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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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様々な確認事項

 翌日からは、元の領主としての日々に戻る。一日休みの間に溜まった報告事項を捌いていく。


「雨量も水位も問題なし。水質と空気質も大きな変化はないね。聖域内の変化も特になし。結界の作動報告もなし。記録としては、スピカの出入りだけ。よし」


 調査報告などを確認済みの箱に入れる。その中のものをミュゼルが分類していき、執務室の棚に仕舞っていく。

 次の報告事項の紙束を読みながら、セレーネはミュゼルに話しかける。


「そういえば、撮影機の方は順調? 光量の調整とか拡大機能とかを作るって言ってたけど」

「う、うん。光魔術の本を読んで、しっかりと調整の方法を見つけたから大丈夫そう。き、基礎的なものの組み合わせで解決するから技術使用料とかもないよ……ただ、拡大機能に関しては、ちょっと難航しているかも……魔術的に拡大機能を付けるのは出来なくはないけど……内部の容量的に魔術人の大きさが……」

「ああ、多重にしても容量的にはキツイか。あの小ささが売りみたいなところがあったもんね。やっぱり外部部品する感じで決まり?」

「うん……多分……? 後は量産出来るようになれば良いのだけど……」

「まぁ、【思考演算】を使う時点でね。科学的に解決出来れば良いけど、【記録媒体】の記録量があり得ない量になってるからなぁ。しかも、転写機との組み合わせでも必要になるものだし、安易に切り離せないよね。まぁ、そこら辺は技術者の成長を待つしかないよ。私も同じ気持ち~」

「あははは……」


 セレーネが作り出すものがセレーネにしか作れない問題は、ミュゼルも認識していた。撮影機もセレーネの魔術が使われているために同じ問題を抱えている。その人材を育てるための学術都市なので、気長に待たなければいけない。

 ただし、これは量産出来ない問題であり、やろうと思えば細々と増やしていく事は出来る。

 こんな話をしながらも、セレーネは報告書を確認して、確認済みの箱に入れていく。


「ん? マリアナは明日ルージュ領に行くんだ。まだ街は完成してないけど、何か話し合う必要があるのかな?」

「ぶ、物資関係のお話じゃないかな……」

「ああ、なるほどね。一番近くの領だから、そこら辺の話は必要になるのか。一週間くらいいないみたいだから、それまではフィアンナが代わりに仕事をしてくれるみたい。フィアンナが来たから、こういう事も出来るようになったみたいな感じなのかな?」

「そ、そうじゃないかな……セ、セレーネちゃんの補佐をしっかりと出来る人が必要だから……セレーネちゃんのお世話でカノンさんは忙しいし……」

「だよね」


 領主としての仕事の補佐で言えば、カノンはやっていない。カノンがやっているのは、セレーネの足になる事とセレーネの生活面でのお世話となっている。後は、セレーネが悩んだ時の相談役だ。マリアナの仕事を代わりにしてくれる事は、ほぼない。

 そういう問題があり、フィアンナが来た事によって、屋敷を留守にする事が出来るようになったのだった。今回のように領地を移動しての仕事は、フィアンナが来て初めての事になる。


「ちゃんと休みを取ってくれると良いけど」

「セ、セレーネちゃんは、ちゃんと休めたの?」

「うん。二つの魔術を開発したよ!」

「ん? ちゃ、ちゃんと休んだの……?」


 魔術の開発をしていたというのは、ちゃんと休んでいないのではとミュゼルは思ってしまっていた。


「うん。カノンに寄り掛かって考えたの。意外と使えるものが出来たよ。まぁ、頻繁な利用は出来ないようなものだけど……」

「カノンが一緒なら大丈夫……なのかな……?」

「うん。本腰いれた研究になったら、机に向かって離れなくなるもん。よし! 確認事項終わり! 魔物も元に戻っているし、ひとまず環境的には安定してきてるかな。壁の建設はまだ一割も進んでないみたいだけど」

「し、仕方ないよ。街の敷地は、この屋敷の何倍もあるから……」

「街に必要な人材とかも集めないといけないし、そもそも住人の募集もしないといけないし、私のお店も作らないといけないし、色々とやる事はいっぱいだなぁ……」

「そんなセレーネ様にお仕事の追加です」


 そう言ってやってきたのは、紙束を持ったマリアナだった。


「まだ確認事項?」

「はい。確認事項と言っても、報告に上げた明日からの話し合いのための資料に目を通して貰うというだけですが。目を通したものから読了のサインをお願いします。明日からはフィアンナが基本的に補佐を担当しますので、何かあればフィアンナまでお願いします」

「は~い。読み終わったらマリアナの執務室に持っていけば良い?」

「はい。お願いします。では、失礼します」


 紙束を受け取ったセレーネは、その内容に目を通していく。内容はこれから運び込まれる予定の物資に関する一覧と、こちらから後々に送る物資や商品の一覧だった。その一項目一項目をしっかりと確認していく。


(スライムも送る一覧に入ってる。まぁ、スライムは量産出来る状態にあるから、これは良いかな。ゴーレムは、要交渉。結局色々とあって研究が続けられてないし、問題が起こった時が面倒だからかな。今のところ全員問題は起こってないけど)


 ゴーレムのメンテナンスは、定期的に行われているために大きな問題は起こっていない。そのため送り出しても良いという考え方も出来るが、まだまだ心配なところがあるために要交渉という事になっていた。この辺りの事はマリアナも理解しているため不用意な交渉は行わない。


「撮影機と転写機は、一覧に入ってないみたい」

「ま、まだ量産出来ると分かったわけじゃないから……」

「ゴーレムよりは何とかなると思うけどね。あっ、でも、ちょっと売り込んでみる予定ではあるみたい。有用性をマリアナも理解してるだろうから、お客さんが出て来ると良いね」

「う、うん……!」

「後は……わぁ……いっぱい話し合うつもりだぁ……まぁ、街に必要な事ばかりだから、しっかりと目を通さないと」


 自分の仕事にも繋がる事のため、セレーネは真面目に資料を読み込んでいった。その中に疑問点などがあればメモをして、資料に挟み込み、マリアナに返す。

 それを読んだマリアナは、セレーネの執務室に向かい全て説明をして許諾を得た。そうしてマリアナは、カルンスタイン領を離れて、一週間ルージュ公爵領に出張する。

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