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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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本人達に確認

 おやつを食べ終えたウルスラとミロクはセレーネの腕の中で眠ってしまったので、エミリアが回収していった。そうして二人になったところで、セレーネも腰を上げる。


「さてと、私もそろそろ行くね」

「あ、うん……王都に帰らないとだもんね……」

「いや、陛下と平和的に話してくる。多分お父様も関わってるだろうし」


 そう言ってウィンクするセレーネだったが、言葉選びと握りしめた拳が若干の怒りを表していた。


「こういう結婚とかは当人抜きで決められると困るから。しっかりとこっちにも最初から話を通すように言ってくる」

「あ、う、うん……いってらっしゃい……」

「ミュゼルも行く?」

「う、ううん……多分、セレーネちゃんだけの方が話が進みやすいと思う……」

「そう? じゃあ、パパッと済ませてくるね」


 セレーネはそう言って部屋を飛び出してガンドルフ達が仕事をしている執務室に飛び込んだ。


「陛下! お父様! お話があります!」


 ガンドルフがいる手前丁寧な言葉遣いで飛び込んできたセレーネに、ガンドルフとラングリドは目を丸くしていた。ラングリドとしては、セレーネの突発的な行動にはある程度慣れているが、ガンドルフがいる場でもするとは思わなかったのだ。


「ミュゼルとユイの婚約者の件を聞きました。私を婚約者にするという事ですが、私に対して一切話が来ていないのはどういう事なのでしょうか? 私にはフェリシアという婚約者がいます。フェリシア自身は、貴族だからそういう事もあると納得してくれますが、ちゃんとこちらの意思も確認して欲しいのですが。私達が逃げ出せる道を封じて婚約させるのは、大人としてずるいと思います」


 セレーネの言葉を聞いて、ガンドルフとラングリドは申し訳なさそうな表情で顔を見合わせていた。


「あ~……そうだな。貴族間の婚約は大体親が話す事が多い。そういった点から当人に話すのが遅れた事を詫びよう。ある程度の書類が出来たところで、話をするつもりだったのだが、まぁ、丁度良い。セレーネの意見を聞かせてくれ。俺達は、それを尊重する事を国に誓おう」


 ガンドルフの言葉にラングリドも頷く。これでセレーネの意見を絶対に尊重するという事が決まった。セレーネが断れば、この話は白紙になる。


「私は良いですけど、私と結婚するなら、二人は私の眷属にしますよ? 死んで別れるなんていうのはごめんなので」


 あっさりと了承されたので、ガンドルフは少し拍子抜けしていた。ある程度の説得の言葉は持ち合わせていたが、その言葉の意味も無くなっていたからだ。


「セレーネが王家に嫁ぐ訳ではないからな。その辺りは気にしないで良い。セレーネと結婚した時点で、王位継承権は持たない。裏から王家を操るというのも不可能だ。この時点で王族の中でも国への発言権は一番低いものとなるからだ」

「逆なら口を出す事が出来るって事なんですか?」

「そういう事だ。これは王族に男児が生まれなかった時に行われる事だが、ここ数百年は起こっていないはずだ。大体は嫁に出される。王家との繋がりを持ち、国に忠誠を誓うという名目だな。ユイに関しても、リンドから許可は貰っている。

 これらの話が出て来た理由は、二人の婚約者が反逆者の家族だったという事もあるが、もう一つ重要な話に関わるからだ」

「重要な話……それは私も関わる事という認識で良いんですよね?」


 セレーネの確認にガンドルフは頷く。


「ああ。寧ろ、話の中心はセレーネだ。まずセレーネの名誉男爵の称号を取り上げ、辺境伯の称号を授ける」

「え?」

「まずは、これを見てくれ」


 困惑しているセレーネに説明するために、ラングリドが中央にあるテーブルに地図を広げる。そこにセレーネとガンドルフが集まる。


「今回の反逆により多くの貴族の家が取り潰される事になった。理由は分かるな?」

「思想が受け継がれている可能性を考慮したから?」

「そうだ。そこで所有していた領土も取り上げる事になる。そうして、空白地帯がいくつか生まれた。いつまでも空きを作ってしまうのは好ましい状況ではない。そこで、主要な街がある領には、いくつか信用出来る貴族を配置する事になった。だが、その中で辺境の方に土地が余る事になった。あまり広すぎても管理が出来ないという事でも本当に空白地帯になったという事だ」


 ラングリドが指で示すのは、クローム王国の海側にある領だった。周辺の領に土地を分けても、まだ余る領だ。広すぎず狭すぎない。中途半端に残っているが、近くに街がないために管理するのが不便な状態になっていた。


「ここをセレーネに任せたい。街を造り、この一帯を管理出来る環境を作ってくれ」

「無茶すぎ」

「当然補佐を付ける。海が近いという事もあり、貿易も期待出来る。だが、こちらの考えとしては、セレーネには学術都市を造って貰いたい」

「辺境に?」

「寧ろ辺境だからこそだ。学術都市となれば、人が出入りする。そこに向かうまでの道程の街にもある程度人が出入りするだろう。辺境への人通りを増やす。それが目論見だ。そして、これには研究者であるセレーネ、学問に関する研究をしていたユイ様が適任と考えている」

「街を造るのに時間が掛かりすぎるよ。長期的なものって事?」

「その通りだ。この長期的な考えを実現出来るのは、長期的に活動が出来る存在。つまりセレーネだ。辺境伯であるセレーネは、辺境を平定する使命がある。中央の社交界に出る必要はそうそうない。セレーネにとっては有り難いだろう」

「まぁ……でも、総合研究室はどうするんですか? ナタリアと二人で始めているものですが、私がいなくなればナタリア一人です」

「勿論ナタリアもこちらに移動する。総合研究室は、こちらで続けて貰う。学術都市であれば、賢者であるナタリアがいる理由も付けやすい。発展していけば、一大都市になるだろう」

「そうして辺境に力を付けていくという事ですか?」

「ああ。概ねその通りだ。セレーネも研究を続けながら上手く回るように人を使ってくれ。人選なども粗方決まってきた。ミュゼルとユイを婚約者にしようと考えたのは、さっきも言っていたが、ユイの研究が役立つという事に加えて、セレーネに王族と公爵との繋がりを持たせる事で、取り入って支配しようという考えを持たせないようにするためだ。ユイとミュゼルには既に確認を取ってある」

「私がこちらにいる事で、セレーネ達への連絡が遅れたという事だ。どのみち、今の状況が落ち着くまでは、この話は出さない予定だった。だからこそ、親同士で予め決めておくという方法を取ってしまった。すまないな」

「う~ん……話は分かった。取り敢えず、フェリシアにも確認してから返事するよ。良いって言うと思うけど、こういうのは確認が大事でしょ?」

「ああ」

「それじゃあ、また来るね」


 セレーネはそう言って、ミュゼルの部屋へと転移した。


「ふぅ……確かに配慮が抜けていたな。国の復興を急ぐためとはいえ」

「はい。セレーネにとっても悪い話ではない事で私も大切な点が抜けていました」

「取り敢えずは、人選だけでも進めておくか。まだ計画段階だ。後々棄却しても構わん」

「はっ」


 貴族の断捨離によって揺らぐ国力を安定化させるために、ガンドルフは計画を進めるつもりでいた。だが、それもセレーネ達が了承すればの話だ。

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