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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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辺境伯としてする事

 それから二週間で王都は、その姿を取り戻してきていた。建て直しになった家に関しては、まだ立て直されていないので、その分だけが空いているが、人々の生活は戻り始めている。王城に関しては、剣聖同士の戦いで壁を壊れた箇所が多く、後二週間は掛かるとされている。

 その中で、セレーネは地面の舗装や地下の抜け道を塞いでいた。犯罪に使われる可能性が高くなるので、有効活用するよりも埋めておいた方が良いという判断だ。

 家の取り潰しで、平民になった貴族達が暴動を起こし掛けたが、事前に察知していた事もあり、問題なく鎮圧されている。暴動を起こした結果、一族がまとめて極刑とされる事もあった。これに関しては、全てが自業自得でしかなく誰も同情などは出来なかった。

 そんな中で、セレーネは遠距離連絡用魔術道具のための中継基地の魔術的作業へも駆り出されていた。こちらの作業もしっかりと進めなくてはいけない内容ではあるので、セレーネは文句を一つも言わずに作業を終わらせた。

 結果的に再び休む暇がなくなりそうになっていたセレーネの元に一通の手紙が届く。その内容は爵位と領地の件に関する正式な知らせだった。セレーネは自分の部屋でフェリシアに寄りかかりながら知らせを読んでいた。


「辺境伯としての仕事は街作りと海からの侵略者への警戒、近くにある森の管理だって。学術都市とか云々は書いてないから私個人にお願いした事なのかな」

「そうなのかもしれないわね。ところで、森は何で管理する必要があるのかしら?」

「えっと……聖獣の住処に指定されているからだってさ。聖獣って何?」

「授業じゃやらなかったわね」

「そのままの意味で聖なる獣の事です」


 答えたのは、セレーネの部屋にやって来たスピカだった。その後ろからはカノンも入ってくる。


「聖獣は実在するとは言われていません。かつて存在した聖なる存在であり、世界が暗黒に閉ざされる時に人々を救うと教えられています。教会では有名ですが、一般にはそこまで広まっていません。御伽噺が好きな方なら知っているかもしれませんが。獣人の中には、そういった信仰をしている種族もいるらしいです」


 スピカはそう言って、カノンの方を見る。視線を受けたカノンが説明を引き継ぐ。


「確かに信仰している種族もいますが、現在では極一部です。信心深い年配の方が多いですね。猫人族では、クロのような大黒猫を信仰していたりします。今はほぼほぼいませんが」

「にゃ~」


 名前を呼ばれたクロが起き上がってカノンに顔を擦り着ける。なので、カノンはクロの事を撫でてあげた。


「私の家は特に信仰はしていません。というよりも、既にそう言った信仰をするのは、本当に年配の方だけなのです。聖獣に関しては、私も詳しくは知りません。少なくとも、クロは聖獣には数えられないと思います」


 話の話題になっているクロは、カノンに甘えた後、セレーネの元に向かう。セレーネが両手を広げて迎えてくれるので、顔をすっぽりとはめてセレーネに撫でて貰う。セレーネはフェリシアに寄り掛かっているので、結果的にフェリシアが大変だが、嬉しそうなクロを見てフェリシアも後ろから撫でてあげていた。


「そうですね。教会では聖獣を角の生えた馬ユニコーンとしています。清浄なる泉に棲み着き、穢れたものを浄化する存在です。それが暗黒?」

「暗黒というものは恐らく魔王を指し示す言葉だと考えています。魔王が勢力を広げた時、ユニコーンが動く。そういう言い伝えです。現在は人間が普通に倒すのでユニコーンが動く事はほぼないそうです。実際、魔王が現れた時にユニコーンが現れたという話は全く出なくなりました。広まるのは魔王を倒した勇者に関する事ばかりです」


 ユニコーンが動く前に、魔王を討伐する者が現れるためなのか、ユニコーンが現れるという話は全く出なくなっていた。この事があり、ユニコーンに関する話は、全く出なくなっていた。そもそも目撃情報も一切ないため、その存在自体が疑われている。

 一部貴族などは聖獣の存在自体は知っているために、聖獣が生息すると言われている場所を聖地として保存するという決まりが出来上がっていた。この決まりに疑問を覚える者も少なからずいる。だが、王家が作り出した決まりであるために従うほか無かった。


「ふ~ん……じゃあ、私がするべきは、その森に誰も入らないようにする事って事?」

「そうですね。恐らくは、その通りかと。お話が完全に決まったのでしたら、その地域を治めていた貴族が出した条例を確認してみましょう。森に入る者には重大な罰を与えるようにするのが良いと思います。人の興味を誘うようになりますが、まともな人間は森を侵さないようにするでしょう。恐らく国王陛下からも似たような話があると思います」

「なるほど……それもそっか。色々と決める事が多そう。あっ、一応資料はくれるらしいよ」


 セレーネは、手紙を読み進めていき、後日資料を渡すという情報を見つけた。この資料は、セレーネが統治する予定の領の条例やその他統治に必要な情報などを載せておくものだ。


「それでしたら、条例なども決めやすいですね」

「うん」


 セレーネが統治の素人であるために、そのための資料はガンドルフ達側で用意する事になっていた。補佐官も付けるので、大きな問題はないはずだと考えられている。


「後、ユイとミュゼルとの婚約を発表するって。これはこっちでも了承してるから問題ないね。同時に辺境伯の叙爵も発表するみたい」

「そうなるわね。そうじゃないと、婚約に対して何かを言う者が出て来るかもしれないもの」

「後は……これに関してリンド様と陛下とお父様の三人と一緒に話し合うみたい。だから、明日は王城に行ってリンド様をレッドグラスに送る事になるかな。諸々決まったら知らせるね」

「ええ」


 フェリシアは、セレーネの頭を撫でる。セレーネは嬉しそうにフェリシアに寄り掛かり続けた。他の二人との結婚が決まっても二人の仲の良さは全く変わらず、互いに互いを好いている事がよく分かるラブラブ具合だった。

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