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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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都市の設計(仮)

 マリアナの次の話題は都市に関するものになる。


「カルンスタイン領には学術都市をお作りになるという事でしたので、街の広さは王都に並ぶと思われます。こちらが街の広さの予定です」


 マリアナは地図を広げてセレーネに見せる。それはセレーネが治めるカルンスタイン領全体を表した地図だった。そこには大きな円が引かれており、街の予定地が広く記されている。


「こんな大きいの?」

「研究機関なども置く関係で広くなっています。街の三分の二が学園のような状態になります。生徒達が暮らすのもこの区画です。自立を促す形です」

「自立? 家から離すの?」

「この学術都市は貴族の家族かどうかは関係ない場所になります。親元から離れ、自分で暮らしながら勉学に励む。貴族と平民の差が責任の差でしかないという事を理解させるというものです」

「そんな上手くいく?」

「いかないと思います。ですが、自身を全肯定する家族は傍にいません。多少はマシになるだろうという考えです。因みに陛下自らの提案によるものです」

「ふ~ん……まぁ、後は教育の仕方かな。ここら辺は学園を作ってからの話になりそうだから、このくらいにしようか」

「はい。実は都市の形に関しては、他にも案があります。変わらないのは、セレーネ様のお屋敷の場所くらいです」


 そう言ってマリアナは三枚の地図を出してセレーネに見せる。


「まずセレーネ様のお屋敷を中央に配置し、その周辺に通常の居住区。更に壁を挟んで学園区を作るというものです。学生達など外部の者達はセレーネ様の元には辿り着きづらいという形ですね。セレーネ様の安全を確保するためのものです」

「う~ん……」

「続いて都市を三つに分けるという点では同じですが、これを縦に繋げるというものです。学園区、居住区、セレーネ様のお屋敷という形ですね。それぞれの円が並ぶという形ですが、通路も壁で覆うので学園区から順番に入っていく事でしかセレーネ様の元に辿り着けません」

「これは無し」

「最後は、セレーネ様の屋敷及び居住区と学園区を切り離したものです。二つの円で構成されております。言ってしまえば、二つの街を作るというものです」

「これは……まぁ、良いかな。うん。最初ので良いよ。まとめた方が管理も楽でしょ」

「う~ん……逆ですね。実は、この最後のものが、一番良いと考えられます」

「そうなの?」


 セレーネの確認に頷いたマリアナは筆記用具を取り出して、地図に書き込んでいく。


「まず、こちらは砦です。敵が侵攻するとすれば、真っ先に狙うでしょう。この海岸線沿いには壁を建設予定です。街を作る上で砦のみですと、横から抜けられてしまいますので。その上で学術都市を前、セレーネ様も住む都市を背後に置きます。これで先に狙われるのは学術都市となり、セレーネ様の安全を確保出来ます。学術都市にも防衛機構を作れば、迎撃も可能でしょう」

「学生を盾にしたくないから逆で」

「領民を危険に晒す事になりますので致しかねます。学生を犠牲にする訳ではありません。先程も言いましたが、防衛はしっかりとします。また街と街の間に地下道を作り、緊急時に避難を可能とする予定です」

「でも、外聞が良くないんじゃない?」


 学生達を盾にするという発想になってしまったセレーネは、世間的に良くないのではと思っていた。それに対して、マリアナは首を横に振る。


「いえ、学生に死ねと言っている訳ではありません。避難ルートがしっかりとあるのが証拠です。そもそも都市が攻撃されるまで接近させるつもりもありません。その前に騎士団が出ますので。いざという時に学生よりも領主であるセレーネ様をお守りする事の方が重要なのです。例え、セレーネ様が【空間転移】で逃げ出す事が出来るとしてもです」

「じゃあ、もしもの時のために別の都市に転移出来るように転移装置を作るのは?」

「う~ん……陛下からの許可及び避難場所となる都市の領主に話を付けなければいけません。セレーネ様であれば、クリムソン領のレッドグラスでしょうか」

「うん。陛下に許可をとって、お父様に話を通せば大丈夫なんでしょ?」

「はい」

「なら良いかな。皆の避難も出来るから」

「こうした避難路は普段使いしないように施錠しましょう。では、この形で宜しいですね?」

「うん」


 都市の形が決まったところで、マリアナは別の地図を取り出して広げる。


「こちらは、セレーネ様のお屋敷の敷地です。こちらが、セレーネ様のお屋敷です。その隣にセレーネ様の使用人の宿舎があります。こちらはご要望通りに一階と二階が通路で繋がっています。そこから離れて、こちらはセレーネ様が執務を行う屋敷です。領主としての仕事に必要なものはこちらに揃えます。この傍に私が住む小さな家を建てます。補佐官としての仕事もありますので」

「うん。良いよ。私の屋敷と使用人の宿舎の扉とかは大きくしてるよね? この前の図面でもしっかりとしてたけど、使用人の方は確認してないから」

「大黒猫がいらっしゃるのですよね?」

「うん。クロ。メイドの皆とも遊ぶから、使用人の宿舎にも入れるようにして欲しかったの」

「はい。大丈夫です。そちらも考慮しておりますので。私以外の役員等は居住区に住み、この屋敷に通って貰います」

「うん。それが良いだろうね。信用出来るかも分からないし」


 セレーネが住む区域に関しては、基本的に女性のみが住む事になる。セレーネの家族が女性のみという点からの配慮だった。セレーネとしてもこれは有り難い事だった。


「騎士団の宿舎などに関しては、居住区と学術都市の二箇所に作ります。防衛の面からもこれが必要になります。ただこの辺りはまた話し合う事になると思われます」

「分かった」

「ひとまずこれで終わりです。またあちらに着いてから本格的に話し合う事にしましょう。聖域の話もありますので」

「うん。分かった。そういえば、マリアナってハーフエルフなんだよね?」


 真面目な話が終わったので、セレーネはマリアナについて少し尋ねる。


「はい。大変珍しい人種となっています。ご覧の通り、耳も普通の人なのですが、寿命と魔力が人族よりも遙かに長く多く、エルフ族よりも短く少ないです。中途半端な種族ですね。私も私以外見た事がありません」

「真祖よりも珍しい?」

「はい」

「ふ~ん……まぁ、うちには眷属もいるから特に気にしないで良いよ。私も珍しい真祖だしね。しかも、先祖返りでその先祖まで生きてるから」

「セレーネ様も珍しい部類になりますね」


 そんな話をしていると、ガンドルフが帰ってくる。


「どうだ? 仲良くやれそうか?」

「はい。もうお帰りになりますか?」

「ああ。頼む」

「では、セレーネ様。私は一足先にカルンスタイン領にてお待ちしております」

「うん。私も来週か再来週あたりに行く」

「はい」


 セレーネはガンドルフに触れてレッドグラスへと転移する。


「ふふふ……ふふふふふ……」


 セレーネがいなくなった部屋で、マリアナは怪しげに笑っていたのだった。

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