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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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ミュゼルの案

 川に向かってカノンが運転している中、セレーネは水質調査用魔術道具についての設計案を見ていた。そこにミュゼルが声を掛ける。


「セ、セレーネちゃん」

「ん? どうしたの?」

「さっきの水位測定魔術道具のね……か、改良案を考えてみたの……」

「改良案?」


 興味がそそられる内容に、セレーネは設計案から目を話して後部座席に耳を傾ける。


「あ、あのね……水面に浮かすの。ざ、【座標指定】で上下以外の座標を固定しちゃえば、後は下の座標からどのくらいの高さまで上がったかを認識すれば良いから……け、計算も思考機がやるから、結果も自分で計算しなくて良いし……海水浴で踏んじゃう事もないかなって……」

「う~ん……」


 セレーネは、脳内でミュゼルの案を検証していく。機構自体は難しいものではない。セレーネでも即座に設計図が思い付くくらいのものだ。そのくらい簡単な機構でありながら、セレーネは、それを思い付かずにいた。


「確かに……うわぁ……雨量測定魔術道具が頭にあったからかな。それは思い付かなかった。それで考えれば、コアを中に内蔵させて、全体を丸くすれば……」

「一旦戻りますか?」

「ううん。移動しながら改良するよ。金属の加工は、ここでも出来るし、魔術陣の書き換えなんて得意中の得意だもん」

「爆発させないようにしてくださいね」

「爆発する要素はない……はず!」


 セレーネは【空間倉庫】から材料を出していき、既に作ってある水位測定魔術道具を改良していく。手際よく改良するセレーネの手元を、ユイとミュゼルが後部座席から首を伸ばして見る。だが、魔動車の構造上、その動きはよく見る事が出来ない。


「まぁ、こんなものかな。起動自体はする。後は座標で固定する事が出来るかどうかくらいだね」

「本当に出来ちゃったのね」


 ユイは、魔動車の中で改良を終わらせたセレーネに、軽く驚いていた。こんなところでも開発が出来るというのは、それだけセレーネの技術が高い事を表している。セレーネとしては不満な出来映えだが、試作品であり機能するかどうかを確かめるものなので、ある程度の妥協はしていた。製品になるとすれば、許せないラインではあった。

 川に到着すると、馬に乗ったベネットが駆け寄ってくる。


「おう。来たか。周辺の魔物は片付けておいた。血抜きをして川で冷やしてある」

「それじゃあ、私が向かって回収しておきます」

「ありがとう、マリア。ベネット、護衛に付いて」

「ああ」


 ベネットが狩った魔物をマリアが回収しに向かうため、ベネットが護衛に付いて移動する。セレーネ達はなるべく離れないようにして、川に近づいていく。


「今は水着だから、中に入っても良いよね?」

「はい。少々お待ちください」


 カノンは、またスカートをたくし上げて、高い位置で固定し、セレーネを持ち上げる。


「川は海と異なり、滑りやすくなっている箇所もありますので、このまま連れて行きます」

「分かった」


 カノンが川の中に入っていき、水深が一番深いところで、セレーネを水面に近づける。セレーネは改良した水位測定魔術道具を設置する。川の流れによって上下に動くが、流される事はない。上下以外の座標の固定に成功している証だった。


「これで良し。後は海に行って、あっちも改良して設置し直そう」

「はい」


 セレーネ達はベネットが狩った魔物の肉を回収し、そのまま海に戻って、海に設置した水位測定魔術道具の改良を行った。そこで水着に着替えて息抜きがてら軽く遊んでから、執務室へと帰った。

 そこで思考機から出される情報を確認していく。海と川の水位の変化がしっかりと記録されている。


「微動してる……」

「波があるから仕方ないわよ。この記録で平均が出せるわけだから、後で平均も出して貰っておいた方が良いわね」

「そっか。ユイお願い」

「分かったわ。これは私でも扱えるのよね?」

「うん」


 ユイは思考機を操作して、水位の管理をしやすいように調整していく。

 得られた記録を机で読もうとしているセレーネの元にミュゼルがやって来る。


「セ、セレーネちゃん。これ……」

「ん? 写真? あっ、魔術道具が最初どんな感じだったかを記録してくれたのね。ありがとう。ユイ、ミュゼルの写真も資料に加えておいて。次に見に行くときに参考になると思うから」

「分かったわ。ミュゼル、写真をくれる?」

「う、うん」


 ユイとミュゼルが作業をしている間に、セレーネは雨量測定魔術道具の様子も確認していた。


「う~ん……まぁ、小雨だとこのくらいの記録になるのか……大雨が降ってくれないと、まだよく分からないかも」

「まぁ、仕方ないわね。水位測定魔術道具の方は常に記録が動くから記録が多くなっているように感じるのだと思うわよ」

「それもそっか。後は水質調査魔術道具を作らないと。これも浮かせる形で良いかな?」

「そうね。水に浸かっていれば分析は可能だと思うわ。そういえば調べるのは、ユニコーンの泉の水質だけなのかしら?」

「う~ん……川とか海とかも調べた方が良いかな?」

「基本的に生活に必要な水は魔術道具で生み出すものだから、川が汚染されても……困るか」

「川と海は繋がっているものね。漁業をするようになるとしたら、しっかりと調べておいた方が良いのかもしれないわ」

「それじゃあ、川と海と泉の三つかな、これは情報が多くなるから、別で思考機を作った方が良さそうかな。また材料買ってこなくちゃ。ここでの生活の不便なところは買い物をするのに転移する必要があるって事だよね」

「普通の人はまず取れない選択なのだから、文句言わないの。必要な材料を書いてくれたら、私が買ってくるわよ?」


 フェリシアがそう言うと、即座にマリアがフェリシアの背後に移動する。マリアが付き添いとして付いて行くからだ。セレーネもフェリシア自身もそれを当たり前と考えていたので、特に驚きはなかった。


「時間決めて迎えに行けば良い?」

「そうね。ついでに、王都で情報を集めてくるわ」

「ん〜、了解。じゃあ、これね」

「早いわね。それじゃあ、夕方に迎えに来てくれるかしら?」

「了解。気を付けてね」


 セレーネは、フェリシアとマリアを王都の別邸連れて行き、一人で砦へと戻ってきた。そうして迎え時間までは、設計図の見直しと工事の報告などに目を通していった。

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