のびのびと実験
一週間後。色々な経験をしたセレーネは、毎日の夜が楽しみになっていた。その中で、セレーネは仕事をしっかりと行っている。今はフィアンナより報告を受けている。
「それじゃあ、壁の建設は冬場よりも早く進むって事で確定して良いんだね?」
「はい。冬の寒さによる効率の低下がありましたので。そのため予定通りに街の開発を進めて良いかと思われます。なので、セレーネ様には許可を頂けると幸いです」
「うん。良いよ。総合研究室の研究棟と役所を建てるんだよね?」
「はい。ナタリアが本格的に仕事に移る事が出来るようになりますので。それと同時に月の桜桃の建設を進めるかどうかの確認をして欲しいとマリアナより受けています。如何しますか?」
「それはリーナと相談かな。私は許可を出すから、フィアンナの方からリーナに聞いておいて」
リーナからすれば、セレーネの許可がなければどうしようもないという状態になるので、先に自分から許可を出しておく事で後はリーナの判断に任せる事が出来る。
「かしこまりました。次はセレーネ様のご予定の確認です。まず本日より、しばらくの間は個人の研究を行って頂ければと思います。その間、基本的にはこちらから確認事項があり次第持ち込むという形になります」
現状、領主として土地開発の状態を把握しておけば問題はないので、マリアナはセレーネに自由な研究をして貰う事にしていた。一日の始めに報告書を読み、それ以降は研究をしつつ、都度報告があれば直接届けるという方式になる。
「しばらくの間、私は暇って事?」
「はい。ここからの書類仕事は、基本的に私かマリアナで処理が可能なものが多くなります。セレーネ様は街の開発を直接管理する訳ではありませんので」
土地開発に関しては、セレーネが付きっ切りではなく、マリアナが付きっ切りになる。だが、セレーネも全て丸投げという訳では無く、建築する建物の許可等を出す立場にある。
そのためマリアナよりその許可申請を受ける事が仕事となる。その申請もそこまでの頻度で来るわけではないので、研究をしている暇が出来るという事だった。
「そういう事からセレーネ様が動く事が減りますので、それならセレーネ様には研究をして貰った方が街のためになるとマリアナが」
「そっか。了解。それじゃあ、お言葉に甘えて屋敷の研究室にいるね。用事があったら、屋敷の方で声かけて。カノンが気付くと思うから」
「かしこまりました。では、失礼します」
フィアンナが執務室を出た後、セレーネは書類の整理などを終わらせてから、カノンと共に執務用屋敷を出て自邸に戻る。
そして、そのまま真っ直ぐ実験室に入った。
「さてと、研究して良いとは言われたものの」
「お嬢様が欲しいものを作れば良いかと思いますが」
「そうなると……今は何だろうなぁ。取り敢えず、ゴーレムの改良とリーナのためにスライム製造装置の見直しとかをしようかな。カノンも屋敷内なら自由にしていて良いよ」
「分かりました。ですが、危険な事はしないようにお願いします」
「は~い」
カノンは、今のうちにセレーネの部屋の整理をするために実験室を出た。その中でも耳だけはセレーネの事を捉えている。
「さてと……コアの調整を考えながら、スライム製造機の見直しをしよっと」
セレーネは、自分で引いたスライム製造機の設計図を広げて、実物を置く。実物を分解しながら、どこが無駄になるのかを確認して設計図に書き込んでいく。
(う~ん……実際に分解して分かるけど、大分簡易化されてるなぁ……頑張った私!! これ以上は機能の問題で簡易には出来ないかな。ここは諦めるのが良いかな。魔術陣も大分最適化されてるし、これ以上は危ないからなぁ。ゴーレムのコアの調整を集中して考える事にしよう)
スライム製造機に関しては、現状やりようがないという結論を下して、ゴーレムのコア調整に移っていった。
「心臓をコアにして、頭部を記憶領域にする。記憶領域に【記録媒体】を入れる。でも、頭部を壊されたらおしまいだよね……コアにも【記録媒体】を入れたカードは入れてあるけど、これまでの情報が失われるのは危ないもんなぁ。情報破棄機能でも付けるかな……条件起動にしたら問題は少なくなるだろうし」
セレーネは、ゴーレムのコアと頭部のみを出して、様々な調整などを施していく。何も知らない人から見れば、人の頭部を開いて弄くり回しているように見えるような状態だった。
「【記録媒体】のカードは、どんどんと小型化が出来てきているし、記憶出来る情報の数はどんどんと増やしていけるかな。まぁ、これだと耐久面に難があるんだけど」
【記録媒体】のカードは、ミュゼルが作る撮影機に差し込むために小型化を目指していたが、小型化は出来ても耐久面に問題が生じていた。元々撮影機自体が繊細なものであるために、丁寧に扱えば良いだろうとセレーネは判断しているが、なんとか耐久面の問題を解決しようと考えている最中だった。
これをゴーレムにも活かして、記憶出来る情報の量を増やすという事も考えていた。
「というか、そもそも今の状態でも困ってないから、記憶出来る量を増やす必要はないんだよなぁ……まぁ、沢山記憶出来た方が良いだろうし、色々と考えてみるかな」
セレーネは、【記録媒体】の最適化をしつつ耐久面での問題解決に向けて試行錯誤を続けていく。それはカノンが昼食のために迎えに来るまで続いた。
「お嬢様、昼食のお時間です」
「は~い」
セレーネは、道具を【空間倉庫】に入れてからカノンの元に駆け寄った。【空間倉庫】に適当に放り込めば、ゴーレムが片付けてくれるため、セレーネは基本的にそうしている。
(後でここも掃除しないと)
セレーネが散らかしているのを見たカノンは、セレーネと手を繋いで食堂へと連れて行く。
昼食を摂った後、セレーネの姿は魔術薬の実験室にあった。そこで作るのは、生長促進剤だ。今後畑を作る事になるため、そこで実験するための魔術薬を作ろうとしているのだ。
これは危険なので、他のメイドに錬金術の実験室の片付けを任せたカノンも付きっ切りになる。やる事がとっちらかってしまっているが、小型化に行き詰まりを感じたために、次の事に移って気分転換をしているところだった。
そんな風にのびのびと実験をしながら、セレーネの一日が過ぎていく。領主になって、ここまでのびのびと実験をする事は少ないので、セレーネは終始楽しげに実験をし続けた。




