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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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想定外の反逆者

 セレーネとベネットは次々に王城に侵入している反逆者達を始末していった。


「嬢ちゃん、どうだ?」

「この先で戦闘していそう。誰かを庇って戦っているところみたい」

「頼む!」

「真っ直ぐ進んで十字を左!」


 セレーネが、戦闘が起こっているであろう場所を特定し誘導。ベネットは指示に従いながら先頭を走っていき、戦闘に介入する。こうして被害を抑えていく。そうした戦闘の中で、セレーネは反逆者に共通する情報がないかを確認している。


(黒ずくめだけが反逆者とは限らない。何かしら見分けるものを持っていれば良かったけど、そんな分かり易いものを持っているわけもないか。王城の人達を調べようにも服装とかも全部違う。姿形が私の中に焼き付いているベネットと同じとはいかない)


 転移装置を設置する際に、ベネットと行動を共にしていた事もありベネットくらいであれば【空間探知】で特定個人として調べる事が出来るようになっている。逆に言えば、それくらいに接していなければ、何も情報がない状態では検索する事など不可能だった。

 セレーネの誘導に従いながら移動していくと、ビルギントンが他の騎士達と共に使用人達の盾になりながら戦っているところに出た。

 セレーネが【闇氷槍】で雑に攻撃し、陣形が乱れた反逆者達をベネットが狩っていく。


「カルンスタイン卿……」


 傷だらけのビルギントンの元にセレーネは駆け寄る。そして、回復魔術の【治癒の雫】を使って外傷を治していく。


「キャロット卿、ご無事で何よりです」

「陛下は……?」

「ご無事です。他の方々も。今は安全な場所に避難して貰っています」

「そうですか……申し訳ない……戦闘は不得手でして……」

「いえ、非戦闘員を背に守る姿勢、ご立派でした。ここからは我々にお任せください。王城の出入口を塞ぐように兵を動かしています。そちらに避難してください」

「助かります……」

「キャロット卿達の護衛を頼みます。ベネット、行くよ!」

「おう!」


 反逆者を排除したベネットを連れて、セレーネは再び駆け出す。その背中をビルギントンは見送る事しか出来なかった。

 セレーネは、【空間探知】で王城内を調べて行き、先程と同じような状態になっている場所をいくつか発見する。


「王城に残ってる使用人達を守ってる人達がいる」

「そこを狙うか」

「うん。ん?」


 セレーネは【空間探知】で違和感のある行動をしている反応があることに気付いた。


「どうした?」

「何か変な動き……壁を突き破ってる?」

「何?」


 セレーネの言葉にベネットも怪訝な顔になっていた。その間にも反応はどんどんと移動している。


「こっちに突っ込んで来る! 右!」


 セレーネの言葉に瞬時に反応したベネットは、セレーネを庇うように右側に移動した。その直後、壁を突き破って全身鎧の人が現れる。


「なっ……!?」


 その鎧を見たベネットが驚愕する。

 鎧に見覚えなどあるはずもないセレーネは、即座に【闇氷槍】を放った。何故なら、その全身鎧がベネットに剣を突き出そうとしていたからだ。全身鎧は、セレーネの【闇氷槍】を盾で防いだ。


「防いだ!?」


 剣だろうが盾だろうが削り取る事が出来る【闇氷槍】を一切削り取られること無く防がれた。そのことにセレーネは驚きを隠せなかった。

 セレーネを脅威と考えた全身鎧は、即座にセレーネを殺すためにベネットを抜こうとする。


「させねぇ!!」


 ベネットのシールドバッシュに合わせて全身鎧も盾を突き出す。互いにノックバックする。


「どうしてあんたが……!? 剣聖が反逆している!?」


 ベネットは全身鎧を睨み付けながらそう叫んだ。セレーネ達が対峙している全身鎧の男。その者こそが、現剣聖と呼ばれるベオルフ・ペンドラゴン・フォグブルーだった。


「知れたこと。この国の有るべき姿を維持するため」

「平民を虐げる事が有るべき姿だとでも言うの!?」


 ベオルフの言葉にセレーネが反論する。実際の被害者となっているセレーネにとってはベオルフの言葉は、受け入れがたいものだった。


「貴族とは平民の上に立つ者。平民とは貴族の持ち物。持ち物をどう扱おうと問題などあるはずもない」

「何を言ってる……あんたはそんな男じゃなかっただろ!?」


 ベネットがここまで動揺しているところをセレーネは見た事がなかった。その事から、ベネットが接した事のあるベオルフが今のような考えをするような人ではなかったと推測する事が出来た。


「考えが変わるような何かがあった」


 セレーネの呟きに目を見開いた。ベネットは、ベオルフを睨む。


「そうなのか!?」

「そのような事を知ってどうする? この状況が変わるとでも? ここにいるのは敵同士。ならば、する事は決まっているだろう」


 ベネットの返事を聞かずに、ベオルフが突っ込む。

 会話は打ち切り。ベオルフの行動がそれを表している。そうなればベネットも動かざるを得なかった。


「くそ……!」


 盾と剣のぶつかり合い。実力は拮抗している。年齢による能力の低下が、辛うじて拮抗するところまで落としてくれていた。


「嬢ちゃんは行け!」


 ベオルフの猛攻を盾で捌きながらベネットが叫ぶ。


「一人で大丈夫なの!?」

「ああ!!」


 間髪入れずに返事をしたベネットに、セレーネは背を向ける。その行動が、そのままベネットを信じているという事を示していた。


「愚かな」


 魔術を使えるセレーネを戦場から放した事に対して、ベオルフは失望する。ここは二人でベオルフに当たるのが定石だからだ。セレーネの援護はそれだけ大きい。


「残念だが……俺達はあんたと戦うために動いている訳ではないんでね!!」


 剣による攻撃を盾で弾き、ベネットが攻勢に出る。現剣聖と次代剣聖。ほとんど剣聖の称号は継承していると言われつつある二人。その戦いは激化していく。

 ベネットと別れたセレーネは、【空間探知】で戦闘中だと分かる場所に向かっていた。【空間探知】である程度場所の情報は得ているが、ここで【空間転移】を使う事はない。戦闘中の場所に転移すれば、魔術の流れ弾に当たってしまうかもしれないからだ。その負傷によるタイムロスは、セレーネの望むところではない。


(ベネットと離れちゃった……カノンに怒られるな……ベネットにも弁明して貰おう)


 カノンとの約束を守れなかったセレーネが心の中でそう決めていると、正面に戦闘中の一団が見えた。反逆者達は黒ずくめの服を着ているので、その戦場内での敵は見るだけで分かった。

 【空間転移】で反逆者達の頭上に出たセレーネは、【闇氷槍】を反逆者達の脳天から突き刺していった。

 そうして着地してから、戦闘していた騎士達の元に向かう。話を早くするために名誉貴族の称号を見せる。


「動ける人数は?」

「二名死亡。五名が重傷。動けるのは軽傷者を合わせて十名です」

「死体は置いていく。重傷者の治療を出来る者は?」

「いません」

「なら、軽く治療をしておくから、城の出入口に運んで。そこに兵が集まってるから」

「はっ!」


 セレーネは【治癒の雫】を重傷者達に浴びせながら騎士達が守っていた使用人と貴族の元に向かう。


「セレーネ・カルンスタイン・クリムソンです。陛下の命により、この事態の鎮圧で動いています」

「か、カルンスタイン卿……吸血鬼のか?」

「……はい」


 何故吸血鬼である事を確認するのか分からず、セレーネは怪訝そうな顔をしながらも頷く。


「そうか……良かった。手を貸してくれないか?」


 手を伸ばす貴族に、セレーネも手を出して立ち上がるのを手伝う。


「本当に……手間が省けて良かった……」


 そう言って、笑う貴族の手には銀の杭が握られており、その杭はセレーネの心臓目掛けて突き出された。

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