聖域への設置
翌週。セレーネは水質調査魔術道具の結果を確認していた。実験で水質をわざと買えて分析に掛けていくという形で、様々な汚染方法を試していた。
これらの結果をまとめていたのはフェリシアなので、フェリシアから話を聞いていた。
「地点別、日付順で並べて、成分が変わったタイミングも記録してあるわ。ちゃんと地点別で分析しているわ」
「取り敢えず、設定周りは大丈夫そうだね。成分的変化も分かり易いかな。少しでも変化があったら分かる?」
「ええ。平均値を出してある場所なら大丈夫よ。一応、成分のブレを考慮して、ある程度幅は決めてあるわ」
「了解。取り敢えず、ズレが分かるなら良いや。成分的な情報をいくつか思考機に追加して、毒とかの分析も可能にしようか」
「もうやったわよ」
「あっ、そうなの? じゃあ、もう大丈夫かな。水位と雨量も大丈夫そうだし、数を増やしていくかな。カノン、スピカに明日聖域に行くって伝えておいて」
「はい」
カノンがスピカの元に向かうのを見てから、セレーネはもう一度水質調査魔術道具の記録を見ていく。
「海と川の水質の記録は別で取れる?」
「取れるわよ。そもそも場所毎にまとめているから安心して」
「やった。明日ユニコーンの泉に設置してみるから、成分の分析をお願い」
「分かったわ。でも、設置出来るの?」
「分からないけど、交渉するつもり。そういう話をしてあるから」
「ユニコーンと会えるだけでも凄いけれど、交渉出来るというのも凄いわね」
「まぁ、主導権は向こうにしかないけどね。今日の確認事項は、特にないはずだから、このまま量産に移ろうかな。今くらいしか出来ないだろうし」
「手伝うわよ。魔術結晶は無理だけれど、形を整える事くらいは出来るわ」
「うん。お願い」
セレーネとフェリシアは、測定や調査のための魔術道具を量産していく。こうして量産した物を様々な場所に配置して、領地全体の天気なども把握していく事が出来るようになる。そのための処理をユイとミュゼルが作っている。
セレーネがやる事は、その仕組みの確認をするというだけだった。
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翌日。セレーネはカノンの運転でスピカと共に聖域に来ていた。
「それじゃあ、カノンは留守番ね。ちょっとだけ長居してみる予定だから、そのつもりでいて」
「はい。お気を付けて」
セレーネはスピカを連れて聖域内に入っていく。しばらく歩いていると、二人は視線を感じ始める。
「セレーネ様」
「うん。視線の数が増えてる。五くらいかな。どっちの意味で増えたのか分からないから、刺激しないようにしながら泉まで歩こう」
「はい」
視線の数は変わらず、そのままセレーネ達は泉に到着した。すると、すぐにユニコーン達が姿を現した。五頭のユニコーンの内、一番大きなユニコーンがセレーネ達に近づく。
セレーネは、そのユニコーンが、自分達に挨拶をしてくれた事のあるユニコーンだと気付いた。
「こんにちは。今日は、お願いがあって来たの。聞いてくれる?」
セレーネが訊くと、ユニコーンが頷く。他のユニコーン達も近づいて来て、スピカに挨拶をしていた。スピカは少し遠慮がちにユニコーン達を撫でる。スピカが接待している間に、セレーネはユニコーン達の親分との交渉に入る。
雨量測定魔術道具、水位測定魔術道具、水質調査魔術道具を出していき、ユニコーンに見せていく。
「これは雨の量を調べる道具。大雨が降ってきた時に対処しやすいようにするの。こっちは泉の水の高さを調べる道具。泉の水が減ったか増えたかを調べるの。こっちは泉の水が汚れていないかを調べる道具。全部ここの居心地を良くするための道具なの。これを設置しても良い?」
セレーネは一つ一つ持ち上げて、分かり易く説明していった。ただし、相手はユニコーンであるためどれだけ通じているか分からない。
ユニコーンは少しだけ周りを見回した後に、セレーネに対して頷いた。
「良いの?」
セレーネの確認に対して、ユニコーンは首を擦り付ける。
(額の角があるから、基本的に頭で挨拶じゃなくて首で挨拶になってるのかな)
セレーネはユニコーンの首を撫でながらお礼を伝える。
「ありがとう。それじゃあ、この泉周辺に設置するね」
セレーネも欲を言えば、聖域全体に設置したいと考えていた。だが、それをユニコーンが許してくれるとも限らない。そのため、まずは聖域全体の中でも一番重要な泉に設置する事にしたのだ。
「嫌だったら良いんだけど、聖域全体に置いても大丈夫?」
これに対してもユニコーンは頷いた。
「大丈夫? 無理してない?」
「ひひ~ん!」
セレーネの確認にユニコーンは嘶いてから頷く。セレーネは、それを了承と受け取った。まずは泉から設置を行っていく。
セレーネは服を脱いで水着になり、泉の中に入る。服で入ると、帰りが大変になるからだ。服はスピカが預かっている。
なるべつ水底に触れないようにしながら、水位測定魔術道具と水質調査魔術道具を設置していく。
スピカは、ユニコーン達が怒らないか心配になったが、ユニコーン達は一切怒りもせず、スピカの傍でゆったりとしていた。
(セレーネ様が入る事で泉が汚れるという可能性もあると思うけど、普通に許されている感じかな)
ユニコーンが何もしない事から、スピカはそう考えていた。セレーネは、泉から上がって【空間倉庫】から出したタオルで身体を拭く。スピカは、自分の腕にセレーネの服を掛けると、タオルを受け取ってセレーネを拭き、服を着せていく。足の汚れは、セレーネを近くの岩に座らせて拭いていった。
靴を履いたセレーネは、自分で立ち上がる。
「よし。それじゃあ、聖域内に他にも設置していこう」
「はい」
セレーネの言葉を理解しているからか、ユニコーン達も立ち上がりセレーネの傍に付きながら移動を始める。スピカは念のため、簡単に測量して地図を作りながら移動する事にした。本当に簡単なものであるため、正確な地図は作れないが、セレーネが設置する魔術道具の距離などから後々に修正出来るだろうという考えだった。
「測量用の魔術でも作った方が良いかもしれませんね」
「測量用の? 出来なくはないよ」
「そうなのですか?」
「うん。そもそも【空間探知】がそういう感じの魔術だから。ちょっと待ってね」
セレーネは【記録媒体】が付いた板を出して、そこに繋げながら【空間探知】を発動する。こうして内容を【記録媒体】の板に記録して、後程思考機に読み込ませれば測量の結果が出せる。
「私が移動しないと意味ないから、割とやりづらいけど、これで良いでしょ?」
「さすがです。【風探】ではこうはいきませんから」
「空間魔術は、まだ使う人が少ないし、そもそも多重魔術陣自体使える人が少ないからね」
通常の測量方法とは異なるため、参考に出来るかは分からないが、スピカの不正確な測量よりも何十倍もマシという事もあり、この方法で測量していく事になった。




