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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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聖域関連の報告

 ガンドルフへの報告は、まだ残っていた。残っているものは水質調査魔術道具だ。こちらに関しては、まだ大きな変化を観測出来ないために、どれだけ有効なのかが分かっていない。それを報告書でガンドルフも理解した。


「大きな変化がないという事は、そこの成分が全く変わっていない事を示しているのだろう?」

「はい」

「それはそれで良いのではないか?」

「はい。水質的には良い事なのですが、問題をいち早く察知するためのものですので、どれくらいの変化を知る事が出来るかを把握しないといけないんです。今は海と川の通常の成分を覚え込ませている最中ですね。これをユニコーンの泉に設置するつもりなので、こうした成分の情報の変化を確認したいんです。だから、現在は適当な水溜まりを作って意図的に変化をもたらして調べています。こちらは、まだ報告書としてまとめていないので、また後日提出すると思います」

「なるほどな。一つ確認だが、本当にユニコーンの泉に設置するのか?」

「その辺りは、魔術道具を持っていってユニコーンに確認します。一応、そういうものを設置したいという話はしましたが、相手は人間じゃないので、どこまで理解してくれるかわかりませんし」

「それが妥当だろうな」


 人と物という違いがあるため、ガンドルフはユニコーンを怒らせてしまう可能性は低いと考えていた。確認で嫌がれば、セレーネは設置しないだろうという信頼があるというのもある。

 ガンドルフのセレーネへの信頼は、貴族主義の反逆の際の行動で確固たるものとなっていた。


「それと聖域関連で報告したい事が」

「聖域に問題がある訳ではなく、聖域が関連する問題か?」

「はい。魔物の動きです」


 セレーネはそう言いながら、自身で改めてまとめた魔物の分布図を出す。


「ベネットをはじめとする騎士団による調査により、どの種類の魔物がいるのか等を大まかにまとめる事が出来ました。この通り聖域には、どの魔物もいません。聖域に近づいた魔物は自ら聖域から離れるように動き始めるとの事です。これは何度も確認しているらしいので、間違いはないかと」

「聖域に魔物が入らない……問題は、魔物が固まる事だな。そこまでの頻度で魔王が出現するとは思えないが、警戒しておくに越した事はないな。ダンジョンも同じだ。問題がおこれば、ルージュ領を頼れ」

「はい。マリアナも同じ結論でした


 セレーネの報告が終わったところで、今度はガンドルフの方からセレーネへの伝達事項を話していく。


「次はこちらからだ。カルンスタイン領まで魔動列車と共に通話機を繋げるつもりだが、複線化の事もあり、少し先になる。こちらに報告する事があれば、これまで通りルージュ領から送るようにしてくれ」

「分かりました。具体的にどのくらいになるかは分かりますか?」

「分からん。辺境だからな」

「うぐ……こういう時辺境は後回しになりますよね……」

「中央から広げていく形だからな。人の移動が激しいのも中央付近であるがための事だ。こればかりは、こちらでどうにかする事も出来ん。輸送手段という話では、空間転移装置の設置はしないのか?」


 セレーネが関わっている空間転移装置の設置は、セレーネありきの設置だ。そのためセレーネが領主であれば、街が出来た瞬間に設置して輸送手段を確保するという事も出来なくはなかった。


「輸送するものがありませんから。食料の輸送を受けるくらいですかね。でも、近くに海はありますし、魚介類の輸送は受けなくても大丈夫ですし……」

「野菜の輸送もある。鉱石に関しても、そちらに卸す事が出来るな。寧ろ、俺としては、鉱石系の輸送を目的としている。セレーネの研究に必要になるという事もあるが、学術都市での研究において、物資が足りないというのは致命的になりかねない。魔動列車と空間転移装置の二種類で完全に補いたい」

「なるほど。確かに研究をするのに素材は重要ですしね。分かりました。こちらの管理は私では無く、お父様がするという事で良いんですよね?」

「問題ない。ラングリドにはセレーネの方から話しておいてくれ。その方が行き違いがないだろう」

「分かりました」


 セレーネ自身、研究において素材が重要になる事を理解している。これから先、学術都市を作るという事で、安定して素材を手に入れる手段がなければ成り立たなくなる可能性もあった。

 事業の私的利用になるのではと考えていたセレーネは、その事とガンドルフから許諾を得た事で、空間転移装置の設置を決める。事業自体はラングリド任せという事もあるので、後程相談する事になる。


「漁業用の港も建設して貰って構わないが、海から来る敵への対処のためにある程度防衛機構を設置してくれ」

「そのための辺境伯ですからね。防衛……守るというよりも迎撃が好ましいですよね?」

「ああ。守るためには攻撃する事が必要だ。セレーネは気が進まないだろうが、ナタリアと共に考えてくれると助かる。それらを他の街でも利用出来れば良いが、最初は考えなくて良い」

「分かりました」

「よし。今のところはこれくらいか。セレーネの方から話はあるか?」

「…………いえ、私も全部だと思います」

「なら、ラングリドのところに行くと良い。ラングリドはクリムソンの本邸に向かったはずだ」

「分かりました。では、失礼します」


 セレーネはガンドルフに一礼してから、【空間転移】で本邸に移動する。メイド達に迎えられながら、執務室へと向かって行った。


「失礼します。お父様いる?」

「セレーネか。陛下への報告は終えたのか?」

「うん」


 中にいたのは、ラングリドとライルだった。現在、ライルが当主としての仕事を代理として行っていたため、その報告を受けていたのだ。


「うちの街に空間転移装置を設置するから」

「物資の輸送用だな。わかった。その時になったら連絡をくれ」

「うん。じゃあ、お兄様もまたね」

「もう行くのか?」

「うん。別邸の方に行ってクロに会わないと。こっちに戻ってるのに行かなかったら、クロが拗ねちゃうから」

「そうか。気を付けてな」

「うん。じゃあ、またね」


 セレーネは早々に【空間転移】を使って別邸の方に移動する。元々の自分の部屋に降り立つと、正面からクロが突進してくる。


「にゃ~!」

「クロ。今日も元気そうだね」


 セレーネに撫でられるクロは嬉しそうに喉を鳴らして甘える。しばらくの間、クロを撫でていると、部屋にミレーユがやって来る。


「セレーネ。帰っていたの?」

「うん。陛下達とお父様を送ったから。こっちにはクロに会いにきたの」

「そう。今日はこっちにいるの?」

「ううん。向こうに帰るよ。マリアナに話さないといけない事があるから」

「そう。皆元気にやっているかしら?」

「うん」

「それなら良かった」


 ミレーユはセレーネを、セレーネはクロを撫でながらしばらくの間過ごしていく。クロが満足したところで、セレーネはカルンスタイン領の砦に帰った。

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