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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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雨量測定魔術道具

 それから一週間が経ち、セレーネは測定用の魔術道具の試作を始めていた。材料は王都に転移して購入している。

 セレーネは慣れた手付きで測定魔術道具を作っていく。機能としては、【座標指定】と分析魔術を組み合わせる事で範囲内の雨量や水位の情報を得る事が出来る。その分析した内容は【記録媒体】に保存される。これらは【思考演算】により制御される。この【記録媒体】には同期術式を組み込み、対となる【記録媒体】と情報を共有。別の思考機で読み取り、情報を【投影結界】で映し出すというものだ。

 設計案はシンプルなものを採用している。本体は四角錐。その底面に球体を付ける。この球体はコアであり、地面の中に埋めるものだ。四角錐の先端は丸く削られており、踏んでも刺さらないように調整されていた。


「うん。こんな感じで良いかな」

「本当にシンプルにまとまったわね」

「うん。棒状のものとかで分かり易くするって方法もあったけど、結局【座標指定】は、これを中心にして、上空何メートル先の空間って感じの指定だから、特にそういう要素は必要ないんだよね。結局棒を伸ばしたところで、本体はここだから。コアは地面に隠すし、何ならコア自体に【座標指定】を施して地面と一体化させるつもりでもあるしね。早速試験をしてみよう」


 セレーネは、フェリシア、ユイ、ミュゼル、カノン、マリア、メイを連れて、砦の外に出る。すると、門の外にベネットが立っていた。その先では騎士団の団員達が走り込みや模擬戦をしていた。カルンスタイン領騎士団団長として、指導を行っているのだった。


「ん? 視察か?」

「ううん。試験」


 セレーネが持つ奇怪な見た目の物体を見て、魔術道具の試験だと気付いたベネットはカノンの方を見る。


「護衛はいるか?」

「すぐそこだから大丈夫。危なかったら魔術で知らせるから」

「分かった」


 近くにベネットがいるという事もあり、セレーネは安心して作業をする事が出来る。スコップで穴を掘り、コアを埋めてから起動させる。すると、雨量測定魔術道具が移動しなくなる。地面との相対座標に固定されたからだ。

 セレーネは、そこから送られる情報を自分で直接受け取る。


「う~ん……今日は雨が降ってないから情報がない……フェリシア」

「魔術で雨を降らせろって事?」

「うん」

「出来るかしら」


 フェリシアは空に向かって水魔術を放ち、人工的な雨を降らせる。すると、セレーネの中にも雨が降っているという情報が入ってくる。


「う~ん……まぁ、分かるかな。これをどんな風に判断すれば良いか分からないけど。その辺りは、少しずつ分かってくるかな。取り敢えず、大丈夫そおうぇ……」

「お嬢様同期を切ってください」


 既に袋を用意していたカノンが回り込んでセレーネはその中に嘔吐する。雨の情報が直接頭の中を駆け巡っていき、吐き気を催していたが、耐えきれずに決壊してしまっていた。

 セレーネは、カノンに言われた通り自分との同期を切る。吐き終えてから、カノンが渡す水で口を濯ぎ、布で拭った。


「うぅ……こっちの処理速度を上げてたから、情報が多くなりすぎた……」


 雨量測定魔術道具には、【魔術高速演算】を付けているので、そこから送られてくる情報はかなり多くなっている。そのための嘔吐だった。


「やっぱり【高速演算】をしておけば良かった……」

「次からは思考機に繋げる方にしなさい。自分で態々受け取る必要はなかったと思うわよ」


 ユイの指摘にセレーネは口を尖らせる。


「だって……こっちが早いし、すぐに対処も出来るでしょ……?」

「そういう考え方が駄目なのよ。横着しない! それでセレーネが体調を崩していたら意味がないでしょう? それにこれからは一研究者ってだけじゃなくて、領主としての仕事もあるでしょう?」

「むぅ……は~い……」


 ユイに叱られたセレーネは素直に頷きながらミュゼルに抱きついた。ミュゼルは、若干戸惑いながらセレーネを撫でる。この状況で必ず怒らない相手に甘える事で説教を回避しに向かったのだ。


「ミュゼルも怒った方が良いわよ。これからセレーネがやらかす事の方が多いだろうから」


 ユイはセレーネの頬を突っつきながら言う。それを受けながらセレーネはミュゼルにくっつく力を強める。ユイの言葉と甘えてくるセレーネの板挟みになったミュゼルは困惑していたが、ユイの言葉が勝った。


「こ、こら……だ、駄目でしょ……!」

「むぅ……」


 ミュゼルの全く慣れていない叱り方に、セレーネはどう反応すれば良いのかと悩み、ミュゼルに甘える事にした。


「まぁ、これは練習が必要ね」

「そういえば、一つ思ったのだけど、雨量測定魔術道具は雪の方を検出出来るのかしら?」

「雪?」


 フェリシアの疑問に、セレーネは少し考える。現状【思考演算】により雨と認識出来るものを観測するように設計されている。雪は固体となっているため、【思考演算】に認識されないのではないかというのがセレーネの考えだった。


「う~ん……ちょっと確かめてみようか。フェリシア、雪出せる?」

「雪……多分出来ると思うわ。マリア」

「はい。では、雨を降らせます」


 マリアが雨代わりに水魔術を出し、フェリシアがその水を凍らせて雪にしようとする。


「あれは……雹ね」

「だね。雪って難しい?」

「そもそもの話雪の結晶作りが難しいのよね」

「次はもう少し水を細かくします」

「お願いするわ」


 マリアが細かい水を用意してフェリシアが凍らせる。雪とはいかないが、それらしきものが降るようになっている。


「まぁ、雪はその時に確認してみれば良いか。思考機の方に行こう。ちゃんと私が受け取ってた情報を印刷しているか確認したいし」

「そうね。取り敢えず、情報の確認しながらカノンさんのお説教ね」

「え?」


 セレーネがカノンの方を見ると、カノンは優しく微笑んでいた。それは、カノンからの説教が確定している証拠だった。

 セレーネの執務室にある思考機から吐き出されていた紙とセレーネが得ていた情報が同じである事を確認した。確認出来た事により、カノンの説教が始まる。その間、思考機の調子などをフェリシア達が確認していった。結果、現状では異常は見られないために、ここからは実地試験として、このまま経過を見る事になった。

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