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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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様々な報告書

 翌週。セレーネは水質調査魔術道具を作り上げた。形は丸い。その中にコアを内蔵し、周囲の水質を調べるというもの。範囲は半径十メートル程。水質調査魔術道具が浸かっている水であれば、その範囲で調べる事が出来る。やろうと思えば、更に広範囲にも広げられるが、情報の不安定さが懸念されるため、この範囲での試作となった。

 泉での実地試験は行わず、海と川での試験となる。水位測定魔術道具と同じように浮かせてから、思考機による分析結果を待つ。

 セレーネは思考機から出て来る分析結果に目を通していく。


「う~ん……まぁ、当たり前だけど、成分が多すぎ」

「そればかりはどうにも出来ない気がするわね。ただ成分のブレはともかく新しい成分が追加されたら分かる気がするわね。思考機に設定を追加しておくわ」

「ありがとう。取り敢えず、報告書にまとめて、ナタリアに提出しないと。雨量測定魔術道具と水位測定魔術道具の方は、問題なく稼働してるよね?」

「ええ。ユイとミュゼルがまとめてくれているわ。後で持って来てくれるわよ」


 雨量測定魔術道具と水位測定魔術道具は、数を増やして思考機に入る情報量を増やしていた。これを全て分析して土地ごとの情報に整理出来なければ、一つ一つ思考機を付けなければいけない。それではコストが増えるだけになるため、ここでの分析は重要だった。


「ユイとミュゼルが設定周りを整えてくれているから、割と楽なんだよね。こっちも別の仕事が入ったりするし……」


 セレーネがそう言った直後に、扉がノックされる。セレーネはカノンに目配せして扉を開けさせた。中に入ってきたのは、マリアナだった。


「失礼します。セレーネ様。こちら平原及び森の魔物に関する報告書です。ご確認ください」

「分かった。他に何かある?」

「工期が予定よりも短く済むかもしれません。人員補充も進み、街の建設にも着手出来そうです。下水道の工事に関しても順調に進んでおります。そちらの報告書は、今日視察を行いますので、また後日に」

「私も行く?」

「いえ。ですが、出来ればミュゼル殿下をお連れしたいのですが」

「ミュゼル? ああ、写真ね。良いよ。カノン、護衛に付いて」

「はい」


 セレーネの指示にカノンはすぐに頷いた。この砦にいるのであれば、世話係はマリアもいるので問題ないという風に判断したからだ。それよりもミュゼルの安全確保という点の方が優先度が高くなる。

 カノンとマリアナが部屋を後にしてから、セレーネは報告書に目を通していく。


「う~ん……」

「何か問題があったみたいね」


 難しい顔で唸るセレーネを見たフェリシアは、報告書の中に問題になる点を見つけたからだと見抜いていた。


「う〜ん……まぁ、問題と言えば問題。街の建設があるでしょ? その関係で魔物の分布が大きく変わるわけなんだけど、改めてしっかりとベネット達が調べてくれた結果、森に偏ってる事が分かったの」

「まぁ、当たり前の現象ね」

「そこまでは良いんだけど、問題は聖域には近づかない事。ユニコーンを恐れているからなのか、聖域に向かっていった魔物達は聖域の外周を移動していくみたいなの」

「つまり、予想外に森の中に魔物が増えているという事ね。それで問題になるのは魔王かしら?」

「正解。必ず魔王が生まれるってわけじゃないけど、魔物の数が増えれば増える程確率は上がるだろうし、もう少し散らせたいかな」


 魔王は魔物から生まれる。魔物の数が多くなるという事はそれだけ魔王になる個体が現れる可能性が高くなる。魔王は総じて魔物を統べる。魔物が密集していれば、それだけ魔王が統べる魔物の数も増え危険性が増す事になる。

 セレーネが危惧している点は、そこから街への被害に繋がってしまうという事だ。いかにベネットがいるからと言って、無傷で済むとは考える事は出来なかった。

 その点から、先に魔物達を散らしていき、密集した分布を避ける必要があった。重なる事は仕方ないが、密集は避ける。これを徹底させる事で、街の安全を確保する。


「それに魔物が密集していると、魔力が集まってきそうじゃない?」

「ダンジョンの心配ね。内容によっては残すのも有りだと思うわ」

「そりゃ資源が取れるようなダンジョンだったらね。でも、ダンジョンを維持させるための労力とかも考えるとね。定期的な魔物の間引きが必要だし」

「溢れかえったら困るものね。ただ、ダンジョンに関して言えば、学術都市としても有用な点があるわよ」

「ん? う~ん……生徒の育成?」

「正解。研究対象がダンジョンだったりする生徒も出て来るかもしれないから、近くにダンジョンがあるって事はある程度利点になるとおもうわ」

「う~ん……う~ん……生徒の育成に使えば、魔物の間引きにもなって丁度良いか……」

「物は考えようね。ダンジョンが出来たからと言って、一概に破壊を考えないで良いと思うわ」


 ルージュ公爵家の別荘にて、酷い目に遭ったという経験から、セレーネは街の安全も考えてダンジョンは壊すべきかと考えていた。だが、フェリシアの話を聞いて、その考えを改める。物は考えようという言葉は、セレーネが納得するのに十分なものだった。


「じゃあ、ダンジョンは内容を確認して考える形かな。マリアナにも伝えとかないと」

「そうね。多分、魔王の危険性とかはマリアナさんも考えているだろうから、ダンジョンの取り扱いに関しては相談しておくと良いと思うわ」

「だね」


 セレーネ達の話が一段落したところで、扉がノックされる。マリアが扉を開けて、相手を確認し、メイを招き入れた。


「セレーネ様。ユイ様とミュゼル殿下より報告書をお預かりしました。お二人は視察に同行しておりますので、私が代わりに提出させて頂きます」

「うん。ありがとう」


 報告書を受け取ったセレーネは、しっかりと目を通す。自身の研究に関するものなので、こちらの確認も真剣だった。


「一応、情報の混濁はなさそうだね」

「はい。同期術式を統一しておられませんので、混濁の問題は最初から解決出来ていたようです。実際に確認が取れるまでは断ずることは出来ませんでしたが、各所個別の情報を映し出せるという事も確認されています」

「うん。メイも確認出来たなら問題なさそうだね。それならどんどんと増やしていって限界を調べる必要があるかな。時間を見つけて作っておこっと」


 数が増えても問題なく情報を整理出来ている事が分かったため、セレーネも本格的に設置していく方向で動く事を決めた。

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