三ヶ月経過
それから三ヶ月が経過した。
その間にマリアナの交渉により、ルージュ公爵領、スノーホワイト公爵領、グリーン公爵領の三領にて、調査用魔術道具の貸し出しが決まった。貸し出しの金額は、若干強気な部分があるが、それでも有用性をヒナタ、ヒルデブランドが理解しているがために、その金額で了承された。ルージュ公爵領に関しても、リンドが内容を確認し承諾している。
またヒナタとヒルデブランドの執務室に資料整理用の思考機を設置した。こちらも貸し出しという事になっている。
この二つの収入により、領地の運営費用が多く稼げるようになり、マリアナは領地での資産運用をどうするか考え始めていた。
次に交渉により借り受けたスノーホワイト公爵領の港の一部を使って、小型の調査船を運用し海洋調査が始まった。この海洋調査は、海の状態を確かめるべく、調査用魔術道具を設置するというところから始まり、聖域終わりの崖の調査も行われた。
これは、セレーネが自ら行って崖下に設置する防衛装置などの構想を行った。開発したものは、近づいたものを感知して情報を送る警報装置のようなものだ。侵入した人に対してのみ反応するものである。
次に街を囲う壁は三分の一が完成した。冬という事もあり、工事の速度が低下した事もあるため、夏前には壁は完成するだろうというように考えられている。その際に街に招待する鍛冶師や裁縫師にも声掛けを終えており、その工房の建設が始まり次第引っ越しをして貰う事に決まっていた。
この鍛冶師と裁縫師は、マリアナの同級生であり、既にそれぞれの工房で一人前判定を受ける程の人材だった。自身の工房を持つ事が夢だったため、マリアナの提案に飛びついた。
またマリアナは錬金術師と魔術薬師にも声を掛けており、それぞれの領運営でそれぞれの工房を建設するという話にもなっていた。これに関しては、セレーネも了承している。寧ろ、錬金術師や魔術薬師が増えれば、自身の考えを実現してくれるかもしれないという期待が強かった。
壁の建造の終わりに大体の目処が付いたため、建物の建設も着手し始めている。この辺りはマリアナが管理している仕事であり、セレーネはあまり関与していない。セレーネは、マリアナの案を確認して了承するという作業のみだ。
最初に建設するのは、総合研究室の研究棟及び役所だ。
これらが完成し次第、研究員と役所職員の募集を行う事になっている。この募集では、ナタリアとマリアナが面接を行う事になっている。相応しくない者は容赦なく落とす事が出来る二人なので適任という事になっている。
次にセレーネは個人的に材料を購入して、ゴーレムの製造を行っていた。これは休みの日の趣味の一環で行われている事で、屋敷の倉庫整理のためのゴーレムだ。また、ナタリアの【空間倉庫】の整理係としてプレゼントもしていた。
ナタリアには、思考機の設置方法を覚えて貰い、ルージュ公爵領、スノーホワイト公爵領、グリーン公爵領に設置して貰うという仕事をして貰ったための報酬の一部となっていた。
次にセレーネの執務屋敷に有線式の連絡用魔術道具を設置した。【思考演算】と番号識別術式による識別で、連絡を掛ける魔術道具を指定出来るようになっている。これによって、セレーネとマリアナがそれぞれの執務室にいても連絡を出せるようになっていた。
ユリーナやカノンを利用しなくても良くなるという点で、仕事の効率が良くなっている。
最後に月の頭にセレーネ達の結婚式が開かれた。王城内で執り行われる儀式を経て、四人が家族として認められる。その時にはテレサとルリナも帰ってくる事が出来たため、初めての眷属の全員集合となった。
結婚後のパーティーも執り行われ、セレーネは多くの貴族から挨拶を受ける事になった。セレーネが所有する技術のお零れを貰うために必死な貴族達のアピールをセレーネは笑いながら受け流していき、最終兵器国王を迎える事によって難を退けるに至った。
結婚し籍を入れた事によって、フェリシア達の家名はカルンスタイン・クリムソンに統一される。カルンスタインは、あくまで爵位名だが、セレーネの場合名誉貴族ではなく通常の貴族になっているため、家名の一部という判定をする事も出来る。
クリムソン家ではあるものの元々のクリムソン家から分かれた分家のような立ち位置になるため、カルンスタインを付ける事に決まったのだった。
テレサは、結婚は出来ないため、そのままクリムソンの家名を名乗る事になっている。セレーネの養子になれば家名を名乗れるが、姉であり娘であるというよく分からない状態になるために、テレサ自らがこのままで良いと主張した。
またテレサは、このままカルンスタイン領に行くという事は出来ず、また連絡用魔術道具を使うための中継基地の設営の手伝いに戻る事になった。これが出来上がる事がそのままセレーネのためになるために、テレサとしても手抜きは出来ない。
王都に帰還したタイミングで、魔術研究所の総合研究室に所属替えを行なっているため、テレサの成果が総合研究室のものになるようにもしていた。そのためテレサの実績は総合研究室にも還元される。
テレサがカルンスタイン領に帰ってくるのは、まだ先になる。
この四人の結婚は国中に広められる事になった。そして、セレーネが現在領開発をしている事とその領にて学術都市を作るという事が同時に発表される。
辺境にある領に作られる街という事もあり、民からは若干に不便になのではという声もあったが、決定事項であるために揺らぐ事はなかった。
また、貴族主義の反逆が起きた時にセレーネ達が積極的に事態収束に向けて動いていた事を目撃していた王都の住人達から、セレーネの領に住まわせて欲しいという声が上がっていた。
それを聞いたガンドルフは、引っ越しの希望者を募り、その理由を聴取してセレーネの領民として相応しいかを判断していく作業をラングリドに命じた。
良くない考えを持っての声の可能性もあるために、ここは慎重に行われている。そのガンドルフの動きによって、セレーネ達がガンドルフから期待されている事に加えて、ガンドルフに気に入られているという事が国民に知れ渡る。そもそも王女であるミュゼルがセレーネの嫁になったという事もあり、ガンドルフの動きは何ら不自然ではなかった。
結婚してからのセレーネ達の生活はあまり変わっていない。元々婚約してから同棲を続けているので、一緒に生活をするという点でも大して変わらないのだ。
更に、結婚式を終えた後に色々な作業があったため、元の生活に戻るのも早かった。




