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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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危機を乗り越えて

 騎士達が介入する事は出来ず、銀の杭がセレーネに突き刺さる。確かに皮膚を貫き肉に刺さった感覚を味わい、反逆者側の貴族が弓なりの笑みを浮かべる。

 そんな貴族の顔面をセレーネが鷲掴みにする。


「なっ!?」


 真祖であるセレーネの心臓に銀の杭を立てた。これでセレーネは死ぬはず。貴族はそう思っていた。だが、実際には意味がない。何故なら、セレーネの心臓はリーシアの魔術によって完全に保護されているからだ。そのため、セレーネに吸血鬼族の弱点は通用しない。

 更に言えば、セレーネは自分の身体に杭が刺さった段階で、時間魔術の【時間停止】を発動しており、心臓に刺さる前に杭が止まっていたので、どの道セレーネが死ぬ事はなかった。

 セレーネは鷲掴みにした貴族に意識封印魔術【無期睡眠】を掛ける。ナタリアから習得した魔術であり、術者もしくは術の解き方を知っている者にしか解く事は出来ない封印魔術だ。


「カルンスタイン卿!」

「大丈夫。でも、厄介だね。守るべき対象が分からなくなる」

「どこに裏切り者がいるか分からないという事ですね?」

「うん。ひとまず、こいつも持って行って。拷問すれば何か吐くと思うから。使用人の皆を守るために邪魔になったら、最悪捨ててもいいから。私かナタリアとかじゃないと起こせないし」

『はっ!』


 セレーネは騎士に後の事を任せて、まだ戦闘中の場所へと向かう。


(危なかった……心臓に達しても問題はなかっただろうけど、そんな事にならないに越した事はないもんね。【時間停止】が間に合って良かった。カノンに怒られるどころの問題じゃなくなるところだったし)


 セレーネは目の前に死がいた事を思い出して寒気を感じていた。大丈夫だと分かっていても、必ずしもリーシアの防御が防いでくれるとは限らない。可能性として限りなく小さいと分かっていても、それでも死の可能性はあったのだ。

 相手があからさまに怪しかったために対策を即座に打てたが、これがビルギントンなどが相手になっていれば、心臓にまで達していたかもしれない。


(取り敢えず、全員疑って掛かるのが良いかな。本当に相手の心内を判断材料に出来れば良いけど、その分析なんて不可能だしなぁ……)


 魔術で直接相手の心の中を調べる方法はない。そのため、【空間探知】の検索によって判別させる事も出来ない。

 先程と同じ目に遭わないようにするには、セレーネ自身が全てを疑って掛かる必要があった。

 そんな事を考えていると、正面に戦闘中の現場が見えてくる。セレーネは、戦闘中の反逆者と騎士との戦いに介入し、反逆者を全て葬る。その中でセレーネは一つ気付いた事があった。今の戦いで明らかに騎士側に相手を殺そうというだけの意思がなかったのだ。


「知り合いだった?」

「つい昨日まで一緒に訓練していた奴等……でした……」


 騎士の一人がそう言うと、全員が苦い顔をした。怒りと悲しみが綯い交ぜになった表情だが、どちらかと言えば悲しみが深い。昨日までは笑い合っていた相手が自分達を殺そうとしてきていたというのは、精神的にも苦痛を与える。裏切られた怒りよりも、自分達を平気で殺そうとしてきたという事実への悲しみが強いのだ。


「そっか。悪かったね」


 セレーネは大切な仲間だった相手を一切の躊躇なく殺した事を謝まる。


「いえ……最後にはこうしなくてはいけませんでした。それだけの覚悟を持てなかった俺達の怠慢です。殺そうとしてきている相手に対して、俺達の戦意が低すぎました。改めて助けて頂きありがとうございます」

「ううん。皆を連れて城を出て。そこに兵が集まってる」

「城から相手を逃がさないという事ですか?」

「うん。話が早くて助かるよ。悪いけど、それまでには覚悟は決めておいて。それが無理なら避難誘導とかに回って。無理はしないで良いから」

『はっ!』


 騎士達はセレーネに敬礼して使用人達を守るように囲みながら城の出口を目指していった。


「セレーネ!」


 自分を呼ぶ声に反応してセレーネが向くと、そこには騎士を連れたルージュ公爵家当主リンドの姿があった。


「閣下」

「リンドで良い。状況は理解しているか?」

「はい」


 セレーネはそう言ってガンドルフから預かっている指輪を見せる。それを見たリンドは驚いたように目を開いたがすぐに表情を引き締めた。


「セレーネがいたという事は、避難は済んでいるな。他の方々は?」

「同じく」

「よし。セレーネが把握している情報をくれ」

「城下でも、同じように反逆者の襲撃が行われています。そちらはナタリアが動いていますので、城下にいる者達が対応してくれていると思います。王城では、現在剣聖とベネットが戦っています」

「ベオルフ殿が反逆者側か……」

「ベネットが一人で大丈夫だと言ったので、私は戦闘中の場所に向かって反逆者を排除し、兵達に王城の出入口を固めるように指示を出しました」

「閉じ込めるつもりか。良い判断だ」


 セレーネはリンドの身体にも返り血が付いているのを見て、大きな戦闘を行っていたという事を察した。それと同時に【空間探知】の中にあった戦闘をしていたはずの場所に人がいなくなっているのを確認して、それがリンド達だったのだと判断する。


「それと守られている貴族の中にも反逆者がいます。銀の杭を心臓に刺されるところでした」

「何?」


 リンドは訝しむような表情になりながら考え込む。


「つまり、セレーネが真祖である事を知っていて、貴族主義を憎んで行動している事も知っているという事になるか」

「あの事件の生き残りですか?」

「見つけ出せなかった共犯かもしれん。心臓までは到達していないという判断で良いのだな?」

「はい」


 リンドは少し考え込む。この後の動きを考える事でセレーネをどう扱うかを決めかねているのだ。


(陛下から全権を委ねられているとはいえ、セレーネはまだ子供に近い。全権の責任を負わせるには、その肩は小さ過ぎる。比較的安全な場所から全体を把握して貰い、実働として俺が動く方がセレーネを守る上でも良いのではないか?)


 リンドが考えている間に、リンドの後ろで動きがあった。護衛の騎士の一人がリンドに向かって突っ込んで来たのだ。周辺警戒に当たっている騎士達の意識がリンドから外れるタイミングを狙った凶行だった。

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