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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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聖域の力

 それから二週間の間、セレーネは壁の形と地下魔動列車に関する話し合いを続けていった。フェリシアとナタリアによる防衛装置の設計なども進んでいるが、新しい船に関しては、まだ進んでいなかった。

 複数の事を同時に進めている状態のため、セレーネ達も大忙しである。その中で、セレーネは王都から持って来た花束を持って、定期確認のためにスピカと共に聖域に来ていた。

 聖域に入ってから少し歩くと、ユニコーンが出迎える。ユニコーンの数は変わらずに五頭だった。


「久しぶり。色々とやる事があって、あまり来られなくてごめんね」


 セレーネが謝りながらユニコーンを撫でると、ユニコーンの方からも首を押し付けてくる。ユニコーンと仲良くなっている事がよく分かる光景だった。スピカの方にもユニコーンはやって来るので、スピカもユニコーン達を撫でている。

 その中でセレーネが撫でているユニコーンが、セレーネが持つ花束を見る。


「これ? 前に約束した花。お供えしようと思って持って来たの。良いかな?」


 セレーネが確認すると、ユニコーンが頷く。ユニコーンから許可を得たので、セレーネ達は洞窟に向かって歩いて行く。その中で、設置した調査用魔術道具の状態なども確認していった。思考機による管理で大体の状態は分かっているので、その情報が正しいのかの確認となっている。


「雨が何回か降ってるけど、こっちで確認した限り、問題はなかったはずなんだけど、ユニコーン達は何か問題あったかな?」


 セレーネの確認にユニコーンは首を横に振る。そのユニコーンの返事から、ユニコーン達の認識でも問題がないことが分かる。


「問題なしね。それなら良かった」


 そうした確認もしていっていると、洞窟の前に着く。セレーネは洞窟の前に供えるつもりだったのだが、ユニコーン達が中に促してくるために、ユニコーンの骨に直接供える事になった。

 セレーネはユニコーンの骨の前に花を置いて、スピカの所作を真似ながら祈りを捧げる。同時にユニコーン達が嘶いた。

 セレーネ達から少しの魔力が吸い取られ、骨に変化が生じる。青白いオーラを纏い、そのオーラが波となって周囲に放たれる。そのオーラに押され、セレーネがバランスを崩す。


「わわっ!?」

「おっと! ご無事ですか!?」

「う、うん」


 スピカに支えられたセレーネは困惑しながら骨を見る。骨に大きな異常はない。青白いオーラを纏っているが、それでも骨が崩れるという事は起こっていなかった。


「何だったんだろう……?」

「分かりませんが、聖域から聖なる力が放射されたように感じました。どこまで広がったのか分かりませんが、これがどんな影響をもたらしているのかは分かりません」

「そっか……」


 セレーネは、スピカの手を借りながら立ち上がり、ユニコーンを見る。


「ねぇ、今のは大丈夫なの?」


 確認するべき対象は、この事を知っていそうなユニコーンだと判断していた。

 ユニコーンは、セレーネの確認に頷いた。ユニコーン達にも一切の焦りがない事を確認したセレーネは、これがユニコーン達にとっては特に問題のない出来事であると考えた。


(今起きた事をまとめると、花を供えた。祈った。ユニコーン達が嘶いた。このユニコーン達が嘶いた直後に、あの青白いオーラが生じて放たれた。この全てをやったからなのか、ユニコーンが嘶いたからなのか。この辺りの確認をしたいかな)


 セレーネは冷静に考えて、今確認するべき事を決めた。


「これって、ユニコーン達が嘶いたから起きたの?」


 これに対して、ユニコーンは首を横に振る。


「じゃあ、私達が花を供えて祈りを捧げたのとユニコーン達が嘶く事が一連の流れで行われたから?」


 ユニコーンは首を縦に振った。


「お供えものが大事?」


 ユニコーンは、これに首を横に振る。


「じゃあ、私とスピカが一緒に祈った事が大事?」


 ユニコーンが頷く。


「私だけでも大丈夫?」


 これにも頷く。


「スピカだけは?」


 これにも頷く。


「ユニコーン達が嘶かなかったら起きない?」


 これにも頷く。ここからセレーネは、この現象に必要な要素を考えていく。


「花をお供えしたのは、ほとんど関係ない。多分、これが発動しやすくなるとかに関わるものだと思う。大事なのは、祈る人とユニコーンの嘶き。私だけでもスピカだけでも良いっていうのはよく分からないね。スピカは聖女だけど、私は真祖なだけだし」

「眷属という繋がりはどうでしょうか?」

「そもそも吸血鬼が……ん? これって吸血鬼だからなったわけじゃないよね?」


 セレーネがユニコーンに確認すると、ユニコーンが頷いた。これで真祖や眷属が関わっているという事ではなくなる。


「真祖でも眷属でもない……聖女は称号的なもので関係がない。これらを踏まえると、後は魔力くらいでしょうか?」

「真祖と眷属はたっぷり持ってるからね。そうなると、マリアナは当てはまらない?」

「ハーフエルフですので、普通の人と比べればかなり多い方だと思います」

「これがユニコーン達が姿を現す条件だとしたら、真祖か眷属かエルフの魔力じゃないと出てこないって感じなのかな?」

「分かりません。ですが、今回のこの聖なる波動に関しては、その条件になるかと」

「後でマリアナに確認しないと。取り敢えず、全体の視察だけ終わらせよう。皆も一緒に行く?」


 ユニコーンの嘶きが肯定の答えだった。セレーネはユニコーン達を連れて歩きながら、聖域内の調査魔術道具の点検を済ませていく。それらが終わると、ユニコーン達を目一杯撫で回していった。ユニコーン用ブラシを用意したために、ユニコーン達には好評だった。

 そうして聖域の視察を終えたセレーネ達は、カノンの元に戻る。セレーネ達を迎えたカノンは、セレーネ達の背後を見て目を丸くしていた。そこにはユニコーンの姿があったからだ。すぐにいなくなったが、カノンは確かにその姿を見た。


「カノン? どうしたの?」


 背後を見ていないセレーネはカノンがユニコーンを目撃した事に気付いていなかった。


「いえ、そこにユニコーンの姿が見えたので」


 そう言われて、セレーネとスピカが背後を振り返るが、ユニコーンの姿はない。既に姿を消した後であるためだ。


「カノンにも姿を見せた……さっきの波動でカノンの事を感じ取ったからとか?」

「あり得なくはないかと」

「その事については、私も伺いたいと考えていました。森から青白い何かが放たれていましたが、攻撃ではないのですね?」

「うん。よく分からないけど」

「私が感じ取った限りでは敵意などはなく、スピカが扱う力のような感覚でした。見た限りでは、途切れているような気配はなかったので、砦まで届いているかもしれません」

「じゃあ、確認しにいかないと。出せる?」

「はい」


 聖域から放たれたオーラがどこまで広がったのかを確認するためにセレーネ達は砦へと帰還した。

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