が出来れば良いのですが」

「闇の特性は暗闇と吸収と消失だもんね。ナタリアが作ったみたいな選別して消失させるみたいな方式じゃないと、あまり役に立たないかもしれないね。ゴミ処理にも使われてるけど、同じようなやり方だし」

「そうですね。今日でおさらいは終わりになります。何か新しいものは掴めましたか?」

「う~ん……」


 セレーネは腕を組みながら、何か新しいものに繋がる事はあるか考え始める。


「う~ん……改めて考えてみると、戦闘魔術ばかりが思い付くかな。例えば、これ」


 セレーネは即興で魔術を組んで発動する。すると、薄い闇のヴェールのようなものが草原の上に広がっていった。


「これは?」

「ヴェールに触れた対象の生気を失わせるもの。ほら、植物も元気が無くなってるでしょ?」

「確かに、触れた植物と他の植物では違うような気がしますね」

「闇を濃くすれば、全てを削り取るようなヴェールになるかな」

「こちらは複合魔術ですか?」

「うん。空間魔術とね。【空間探知】の空間を読み取る時の広がりを闇に置き換えたの。広がる方向をある程度制限できるから、一人で戦う時には便利かもね」


 セレーネが真っ先に思い付く魔術は、得意魔術である空間魔術に関係したものになってしまう。そのためセレーネは一度頭を振って、頭の中をリセットしてから、再び考え始める。


「う~ん……闇の特性を考えると、割と組み合わせにくいね。もっと細かく考えてみるのが良いかな?」

「それも良いですが、一旦複合して様子を見ながら考えてみるのは如何でしょうか? 私も複合魔術に関しては、あまり精通していませんので」

「なるほど。確かに代表的な複合魔術は教えてもらったけど、全部はやってなかったね。試してみようか」


 セレーネは基礎的な属性と闇を合わせて、複合魔術にして使用する。

 火魔術との組み合わせでは黒い炎になり、触れるものを燃やしながら蝕む炎となった。戦闘魔術としては基礎的な複合魔術であるが、味方への被害も大きくなる可能性があるので使われてはいない。

 水魔術との組み合わせは、全てを削り取るような水流となる魔術だ。こちらも見た目は黒い水となるため、複合されている事は分かりやすい。

 風魔術との組み合わせは、過去にテレサが利用していた腐敗するような風となる魔術だ。ほとんど無差別に攻撃するような魔術であり、それを正確に操作するには風魔術を正確に操作出来るようにならなければならない。セレーネもある程度は操作出来るようになっているが、テレサほどとはいかない。

 土魔術との組み合わせは、氷魔術との組み合わせと似たようなものとなる。触れたものを削り取る岩となるだけであった。

 雷魔術との組み合わせは、着弾した場所を削り取る雷撃となる。人に命中すれば削り取られながら感電するようになる。

 光魔術との組み合わせは、そもそも発動することが出来なかった。


「あれ? そっか。光属性は、闇属性とは逆に光源と照射と復元が特性になるんだっけ。特性を調節して複合させれば……光属性の光源と照射……闇の消失を合わせれば……これでどうだ!」


 セレーネは、しっかりと特性を選択して組み合わせる事で複合魔術として完成させた。照らした先を削り取る光源を生み出したが、かなり不安定な状態だった。


「う~ん……安定しないなぁ。属性的な部分で干渉し合ってる感じ?」

「そうですね。中心となる紋が互いに干渉している可能性はあり得ます。多重魔術陣にしては如何でしょうか? 層になれば干渉し辛くなるのではないでしょうか?」

「なるほど。こういうところで、多重魔術陣が役に立つね。ちょっと待ってね」


 セレーネは、光魔術の【光球】と【闇穴】の魔術陣を調節して、多重魔術陣にしていく。

 集中したいと思ったセレーネはその場に座り込もうとしたため、カノンはセレーネを持ち上げる。そしてその状態で【空間倉庫】を開き、ゴーレム二号に対して、布を持って来るように指示を出す。

 それを草原に敷き、そこにカノンが座り膝の上にセレーネを座らせた。セレーネは、カノンを背もたれにして魔術の構築を始めていく。


(お嬢様……少し痩せたかな。色々と忙しそうに動き回っていたからなぁ。お腹周りはあまり変わってないかな。全体的に少しだけ痩せたって感じか。う~ん……お嬢様の体脂肪とかって、ギリギリ健康のラインだからなぁ。食べさせておこう)


 カノンは、【空間倉庫】からクッキーを取り出してセレーネの口に運んでいく。セレーネは当たり前のようにクッキーを食べる。セレーネとカノンは、外でも屋敷内と変わらないような状態で過ごしていく。

 そうして構築した魔術は、【闇光球】という魔術であり光の方向をある程度決める事が出来るため、無差別という訳では無い。【光球】を中心に構築したために名称は【光球】寄りになっていた。生み出す光の球も黒くなっている。


「どうだ!」

「成功ですね。多重魔術陣にしては、かなり見やすいものになっていますね」

「だね。まぁ、基礎魔術を組み合わせただけだからね。取り敢えず、魔術陣の記録だけしちゃおう。終わったらピクニック!」

「ご飯は持ってきていませんよ?」

「えぇ? むぅ……」

「また同じ機会がありましたら持ってくる事にしましょう」

「うん!」


 カノンに対しては、いつまでも変わらずお嬢様のままのセレーネだった。

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