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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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再び叙爵式

 二日後。セレーネは叙爵式へと向かう。王都内において安全が確保されていないため、ガンドルフが来るのは直前となっている。つまりセレーネがドレスに着替えた後に迎えに行くことになっていた。

 王城の控え室に来たセレーネは【空間転移】でレッドグラスに向かう。


「陛下。お迎えに来ました」

「ああ。すまないな」

「いえ、こればかりは仕方のない事かと」


 ガンドルフとラングリドは既に準備を済ませて待機していた。叙爵式の時間はある程度決まっているので、その時間までに準備をしておけばスムーズに事が運べる。それを理解しているからだった。


「お姉ちゃん!」

「綺麗!」


 ガンドルフの臨時執務室に忍び込もうとしていたウルスラとミロクが、セレーネがいるのを見て忍び込むのではなく堂々と入って来た。


「ウルスラ様、ミロク様、ありがとうございます。でも、執務室に忍び込もうとするのは駄目ですよ」

『は~い!』


 元気に返事をするウルスラとミロクは、セレーネに抱きつこうとして、セレーネがドレスを着ている事を思い出しうずうずとしていた。ウルスラとミロクもこうしたドレスは着た事があり、着付けを乱してはいけないというように教えられているために抱きついてはいけないという自制が出来ていた。

 そんな二人の頭を、セレーネは優しく撫でる。二人の考えを見抜いて、それを褒めるような撫で方だった。セレーネに撫でられた二人は嬉しそう飛び跳ねる。そこにレフィーリアがやって来る。


「ウルスラ、ミロク、また悪戯して……って、セレーネちゃん。そっか。叙爵式だったわね。綺麗なドレスね」

「ありがとうございます、レフィーリア様」

「ミュゼルは元気にしているかしら?」

「はい。メイド達に囲まれてあわあわとしています。我が家のメイドは、皆、世話したがりだので」

「そう。楽しくやれていそうで良かったわ。それじゃあ、この子達は連れて帰るわね」

「お姉ちゃんまたね」

「またね」

「はい。また」


 レフィーリアに手を引かれて手を振りながら去っていくウルスラとミロクに、セレーネも手を振り返して見送った。三人が見えなくなったところで、セレーネはガンドルフ達の方を振り返る。


「では、転移します」

「ああ。頼む」


 セレーネは二人に触れて王城の控え室に転移した。そのまま叙爵式のために二人は出て行き、十分後に叙爵式が始まった。そうしてセレーネは正式に名誉男爵から辺境伯になり、領地としてカルンスタイン領を手に入れた。カルンスタインの爵位名はそのまま引き継ぐ事になったからだ。

 新しい爵位と領地を得たところで、セレーネは自分の補佐官と会う事になった。ガンドルフが、補佐官が待機している部屋まで案内する。この辺りの話し合いは、既に済ませていたのでガンドルフも把握していた。ラングリドは先にレッドグラスに戻って仕事に戻っている。


「王城で勤務していたからな。このまま対面して貰う。優秀なやつだ」

「う~ん……仲良くなれると良いんですが……」

「そこは問題ないだろう。何せ、ナタリア、ベネット、スピカ、カノンの同級生だ」

「あっ、やっばりそうなんですね」

「予想していたのか?」

「若くて優秀という点からカノン達の同級生かなと。カノンの世代は優秀な人が多いので」

「あの世代は奇跡的にあらゆる分野において優秀な人材が揃っていたからな。子爵家の令嬢だ。ただハーフエルフだな」

「人とエルフのハーフって事ですよね? かなり珍しい事例じゃなかったでしたっけ?」


 亜人と人の子供は、基本的に人族になる。それが原則だ。セレーネもそう習っているが、例外が存在する。セレーネ自身も先祖返りという名の例外となっている。


「ハーフエルフは吸血鬼と同じで申告しなければ分からない。見た目的には完全に人族だからな。ただ寿命と魔力が人族よりも長く多いって感じだな」

「寿命……私が永遠に生きるから、補佐官も長く仕えられる人材を用意して下さったって感じですか?」

「ああ。それでいて優秀だからな。即座に決まった。ただ……」

「ただ?」


 ガンドルフの表情が何とも言えないものになっているのを見て、セレーネの中に不安が生じる。


「性格に若干の難があってな……いや、仕事は真面目に全てこなすぞ。その前提がありながらも難がある。特にセレーネが相手だとそうなる可能性がある」

「えぇ……大丈夫なんですか……?」

「ああ。仕事は大丈夫だ」


 セレーネは余計に不安になる。そんな不安な状態になりながら、補佐官が待つ部屋に着き、ガンドルフが中に入るのでセレーネも後に続く。


「失礼します」


 セレーネが中に入ると、淡い紫色の髪を綺麗に整えて後ろでまとめた眼鏡の女性が立っていた。その瞳も髪同様に淡い紫色をしている。


「初めまして。マリアナ・ライラックと申します」

「セレーネ・カルンスタイン・クリムソン。よろしくね」

「はい。よろしくお願いします」


 自己紹介をしただけでは、セレーネはマリアナの性格に難があるようには思えなかった。


「これからセレーネの補佐官を務めて貰う。既にある程度動いて貰っている。セレーネが滞在する予定の砦への挨拶や屋敷の建設予定地の決定などは、マリアナがしている。諸々の説明はマリアナ本人からされるだろう。俺は王城内でやらないといけない仕事を軽く終わらせて来る。それまで二人で話していてくれ」

「分かりました」


 ガンドルフは、護衛を連れて王城内の視察に向かった。現在の修復具合の確認などを、これを機にやっておく事にしたのだ。ちょうど補佐官と二人きりで話すという機会が必要だったために用意された時間だった。


「ライラック子爵家の次女ですが、自身に爵位はありません。セレーネ様が普段カノン達にするように接して頂けると幸いです」

「うん。分かった。ひとまず言っておくと、私は領地運営に関して欠片も知らない。ある程度はカノンから授業を受けて理解したと思うけど、実際にやるとなったら、色々と別だと思う」

「はい。存じております。事前にそう伺っておりましたので。基本的には、私が表に立って対処する事になっています。運営初期は、セレーネ様に判断して頂かなくてはいけない事が多いので、少々忙しくなります。頑張りましょう」

「うん」


 二人きりになってもマリアナの様子に変化はなかった。そのためセレーネは、ガンドルフが何か勘違いをしていたのだろうと結論付けて、マリアナとの話し合いを続ける。

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