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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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緊急事態

 話し合いが終わったところで、ビルギントンは部屋を後にした。ここで決まった事を纏めて施行に向けて準備をするためだ。セレーネは、ガンドルフやミュゼルと話をするために残っていた。


「しかし、写真が広まれば問題が起こるのは、時間の問題になるな」

「どれだけ禁止してもやる人はいますしね」

「は、犯罪がなくならない理由……?」

「まぁ、それもあるね。結局バレなければ良いって考えが根本にあるからだけど。バレても逃げ出せば良いって考えもあると思うけどね。目撃者が全員死ぬとか。そういえば、貴族至上主義の人達ってどうなったんですか?」


 セレーネは、シフォンとジーニーが犠牲になった事件を思い出して貴族主義の人達がどうなったのかが気になっていた。その報告はあまり聞いていないからだ。


「現状の大臣達は貴族主義の者達を外した結果だ。民を想える人間を上に立たせる。それを徹底した。それに対しての意見もあったが、俺の考えを変えられるような奴はいなかった。というか、貴族として相応しいと思える奴らでもなかった。内部調査をさせて取り潰した貴族もいる」

「恨みを買っていそうですね」

「ああ。だが、野放しにしておけば、また事件へと発展してしまう可能性もある。見過ごす訳にはいかない。あれから七年近くか。大分掛かったが、それでも内側から変わり始めている。問題が起こるとしたらそろそろだろうな」


 ガンドルフは、セレーネの事件後から着実に貴族主義を掲げて平民を虐げようとしている貴族達を粛正していった。民を導く立場にいる者達が、その立場に溺れて民を虐げるなどあってはならない。ましてや、それによって多くの人々が犠牲になる事を容認し続ける事など出来ない。


「狙われるのは陛下のみでしょうか? 下手すれば、うちも狙われたりしませんか? 陛下の動きを作った原因は私にあるようなものですから」

「ないとは言い切れないが、この場合俺を王から退けようと動くだろう。下手すれば、息子達が担がれるかもしれないが、そこは信じるしかあるまい」

「では、手っ取り早いのは、王族の暗殺ですか?」

「暗殺に拘らなくても良いだろう。単純に俺と王位を継承出来る者達を殺し、貴族主義を新たなる王にする事が出来れば、再び返り咲く事が出来る」

「そんな簡単にいきますか?」

「そのために殺す方は全力で来るだろうな。そこでの成否が自分達の今後に関係する訳だからな」


 セレーネとガンドルフが物騒な話をしていると、突如大きな爆発音と揺れが生じた。セレーネは、横でミュゼルが揺れているのを見て、即座にミュゼルの身体を支える。


「カノン!!」


 セレーネは従者の控え室に待機しているカノンに呼び掛ける。それと同時に応接室の扉が勢いよく開き、セレーネの見知らぬ人が入り込んできた。王城関係者の可能性も残っているが、黒ずくめの服装である事からセレーネはその可能性を排除した。

 セレーネは、ミュゼルを抱き寄せつつガンドルフの前に結果を張る。


「おいの……ち……?」


 黒ずくめの男がナイフを取り出したのと同時に、黒ずくめの男を覆うように影が生じた。それは近くにある窓から伸びている影だ。違和感を覚えて言葉を途切れさせながら窓を見た黒ずくめの男は、目を大きく見開いた。

 直後割れる窓ガラス。そこから勢いよく入って来た人影は、そのまま黒ずくめの男の首に手を突き立てた。喉を手が貫通した事で、黒ずくめの男は絶命した。


「お嬢様! ご無事ですか!?」

「うん。状況は?」


 ハンカチで血を拭いながら駆け寄るカノンに、セレーネは現状を聞く。今のこの状況は自分よりもカノンの方が理解していると考えられるからだ。


「王城の各所にて爆発が生じ、侵入者が現れました。同時に一部貴族が蜂起。王城を乗っ取るために動いているようです」

「分かった。陛下。ミュゼルと一緒にレッドグラスに避難してください」

「レッドグラスだと? ああ、セレーネの転移か」


 ここからレッドグラスまで行くには魔動列車に乗る必要がある。そのため避難しようにも王城を抜ける必要があると考えたガンドルフは、セレーネの顔を見て、セレーネだけが使える【空間転移】の存在を思い出した。


「はい。王族の全員が標的になっていると考えられます。私とカノンで王族の方々の避難を進めますので、ミュゼルと一緒に先に避難を。全てが終わり次第、お迎えに参ります」

「…………分かった。これを持っていけ。俺が現状の全権を渡した証拠だ」


 そう言って、ガンドルフは自分の人差し指の指輪をセレーネに渡す。


「ありがとうございます」

「セ、セレーネちゃん……」


 突如起こった緊急事態に、ミュゼルは震えていた。このような状況に遭遇したことのないミュゼルは、恐怖などで頭が混乱していた。


「大丈夫。ミュゼルは、先に安全な場所にいて。さすがに、ここに陛下がいると知っていて、レッドグラスに兵を向けるって事はないと思うから」

「う、うん……」


 セレーネがミュゼルを抱きしめる。それだけで安心するという事はないが、少しだけ恐怖が和らいでいた。そんなミュゼルをガンドルフの傍に移動させたセレーネは、【空間転移】を使ってレッドグラスに飛ぶ。

 着地したのは、レッドグラスのクリムソンの別邸だ。そして、そこでは部屋を掃除していたマリアの母サマンサの姿があった。


「サマンサ」

「セレーネ様……国王陛下!?」


 サマンサは即座に膝を突く。


「そういうのは後で良いから。一旦陛下達の避難先にさせて。王城が攻撃されてるの。詳しくは陛下が説明してくれるから。陛下。失礼します」

「ああ。すまない」


 そのガンドルフの言葉を聞いたセレーネは、即座に【空間転移】で王城の応接室に戻った。そして、すぐにドレスを脱ぐ。


「動きやすい服」


 【空間倉庫】を開いてセレーネがそう言うと、ゴーレム一号が一通りの服を持ってくる。それをカノンにも手伝って貰いながら素早く着替えていき、ドレスを投げ込む。本来であれば、カノンの説教が始まるが、現状では仕方のない事だった。


「場所は?」

「把握しております。王城の警備隊が抵抗してくださっているため、被害はありません。ですが、それもいつまで持つか分かりません」

「外から行く」

「はい」


 王城を襲う緊急事態。セレーネはミュゼルの家族を守るために動く。国のためよりも、そちらの方がセレーネの動く理由としては当てはまっていた。

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