気を遣われるセレーネ
取調室を出て来たセレーネ達を迎えるようにリンドも出て来た。
「すまないな。こんなことに付き合わせてしまって」
「いえ。あの人はどうなるんですか?」
「ふむ。セレーネはどうしたい?」
リンドは、直接的に対処したセレーネに処遇をどうしたいのかを訊く。これはセレーネがどう考えているのかを確認するためでもある。セレーネが言う通りの罪状になるとは限らないが、セレーネがしっかりと罪に関して考えられているかの確認だ。
「利用出来るだけ利用したら死罪か懲役ですかね。協力したからって無罪はないかと」
「その通りだ。情状酌量の余地がある事から死罪はないだろう。絞り尽くしてから、懲役刑だろうな」
「協力的ですからね。ですが、契約魔術の方には気を付けてください。【時間停止】を永続して発動するようにしていますが、実際どこまで効果を発揮し続けるか分かりませんので」
「ああ。考慮しておく」
リンドと軽く会話をしたセレーネは、監獄を後にする。少し硬い話をしていたので、セレーネは軽く伸びをした。
「ふぅ……カノン、今日の予定は?」
これからどの作業をしに向かうのかという意味でセレーネはカノンに確認する。それに対して、カノンは困ったように笑う。
「現状は特にありません。というよりも、全ての場所からお嬢様に休んで欲しいという話を頂いています」
「でも、まだ復興に必要なものはあるでしょ? 私だって、瓦礫運びくらいは出来るし」
「お嬢様が様々な場所で働き、力を貸しているのかを知っている方が多いのです。特に騎士一同からはお嬢様が吐き戻している姿なども目撃しているために一旦休んで欲しいという意見が多くなっているそうです。なので、お休みください」
今回の反逆を解決した立役者がセレーネである事と王族を守ったのがセレーネである事は、多くの民に広まっている。そのためセレーネが働いているところを見た民達や騎士、衛兵から過労で倒れないかなど、様々な事が気にされていた。
「むぅ……まぁ、陛下には指輪を返したし、もう全権がある訳でもないからなぁ……あっ、フェリシアだ!」
むくれていたセレーネはフェリシアを見つけて上機嫌になり突撃した。フェリシアの後ろから飛びついて抱きしめる。唐突にセレーネが抱きついてきたために、フェリシアも少し驚いていた。
「セレーネ。急に飛びついたら危ないでしょう? 公爵閣下の呼び出しは終わったのかしら?」
「うん。私も手伝うよ」
セレーネがそう言うと、フェリシアはセレーネを抱きしめながら頭を撫でる。
「大丈夫よ。セレーネは休みなさい。セレーネがやらないといけない内容はもうないでしょう? あの日から働き過ぎよ。まともに休んだのはいつ?」
「う~ん……」
セレーネは自分が休んだ日を思い出す。だが、仕事途中の休憩などをした記憶はあるが、しっかりとした休日を挟んだ覚えはなかった。
「一度もありません」
セレーネが答えに至る直前にカノンが答える。カノンからしても、セレーネにはしっかりと休んで欲しいためフェリシアからもしっかりと言って欲しいと考えていた。
「ほら、常に一緒にいるカノンさんもそう言っているでしょう? 今日からしばらく休みなさい。セレーネが働くと、他の人達がセレーネを心配するのよ」
セレーネが心配だという話は、フェリシアも聞いていた。だからこそ、セレーネを休ませた方が良いという風に考えているのだ。フェリシア自身もセレーネが働き詰めという事に気付いていたので、セレーネがやらなければならない事が終わり次第休ませようと考えていた。
「むぅ……」
「セレーネは十分にやってくれたわ。どうしても何かしたいのなら、レッドグラスに行ったら良いんじゃないかしら。陛下がお仕事をくれると思うわよ」
「それだ! 王都は復興ばかりだけど、レッドグラスなら……何もなくない?」
王都は復興という仕事が溢れかえる程存在している瓦礫の撤去から家の再建など、手伝える事は多い。だが、レッドグラスとなると、何も壊れておらず、セレーネがガンドルフの仕事を手伝える可能性は限りなく低い。そもそもそういった仕事などをしていないからだ。
結局仕事はなく帰ってくる事になる。フェリシアはそれを考えていたので、バレてしまった事で苦笑いする。
「バレたわね。とにかく、セレーネは休みなさい。レッドグラスでミュゼル様とお茶をしてきても良いし、ユイとお茶をしても良いじゃない。私はゴーレムの管理があるから無理だけれど、セレーネはそのくらいしても良い程の仕事をしているのだから」
「う~ん……じゃあ、ミュゼルの様子を確認しに行こうかな。色々とやっててあれから話せてないし」
「そうすると良いわ」
「じゃあ、またね」
「ええ」
フェリシアと別れたセレーネは屋敷に戻って、レッドグラスに転移する。レッドグラスから出る事はないので、カノンには屋敷での仕事をして貰い、セレーネ一人でレッドグラスに転移していた。
「よっと。取り敢えず、お父様と陛下に挨拶しないと」
転移に使用する部屋から出たセレーネは、ガンドルフとラングリドの仕事場に来た。
「失礼します」
「セレーネか? どうした? 王都で問題か?」
ガンドルフはセレーネが来た事で何かしらの問題が生じたのかと考えていた。
「いえ、休めと言われてしまい、やる事もないのでミュゼルとお茶でもしようかと考えてきました。一応、こちらに来ているので挨拶をしておかなければと」
「そうか。律儀だな。セレーネの休みに関しては、俺も同意見だ。本来であれば、復興作業中も休み続けて良かった位だからな。ミュゼルは部屋にいる。ゆっくり休め」
「はい。ありがとうございます。では、失礼します」
セレーネはガンドルフ達の仕事部屋を後にして、ミュゼルが使っている部屋に向かって行く。その途中でラングリドと遭遇する。
「セレーネ。何かあったのか?」
「ううん。皆が休めって言うから、ミュゼルとお茶しに来た。サマンサいる?」
「そうか。ゆっくり休め。サマンサならベルを鳴らせば来るだろう」
「分かった。そういえば、復興はまだ掛かりそうだよ。瓦礫の撤去は大分終わってきたけど、破損した家を直したりするのが進んでないから。王城もベネット達の戦闘で壊れた箇所とかを直すのに苦労してるみたい」
「そうか。こっちでもある程度把握している。今回の反逆に関わった貴族の家宅捜索と土地の差し押さえも始まった」
「そっか。それで恨まれたりしない?」
セレーネの心配は、これまでの経験からくるものだった。そうした当たり前の事をしているにも関わらず、それを恨みに思い同じような行動をしてくる事が多いのだ。
「そうだとしてもやった事は国家反逆だ。その家を許す訳にはいかない。国家としてな」
「そっか。じゃあ、頑張って」
「ああ。セレーネはちゃんと休むんだぞ」
「は~い」
ラングリドと別れたセレーネは、そのままミュゼルのいる部屋へと向かって行った。




