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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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浅からぬ因縁

 人の動きを【空間探知】で探りながら王都を歩いていたセレーネは、一つの異変に気が付いた。


「あれ?」

「如何されましたか?」

「ユイが王都を離れていく……入口じゃなくて壁から……飛ぶよ」

『はい』


 セレーネは二人の手を掴んで【空間転移】を使用する。転移する先は空。そこからユイがいるはずの場所を見下ろす。


「いた」


 セレーネの視線の先には、二頭の馬で引く馬車が走っていた。その屋根に転移した直後、カノンとユリーナが動く。御者台にいた男をユリーナが蹴り飛ばし、カノンが馬車の中に入り込んで内部にいた男二人を昏倒させる。ユリーナが蹴り飛ばした相手には、セレーネが【闇氷槍】を放ってトドメを刺した。


「お嬢様。ユイ様を保護しました。どうやら薬で眠らされているようです」

「そっか。良かった。これで普通にルージュ公爵家の人達だったらどうしようかと思ってたところだよ」

「…………」


 セレーネの言葉を聞いて、馬車を止めていたユリーナは平然とセレーネが心臓に【闇氷槍】を突き刺した御者を見ていた。


(セレーネ様、本当に躊躇いがなかったなぁ……きっと考えたのは刺した後だったんだろうなぁ)


 ユリーナは、セレーネの躊躇いのなさに関して、そう思って納得する事にした。


「ユイを預かるよ。【無期睡眠】掛けて、内部を調べておいてくれる?」

「はい」


 カノンからユイを受け取ったセレーネは、結界魔術でベッドを作って頬を叩く。


「ユイ~起きて~」

「睡眠薬を使われているとしたら、衝撃では起きにくいのでは?」


 ユリーナの意見にセレーネは手を打つ。


「なるほど。気付け薬ね。あったっけ? 三番魔術薬鞄取って」


 【空間倉庫】を開いたセレーネは、中のゴーレム一号に指示を出す。そうして【空間倉庫】からゴーレム一号の手が出て来て大きな四角い鞄をセレーネに渡す。


「ありがとう。えっと……これは神経毒消し……これは消化器官の毒消し……あっ! 食道炎用の薬! 飲んどこ」


 何度も嘔吐しているので、セレーネは念のために薬を飲む。真祖の再生力で食道炎になることは極希であり、なっても一時間もせずに治るが念のために服用していた。


「おっ、あった。気付け薬。揮発性が高いから、一回しか使えないのが嫌だよね」

「保存状態は大丈夫なのですか?」

「うん。この鞄に入れておけばね」


 セレーネが時間魔術の【時間停止】を主軸に作った劣化防止鞄。それが魔術薬鞄だった。しっかりと鞄を閉じる事で【時間停止】が発動して内部の時間を停止する。座標は鞄の中に設定されているので、鞄を動かしてもそれに従って動く。

 セレーネはユイの頭に膝を入れて気付け薬を嗅がせる。


「うっ……けほっ! こほっ!」


 ユイは苦しそうな表情をしながら咳き込んで起きる。ユイが起きたのを確認して、セレーネは瓶を鞄に仕舞って【空間倉庫】に入れる。適当に床に置いておけば、ゴーレム一号が勝手に仕舞ってくれるので、態々呼び出す必要もない。


「起きた?」

「おきっ……たっ……けほっ! 何嗅がせたのっ……!?」

「気付け薬。睡眠薬で眠らされたみたいだけど、覚えはある?」

「…………ある。けほっ! ふぅ……確か避難する必要があるって言われて……そのまま布で口と鼻を覆われたわ」

「いつぐらい?」

「街が騒がしくなってしばらくしたらだったと思うわ。危険だから近くの街に一時的に避難するって。お父様からの指示と言われたけど、お父様が王城にいてこっちにまで指示を出せると思わなかったから、怪しいと思って逃げようとしたら捕まったのよ」

「その話からすると、捕まってすぐは王都内のどこかに誘拐されていたって考えるのが一番だよね。この時間までいた理由は警備が一瞬でも緩む瞬間を待っていたから? それにしては馬車の用意が……ああ、馬車の用意か」

「お嬢様」


 セレーネが結論付けた時、カノンが険しい表情をしながらセレーネを呼ぶ。


「何かあった?」

「少々厄介な問題が」


 そう言ってカノンは、セレーネに一つの紋章を見せる。それは大きな蛇が円周に沿って掘られているものだった。


「これは……人身売買組織?」

「はい」


 その紋章は、幼少期のセレーネを誘拐して、クロの元飼い主でありセレーネを守ろうとしてくれたヒルダを殺した組織のものだった。


「それがユイを狙った?」

「どうやら人攫いの腕を買われたようです。計画書が」

「油断か慢心か。狙いは?」

「ユイ様、お嬢様、フェリシア様、他にも貴族の令嬢が狙われています」

「令嬢? まぁ、女の方が誘拐しやすいか。リストに何か書かれてない?」

「いえ。連絡は取っていないようです」

「分かった。向こうの死体も持って、転移しよう」


 ユリーナが担いできた死体も合わせて、セレーネは王都正面に全員を転移させる。すると、丁度リンドが衛兵達に指示を出しているところだった。


「ユイ?」

「お父様……」


 突如現れたためリンドもユイも驚いていた。


「リンド様。少々問題が」

「聞こう」


 セレーネは、カノンから紙と紋章を受け取ってリンドに説明していく。リンドはセレーネから紙を受け取り、そこにある名前をざっと読んでいく。


「兵を集めろ。今から言う貴族の家に向かい、所在を確かめろ」


 リンドが指示を出している間に、セレーネ達は馬車にいる人身売買組織の一員を拘束していく。【無期睡眠】を掛けているが、それを解いた時に決して暴れられないようにするためだ。


「足とか腕取る?」

「お嬢様。お気持ちは分かりますが、そのような状態にすれば精神的に問題が生じるかと」

「ああ、そっか」

「せめて人道の話をしない?」


 問題がなければ腕や脚を取る事に賛成している二人の会話を聞いて、ユイは困惑しながらもそう言う。


「ユイ。私達は人道を外れたゴミを処分する話をしているだけ。十分人道的でしょ?」

「手段の問題よ」

「その通りだ。せめて、話を出来るだけの理性は残さなければならない。話が終わった後は知らないがな。ひとまず、身柄はこちらで預かろう。こいつらも【無期睡眠】とやらを掛けているのか?」

「はい。拷問を始める時はナタリアか、私達をお呼びください。【無期睡眠】を解きます」

「ああ。分かった」


 リンドが指示を出して御者をユリーナと交代して中の人身売買組織の一員達を運んでいった。


「セレーネには、何度感謝しても足りないな。よくユイを助けてくれた」

「いえ、私も偶々ユイの反応らしきものが街を離れていく事に気付いただけです。問題はもっと大きいかと」

「ああ。全員の無事を確認出来れば良いが、出来なかった場合が問題だな」


 今後の問題が判明し、セレーネとリンドが難しい顔をしていると、街の方から一人のメイドが走ってきていた。血が付着しているメイド服から負傷していたという事が分かる。


「ユイ様……!」

「メイ!?」


 ユイはすぐにメイに駆け寄る。既に傷は塞がっているが流れた血などは戻っていない。そんな状態でもメイはユイを探すためにここまで走ってきていた。


「家の警備もしばらくは上げる必要がありそうですね」

「そうだな……ユイは本邸戻すとしよう。セレーネ、ゴーレムの回収を頼む」

「分かりました。では、私は王都の安全確認をしてきます」

「ああ。頼む」


 セレーネが適任である事は明白であるため、リンドも即座に頷いた。


「それじゃあ、ユイ、また今度ね。メイもちゃんと休んでね」

「ええ」

「はい……ありがとうございます」

「どういたしまして」


 リンドの許可も得たため、セレーネはカノンとユリーナを連れて再び警備に戻る。この警備でセレーネは十人程潜伏していた反逆者と人身売買組織の一員を捕縛する。その中で誘拐されていたと思わしき令状達も発見し、誘拐の被害はゼロで抑える事が出来たのだった。

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