続・ヒナタ、ヒルデブランドと会合
セレーネ達の会合の場に、カノンが軽食を並べる。食堂のメイド達に作らせたものだ。仲を深めるための会合でもあるのだから、気楽に出来るようにという配慮だった。
「あら、美味しいわね」
「うちのメイド達特製です。私が好き嫌いをしないからか、色々なものを作るんです。これは私が気に入ったサンドウィッチですね」
「そうなんですね。私の屋敷では専門の料理人が働いています。今後雇い入れる予定がありましたら、私の方からご紹介致しますよ」
「う~ん……いえ、私はメイド達のご飯の方が良いので」
「愛されているわね。そういえば、噂でセレーネちゃんのところはメイドとの距離感が近いと聞いたのだけど、実際のところどうなのかしら?」
ヒルデブランドは、王城内で噂として聞いた内容をセレーネに確認した。完全に興味本位の質問だった。
「うちのメイドは可愛がり体質なので、基本的に全力で可愛がりますね。なので、他の家と比べると距離が近いそうです。フェリシアとユイは、すぐに慣れていましたが、ミュゼルは今でも時々戸惑っていますね」
「そういえば、ミュゼル殿下が婚約者でしたね。お元気にされていますか?」
「はい。仕事を手伝ってくれています。三人の中で常に甘やかしてくれるのはミュゼルだけですね」
「セレーネちゃんがその方向に誘導している姿が想像しやすいわね」
「そうですか? まぁ、誘導はしていますが」
実際セレーネから甘えるためにミュゼルとしても強く怒る事が出来ず甘やかすという状態になっていた。フェリシアやユイに同じ事をすれば、甘やかしながら説教をされるという状態になる。それはそれでセレーネも好きな状態だが、どちらかと言えば甘やかされる方が好きでいた。
ミュゼルがセレーネとも上手くやれているという事を知り、王城勤務でミュゼルの事を知っている二人は少し安堵していた。
一分ほど軽食を食べる時間を挟み、新しい話題に移る。
「セレーネさんは、研究者としての一面が大きいと思いますが、新しい魔術や魔術道具の構想はあるのですか?」
ヒナタは、先程調査用の道具や結界発生装置の話を聞いたため、他にもセレーネが考えている構想が気になっていた。それはヒルデブランドも同じなためじっとセレーネを見る。
その視線を受けたセレーネは、お茶を一口飲む。
「えっと……今のところゴーレムの改良や自動製造方法の模索とかですかね。後は空間魔術の研究を続けている感じです」
「ゴーレム! そうでした。あのゴーレムはいつ頃販売されますか? 是非とも購入させて頂きたいです!」
「確かに倉庫整理や書類整理が出来るのなら、うちも欲しいわね」
「ゴーレムは安全性の確認などが済んでいませんので、そちらが済んで売りに出す事が出来る体制が整い次第というところですね。そもそも製造に関して、私が一人で作らなければいけないので、色々と難しい点が多いんです」
「技術者不足ですか……」
「確かに、現状でも深刻な問題ね」
技術者の不足は、ヒナタもヒルデブランドも痛感している問題だった。特に魔術道具の生産なども管理しているヒナタは、他人事といえないレベルのものだ。
「特にセレーネさんのような一流技術者となると、現状でもほんのひと握りしかいませんから」
「本当にね。魔術開発者という面でも魔術道具開発者という面でもセレーネちゃんほど人材はいないわ。総合研究室の研究者になって、本当に嬉しかったもの。まぁ、それからすぐにこうなるとは思わなかったけれどね」
「私の技術力で誇れるのは多重魔術陣くらいだと思いますが」
「それです。そもそも魔術陣の多重化自体が、長年の停滞を招いていた原因のようなところがあります。逆にセレーネ様の論文を読んで、よくぞ理論化してくださったと思ったほどです」
「魔術道具の方はまだ良いわよ。魔術そのものになったら、詠唱の問題があるもの。今の詠唱の開発部の現状をしらないでしょう? 時々発狂する者が現れるほどよ」
「詠唱開発部は常に発狂者が出ているのでは……?」
「その比じゃないわ。そもそも多重にする方法が見つからなすぎるのよ。無詠唱での構築でも発動しない問題が未だに続いているわけ」
「ああ……大分理論的に書いたと思うのですが」
「その理論を理解できるかどうかという問題ね。私でも理解は出来てもこれから新しい接続を生み出せるかと訊かれたら首を横に振るわ。とんでも理論じゃないからこそ、打ちひしがれている研究員も多いわ」
「その辺りを解決するための学術都市ですね」
「そう! それよ! 一つお願いがあるのだけど、魔術研究所の職員も生徒として受け入れてくれないかしら。セレーネちゃんの技術を習得させたいわ」
「支部的なものであれば作っても良いと思いますが、マリアナと相談しておきますね。私としては、研究員が来てくれるのは歓迎です。魔術と魔術道具の発展に大きく関わってきますから」
研究員の受け入れに関しては、セレーネ自身も必要なものだろうと考えており、前向きな返答をする。学術都市の発展にも関わってくるだろうというのもある。
「それは助かるわ。中には基礎からぶち込んだ方が良いのもいるかもしれないから、普通に生徒としていくのが一番かしらね」
「そういう人達用の学校を作るのも良さそうですね」
「どちらかというと研修所になりそうですね。そういう意味でも賑やかな街になりそうです。その分犯罪の可能性もありますが。その辺りの退対処法は構築していますか?」
「ある程度は。私が被害に遭ったような犯罪に対する対策はいくつか取る予定です。まだ仮組みですが、マリアナと仕組みを作っているところです。ミュゼルの撮影機が役に立ちます」
「撮影機……なるほど。顔を撮影して転写する事で身分の証明に使うという事ですね」
「はい。同時にそれを利用した防犯の仕組みを考えているという感じです。基本的には魔術道具を作るという形になりますが」
「ほう……」
魔術道具と聞いて、ヒナタは目を輝かせる。その仕組みに使われる魔術にヒルデブランドは興味を示していた。互いに研究者の側面を持つ三人は、そうした専門的な事で盛り上がっていく。
そうして、時間がどんどんと過ぎていった。




