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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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領主生活開始

 セレーネは屋敷に帰り、カノンにドレスを脱がせて貰っていた。


「補佐官に会ったよ。マリアナってハーフエルフの女性」

「マリアナですか……確かに優秀ですね……問題はありませんでしたか?」

「陛下も言ってたけど、特に問題ないよ? そんなに性格に難があるの?」


 セレーネの問いにカノンは眉間に皺を寄せながら悩み始める。セレーネに話すべきかどうかという悩みだった。


「これから共に仕事をするわけですからお話ししましょう。あれはロリコンです」

「カノンみたいに?」

「私はお嬢様限定です」


 カノンの真面目な顔にセレーネは戸惑いながら頷く事しか出来なかった。


「年齢が上がる毎に好みの年齢も上がっているのですが、マリアナはハーフエルフですので、恐らく現在の見た目の年齢でしばらく止まります。丁度お嬢様前後の年齢が好みと予想されます。マリアナの信条として絶対に手を出さないというものがありますが、手を出さないだけで目の保養にするので危ない点が多いのです。因みにですが、こういった性癖はエルフ等の長寿の種族に多いそうです。ナタリアは違いましたが」

「へぇ~……全然そんな感じはしなかったけどなぁ」

「仕事ですので、その辺りは分別を付けていると思います。元々そういう性格でしたので」

「ふ~ん……それで何か問題が起こったりする?」

「人間は好き嫌いで判断を下してしまう事があります。そちらに影響してくる可能性は否定しきれません。後は妙にマリアナの熱い視線を受ける可能性もありますが、大きな問題とは言えないでしょう。私生活においてマリアナが必要以上に構ってくるかもしれませんが行き過ぎたものであれば、私が言い聞かせましょう」

「うん。じゃあ、任せるね」


 ひとまずマリアナの問題を把握したセレーネは、対処はカノンに一任した。仕事で接している分には何も不快感などはなかったので、セレーネとしてはマリアナに補佐官を続けさせるつもりだった。熱い視線というのも特に気にするような事ではないと考えていた。

 そんな風にして、二週間が経ち、セレーネ達はカルンスタイン領へと出発する。ベネットやナタリア達に関しては既に出発している。セレーネ達は最寄りの街に転移してから魔動車で移動する事になっている。


「さてと、それじゃあクロはしばらくお留守番ね。お母様がいてくれるからね」

「にゃ~……」


 クロは悲しげに鳴きながらセレーネに甘える。カルンスタイン領に屋敷が出来るまでの間、砦にいさせるわけにもいかないので、ミレーユに任せる事になった。ミレーユが別邸の管理をするようになったというのも理由の一つだった。


「それじゃあ、お母様行ってくるね」

「気を付けて。クロは任せて」

「うん!」


 セレーネはカノン達全員を連れて【空間転移】で最寄りの街であるルージュ公爵領の街に転移する。


「ここに来るのも久しぶりね」

「そういえば、ここ空間転移装置を置いた場所かも。物資は安定供給出来そうだね」

「そうね。輸送用の魔動列車も通す予定だから、その辺りは大丈夫だと思うわ。それじゃあ、魔動車のところに移動するわよ」


 ルージュ公爵領の街になっているので、ユイが案内する事になっている。そうして向かった先に用意されている魔動車に乗り込んでいった。


「リンド様が用意してくれたの?」

「うん。お父様が言っていたわ。移動が大変だから使いなさいって」


 リンドが用意してくれた魔動車に乗り込んだセレーネ達は、カノンの運転で移動を開始する。大型の魔動車であり、セレーネ、カノン、フェリシア、マリア、スピカ、ユイ、メイ、ミュゼルの八人が乗っている。

 セレーネは、助手席に座って今後の予定が書かれた紙を読んでいた。


「マリアナと合流して砦の人達との挨拶……現地の視察……聖域の確認……現地の視察と聖域の確認は長くなりそう。カノンは現地の視察までは一緒にいるんだよね?」

「はい。聖域に関しては、お嬢様とマリアナのみで視察に向かって頂きます。お嬢様とマリアナ以外は聖域に近づいてはいけませんので」

「う~ん……まぁ、仕方ないか。管理人が私とマリアナになるからね。今日中に終われば良いけど。砦まではどのくらい?」

「一時間半ほどです」

「割と遠いね。ちょっと寝る」

「はい」


 セレーネは、これからする事を考えて、一旦休む事にした。そうして一時間半が経ちセレーネはカノンに揺り起こされる。


「お嬢様。到着しました」

「ん……うん……」


 目を擦りながら起きたセレーネは、身体を伸ばしてから魔動車を降りる。すると、砦の前で砦の人達が並んでいる。


「ようこそお越しくださいました!!」

『ようこそ!!』


 思ったよりも熱烈な歓迎にセレーネは若干困惑していた。


「あ、うん。セレーネ・カルンスタイン・クリムソンです。先日からここの領主になりました。屋敷が出来るまでの間、この砦にお世話になります。よろしくお願いします」


 セレーネの挨拶に対して、砦の兵達は一斉に敬礼する。


「カルンスタイン卿に忠を尽くし! この身果てるまで仕える事を誓います!」

『誓います!!』

「あ、うん。ちゃんと自分も大切にするようにね」


 セレーネがそう言うと、砦の兵達は目を見開いて驚いた。まさか貴族であるセレーネからそんな事を言われるとは思っていなかったからだ。


「セレーネ様」


 砦の方から兵達の間を通り抜けてマリアナがやってくる。


「砦内部の案内は後回しにしましょう。カノン、魔動車出せる?」

「うん。出せる」

「それじゃあ、視察から始めよう。ミュゼル殿下、ユイ様、フェリシア様は、砦の兵がお先にお部屋へと案内致します」


 マリアナがそう言うと、兵の一部が敬礼しながら前に出る。


「皆は先に行ってて。私は仕事してくる」

「気を付けるのよ」


 フェリシアはセレーネを抱きしめてから砦の方に向かう。ユイ、ミュゼルも同じようにして後に続いていった。三人の世話係としてマリアとメイも同行する。

 セレーネはすぐに魔動車に乗り込むと、後部座席にマリアナとベネットが乗り込んだ。


「ベネット? いつの間に来たの?」

「元々視察の護衛だったからな。挨拶している間に魔動車の傍にいたぞ」

「へぇ~……そういえばあの砦の兵達って、あんな感じなの?」


 セレーネは、砦の兵士達が自分達を一斉に歓迎したのを見て普段から熱血系の人間なのかという風に考えていた。


「いや、最初は舐めた態度だったが、マリアナが全員を脅してああなったな」

「失礼な事を言わないでくれる。セレーネ様を年齢で侮って貶してきたから、あの砦にいる兵士達の雇用の権利はセレーネ様にあるから、全員解雇する事も可能だと言っただけです。その権利の一部は私にもあるとも」


 自分達の生活を握っているのは、セレーネでありセレーネを侮辱すれば生活を全て奪うという脅しだ。これは砦の所有者である領主の権利であり、自ら従わず反発するのであれば、解雇するのも当然のものだった。


「確かに、それらは当然の権利ですね。この前の反逆者のように反旗を翻される可能性を消すための権利です」

「ふ~ん……まぁ、自分勝手をされるよりも良いかな。あそこの砦の横に壁を作るのはいつ頃?」

「既に申請をしており、来月から始まります。聖域周辺まで続くような壁です。こちらの施工業者は、信頼出来る業者に頼んでいますので聖域を侵すことはないでしょう」

「そっか。それは街作りの業者とは違うんだよね?」

「はい。そちらは人手が多い業者を雇っております」

「そっか。じゃあ、取り敢えずは私に出来る事を片付ける感じだね」

「その通りです」


 こうしてセレーネの領主生活が始まった。

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