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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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水位測定魔術道具

 翌日。雨量測定魔術道具が一日起動を続ける事が出来たため、今度は水位測定魔術道具の製作に移る事になった。


「う~ん……」


 雨量測定魔術道具は、上に対して【座標指定】を使う事で分析をしているため、設計案もなるべくコンパクト且つ作りやすいものというようにしていたが、水位測定魔術道具に関しては、また別となる。水中に設置すれば上でも良いが、メンテナンスなどを考えれば地上に置いておきたいのだ。


「まだ悩んでいるのね」


 二種類まで絞り込んだセレーネが、その設計図を見て唸っているのを見たフェリシアは後ろから覗きこみながらそう言った。フェリシアの声を聞いたセレーネは、フェリシアの方を向いて立ち上がり、フェリシアを自分の椅子に座らせた。

 そして、対面になるように膝に座ろうとすると、フェリシアがセレーネをお姫様抱っこしながら立ち上がる。


「この椅子で二人一緒に座るのは危ないわよ」

「むぅ……血!!」

「はいはい」


 悩みすぎて頭がパンクしてきたセレーネはフェリシアの血を飲んで落ち着く事にした。その意図を察したフェリシアは、子供をあやすように苦笑いしながら、ソファに座る。

 フェリシアの肩に牙を立てて血を飲みながら、セレーネは水位測定魔術道具をどうするか考え始める。


(川に置くのは増水した時に壊れたら困るし、やっぱり外かな。でも、増水したら外でも危ないよなぁ……それなら水の中でも変わらない気がする……でも、水位は増水に対処……いや、もしかしたら川の水が減るって方の問題が起こる事もあるし……やっぱり、川の中かな。メンテナンスが難しくなるんだよね……一々川に入らないといけないし。【座標指定】で流されないようにだけは出来るし……それで良いのかな……私がメンテナンスするなら、別にそれでも良いんだけど、私が毎回見に行ける訳でもないし……橋の裏に取り付け……どのみちメンテナンスがなぁ……側面……側面ならギリギリ付けてもメンテナンス出来るか。命綱を付ければ、安全性は確保出来るだろうし……そうなると、橋が出来るまではお預けになるかな。いや、それだけで川の安全を判断する事は出来ないし、海にも設置するから、結局設置場所の問題が出て来る。いっそ、川の中と外に置くか。雨量測定魔術道具よりも魔術的な面で言えば、簡素な作りだし、コスト的には落ちるから、数を多くしても問題はないはず。ここら辺はマリアナに相談してみよう。取り敢えず、機能試験で川と海に沈めて設置する感じかな。こっちも同期術式で記録は共有されるから思考機で分析出来るし)


 そこまで考えたセレーネは、フェリシアの肩から口を離して、唾液で止血する。


「考えはまとまったかしら?」

「うん。取り敢えず、動くかどうかの確認をするために沈める事にする。本格的な運用になったら、橋とかへの取り付けを考えるかな。メンテナンスの問題があるから、ここら辺はマリアナと相談」

「まぁ、セレーネが毎回メンテナンス出来る訳でもないものね。誰でもメンテナンスが出来る場所に置いておかないと難しいわ」

「でしょ? 場所の把握とかもあるし」

「そもそも水に耐性はあるのかしら?」

「あるよ。増水時を考えてあるからね。ただ水の中でも動くようにしてあるだけで、錆とか藻とかが出る可能性はあるから、そこがメンテナンスで注意するべきところかな。よし! カノン!」


 セレーネが部屋の外に呼び掛けると、一分ほどでカノンが入って来た。


「如何されましたか?」

「設置に行くから付いてきて。川にも行くからベネットにも声かけてね。フェリシアも行くでしょ?」

「ええ」

「ユイとミュゼルにも声かけてくる。マリアは?」

「お部屋の掃除をしています」

「じゃあ、部屋に寄ってから行こうかな。カノンは魔動車の準備をしておいて」

「分かりました」


 セレーネはフェリシアを連れて、一度自分の部屋に戻っていく。そこではマリアが部屋の掃除をしていた。


「あれ? セレーネ、フェリシア様。どうしたの?」

「設置に行くよ。早く早く」

「はいはい。ちょっと待ってね」


 セレーネの催促に困った顔をしながらも、マリアはテキパキとベッドメイキングを終わらせていった。その他の掃除は既に終わっているため、このままセレーネに同行する。

 三人は、ユイとミュゼルの部屋へと移動する。


「ユイ、ミュゼル、水位測定魔術道具を置きに行くけど、一緒に来る?」

「ええ、行くわ」

「う、うん……」

「それじゃあ、準備して外に来てね。メイも来てね」

「はい」


 声掛けを終えたところで、セレーネはフェリシアとマリアを連れて外に出る。そこではカノンとベネットが待っていた。ベネットの傍には、馬具を着けた馬が待機していた。


「おう、嬢ちゃん」

「何? その馬」

「魔動車は嬢ちゃん達でいっぱいになるだろうからな。先に川の方に行って安全を確保しておく」

「そう? ありがとう」

「おう」


 ベネットは馬に乗って川の方に向かって行った。魔動車の乗車人数的に、ベネットが乗ると確実に狭くなる事からベネットは先に馬に乗って離れた場所にある川の安全確保に向かった。海はすぐ近くにあるため、何かあれば他の騎士が来るだろうという考えもあった。

 セレーネとフェリシアが魔動車で待っていると、十分程で外に出る支度を終えたユイ、ミュゼル、メイが合流して海へと向かう。

 二分程魔動車で移動して、セレーネ達は海に着いた。夏という事もあり、涼しい潮風が吹いている。


「さてと、ズボン脱いで良い?」

「駄目です。水着を着ていないでしょう。裾を捲りますので、少しお待ちください」


 カノンがセレーネのズボンの裾を捲る。そして、靴と靴下も脱がせていく。


「なるべく濡れないようにお気を付け下さい」

「うん」


 セレーネが海に向かって行くので、カノンも靴と靴下を脱ぎ、スカートをたくし上げて、高い位置で固定する。そして、そのままセレーネに付いて行った。


「どちらに設置するのですか?」

「常に波がある場所。満潮と干潮の違いは、ある程度把握してるから、もう少し奥かな」


 カノンはセレーネと手を取って転ばないようにさせながら進んで行くある程度進んで行ったところで、セレーネは水位測定魔術道具を設置する。形的には全体的に丸い。それを踏んでも刺さらないようには調整されていた。

 中腰での作業になったセレーネは、引き戻される波に足を取られる。


「あっ……」

「お嬢様!」


 カノンが支えるが、波によって服が濡れてしまった。


「濡れちゃった」

「着替えはご用意してあります」


 カノンは、セレーネがいつ必要としても良いように【空間倉庫】にセレーネの着替えを何着も常備している。だが、セレーネが濡れないに越した事はないので、そこを注意していたのだが、セレーネの姿勢も相まって防ぐ事は出来なかった。

 これ以上濡らす訳にもいかないため、カノンはセレーネをお姫様抱っこして、海岸に戻っていく。既にマリアがタオルを準備して待っているので、メイにセレーネを預ける。マリアとメイでセレーネの着替えを行い、カノンは自分の足を洗う。

 そうして川に行く準備を整えて出発した。

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