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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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三人の眷属化

 一週間後。セレーネは、ユイとメイを屋敷に受け入れてから【空間転移】でレッドグラスに向かい、ミュゼルを迎え入れようとした。だが、ウルスラとミロクに捕まり、少しだけ二人と遊んでから、ミュゼルと一緒に転移する事になった。


「ご、ごめんね……二人ともセレーネちゃんが好きだから……」

「ううん。基本的に私の周りって年上しかいないから、お二人と遊べて楽しいよ。ところで、荷物ってこれで全部?」

「う、うん。ごめんね。多くて」


 現在ミュゼルの荷物はゴーレム一号が【空間倉庫】に運び込んでいる。王城のミュゼルの部屋からセレーネが運び込んだ荷物なので、その数は最初から分かっていた。ただ、こっちで暮らし始めてから増えたものもあるかもしれないので、全部なのかを確認したのだった。


「ううん。全然大丈夫だよ。ゴーレムがやってくれるし、普段着以外は、基本的にはこっちに保管しておけば荷物にならないしね。ちょっとずつ引っ越しの準備を進めて、【空間倉庫】に荷物を詰めてる最中なんだ」

「そうなんだ」

「うん。カノン、フェリシア、マリアも【空間倉庫】を使えるようになったから、倉庫が四倍なんだ。ユイに預けていたゴーレムをカノンの【空間倉庫】に配備して、月の桜桃のゴーレムをフェリシアのところに配備したの。後は総合研究室のゴーレムをマリアの【空間倉庫】に配備したんだ。引っ越しで必要なくなるからね」


 必要がなくなる場所のゴーレムをそれぞれの【空間倉庫】に配備して整理を頼む事になっていた。王城への納品はまた時期を見てという事になっている。これは、まだ王城が戻らないので、その点を見てという話だった。


「叙爵式が明後日に行われて、正式に辺境伯を任命されるから引っ越しの日も近いんだ。家具に関しては、屋敷が完成してからなんだけどね。ミュゼルは一人での移動で良いんだよね?」

「う、うん。私のメイドは王城勤務だから……」

「そっか。うちは私に仕える感じだからなぁ。雇ったのはお父様だけど」

「そうなんだ……」

「うん。うちのメイド達は世話好きだから、覚悟しておいてね。専属メイドがいないって分かったら、全力でお世話しにいくと思うから」

「あ、う、うん……! 頑張る……」


 セレーネの世話は基本的にカノンがするために、世話欲に飢えているメイド達が多い。それでも時折セレーネやフェリシアの世話をするために大分解消している部分もあるが、特定のメイドを持たないミュゼルがいれば、こぞって世話を焼きに行くのは目に見えていた。

 世話をされるのに覚悟というよく分からない事を言っているのだが、ミュゼルは両拳を握って覚悟を決めていた。


「それと家に行ったら眷属にするけど大丈夫なんだよね? ユイとかメイにも確認したから一応ね」

「う、うん……セレーネちゃんのお嫁さんになるから。ちゃ、ちゃんと頑張る……!」

「そこまで気負わなくて良いよ。ルリナとかメイは自分の主人に死ぬまで仕えるって想いで、私の眷属になってたりするし。私がミュゼルと一緒にいたいって思ったから、眷属にするんだよ」

「う、うん……お、お嫁さんとして頑張る……!」

「張り切りすぎないようにね。私はいつも通りで良いんだから。無理してミュゼルが疲れる方が嫌だよ?」

「う、うん……!」


 ミュゼルは、セレーネの迷惑にならないように自分なりに頑張るつもりでいた。セレーネとしては張り切ってくれるのは嬉しいが、ミュゼルが無理をしないかという心配があった。


『移送終了しました』

「ありがとう。中で待機。私のものとごちゃごちゃにならないように整理よろしく」

『承知致しました』


 ゴーレム一号が【空間倉庫】に戻ったのを見て、セレーネは【空間倉庫】の扉を閉じる。


「そ、そんな曖昧な言葉でも通じるの?」

「うん。運び込んだ時にミュゼルの荷物って認識させていたからね。その辺りの学習はするから。それじゃあ、行こうか」

「う、うん!」


 セレーネはミュゼルと手を繋いで【空間転移】により王都の別邸に転移する。転移先にはカノンが待っていた。


「お帰りなさいませ。ユイ様とメイさんがこちらでお待ちです」

「うん。早速眷属にするね。リーシアちゃんは?」

「既に待機して頂いています」

「良かった。じゃあ、早速眷属化を始めよう」


 セレーネはミュゼルとカノンを連れて、ユイとメイが待つ部屋まで移動し、三人を順々に吸血して眷属化していく。眷属化に必要な魔力などが多くなっているので、セレーネにも負担はあるが、カノンから血を飲む事で魔力を回復させて全員の眷属化を完了させていく。


「思ったよりも……痛いわね……」

「身体を作り替えているからね。ミュゼル、大丈夫?」

「う、うん……」


 ユイとメイは何とか普通にしているが、ミュゼルはベッドで横になっていた。痛みでかなり消耗しているからだ。だが、ここで終わりではない。カノンがリーシアを呼び、心臓への保護を始める。


「これで終わりです。皆さんお身体に違和感などはありませんね?」

「はい。ありがとうございます」


 ユイが代表して返事をする。カノンが三人をセレーネの部屋に連れて行く間に、セレーネはリーシアと話す事になった。そう。説教である。


「セレーネ?」

「リーシアちゃんがいれば、もう少しマシだったと思う!」

「私がいたところで、セレーネは私に街の安全を確保するように願うでしょう?」

「うぐ……」

「その油断はセレーネ自身のものです。相手が自分の知り合いでないのなら警戒心を持つようにしてください。それが最低限身を守る術です」

「絶対に信用出来る相手以外は信用せずに一歩引いて警戒する?」

「その通りです。これから貴族となり領主となるのであれば、尚のことその事を胸に刻みなさい。そうした警戒が自分及び家を守る事に繋がります」


 リーシアの説教はセレーネの人の良さに対するものだった。それによって、危ない瞬間が生まれていたために、リーシアとしても説教せざるを得なかった。その心は尊いものだが、その考えのまま生きていくには厳しい場面も多々ある。

 それが貴族社会になれば尚のことだ。セレーネがあまり踏み入ろうとしなかった場所に、リーシアは踏み入れている。その先輩からの助言という点もあった。


「セレーネ。家を持つのなら自分だけでなく家を守りなさい。自分だけを守る保身に走らないように。家族を大切にしなさい。これはセレーネには言うまでもない事だとは思いますが」

「うん!」


 元気に返事をするセレーネの頭をリーシアは優しく撫でる。


「一つお伝えする事があります。セレーネが統治する領地には、私達も住みます」

「本当!?」


 セレーネは嬉しそうな笑みでリーシアに飛びつく。リーシアはセレーネを軽々と受け止めて、頭を撫でる。


「はい。セレーネが心配ですから」

「やった! リーシアちゃん大好き!」


 自身の領を得ても、リーシアが変わらず傍にいるという事に対する喜びをセレーネは全身で表現していた。遠すぎる親戚ではあるが、セレーネにとって大事な家族である事には変わりない。その想いが溢れているのだった。

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