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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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フェリシアと談笑しながら装置作り

 休日である翌日。爵位の授与の事は一旦忘れたセレーネは、屋敷で掃除スライムの装置を作っていた。ゴーレムの方は研究室の予算で作るために材料を発注している最中である。


「それにしてもセレーネが個人的に爵位を貰うとはね。いつかはと思っていたけれど、ここまで早いとは思わなかったわ」


 同じく休日になっているフェリシアは、セレーネから話を聞いて驚きつつも納得していた。セレーネが築き上げていった実績は、それほどのものだと認識しているからだ。


「面倒くさい。だって、これから貴族として色々とやんないといけないんでしょ?」

「名誉貴族の形なら、そこまで大変じゃないと思うわよ。貴族と同じように扱われるだけで、貴族としてのあれこれには強制的に参加という事はないはずね」

「そうなの?」


 名誉貴族に関して、あまり知らないセレーネはフェリシアの言葉を聞いて、作業を止めて顔を上げた。


「ええ。私の記憶が正しければね。本当に名誉という形が強いものだったはずよ。多分、セレーネが真祖だから名誉の形にしたのかもしれないわね。真祖のセレーネは寿命では死なないから、永遠に家を続かせる事も出来るもの。引き継ぎもないから、面倒な手続きもない。普通なら名誉貴族は、亡くなれば枠が空くけれど、セレーネにはそれもない。つまり、通常の爵位と同じように長く存続出来る上で、通常の爵位を持つ貴族達とは違って夜会とかの参加義務とかがない。一応、参加しないといけないのもあるだろうけど、通常の爵位よりも楽なはずね」

「へぇ~」


 セレーネは、自分が思っていたよりも楽な状態になっている事を知って、少しいだけ安堵する。


「セレーネが貴族の義務とかそういうものが嫌いだから、陛下も最大限考慮して下さったのかもしれないわね」

「そっか。じゃあ、陛下には感謝しないと。夜会には出たくないけど。そういう参加義務がるものって事前通達があるはずだよね?」

「そうね。さすがにそこら辺はちゃんとしているはずよ。最悪の場合ラングリド様かお父様に訊けば良いわ」

「なるほど」

「というか、本当に貴族について知らないのね。一応、カノンさんから習っているでしょう?」

「詳しい事は習ってないよ。カノンも貴族制度に詳しいわけじゃないから。元々庶民だし」

「ああ、そっか。庶民だとそこまで詳しく知っている訳ないものね」

「でも、この名誉貴族ってさ、フェリシアにも効果あるの?」


 セレーネが少し気になったのは、フェリシアと結婚した時の話だった。自分が名誉貴族になっているという事は、こちらの家に入るフェリシアも名誉貴族の一員という事になるのかという心配があるのだ。


「なるわよ。基本的に配偶者はそうなるわ。ここに子供が出来たとしても、子供に引き継げないというだけね。ただ結局のところ夫人という立場だから完全に同じとはならないわね。貴族としての名前を名乗れるだけと考えるのが一番ね。手続きである程度の権力を貰えたりはするけれど、基本的には要らないわ」

「そっか。お姉様とかは?」

「眷属ではあるけれど、家に入る訳では無いから私と同じではないわね」

「眷属は家に入れられない?」

「そうね」

「ふ~ん……まぁ、フェリシアがちゃんと名乗れるなら良いか」


 セレーネはそう言って、作業に戻る。その作業をフェリシアは覗いていた。


「本当に細かい作業ばかりね」

「最近は魔術道具ばかりだから、大分慣れてきたかな。最近はミュゼルの研究を手伝ってるしね」

「ああ、何かやっているってマリアさんから聞いたわね」

「マリアから? ああ、カノン経由か。写し絵機って言ってね……ちょっと待って。ミュゼルの写し絵取って」


 セレーネは【空間倉庫】を開いて、中に向かってそう呼び掛ける。すると、ゴーレム一号がミュゼルを撮影した写し絵を持ってセレーネに手渡す。


「本当にカノンさんが二人いるようなものね」

「耳も付けようか?」

「尻尾も必要ね。まぁ、それは置いておいて。これが写し絵?」

「うん。ミュゼルでしょ?」

「そうね。本当にここにいるみたいだわ。絵の感じじゃないわね」

「まぁ、そうだね。転写方法は魔術だし、絵って感じはしないかも。でも、ちゃんと風景を切り取るって点では上出来でしょ?」

「そうね。これだと昔の姿を残せるから思い出作りにも良さそうね」

「カノンは、昔の私を記録したかったって。後、人の裸を記録するような犯罪者が出て来るかもってさ」

「確かにそうね。記録に残せるって事はそういう風な使い方も出来るって事だもの。ある程度規制が必要になりそうだわ」


 セレーネの話を聞いて、フェリシアも同様に規制が必要だという事に気付いた。フェリシアの中にも、セレーネに対する邪な気持ちがあったというのもある。


「作り方を教えてもらって、私も作ろうかしら」

「ん? あれくらいならすぐ作れるよ。作ろうか?」

「セレーネを記録しまくるわよ?」

「えぇ~……私好きすぎじゃない?」

「当たり前じゃない。そうじゃなきゃ、婚約なんてしていないわよ」


 笑いながらそう言うフェリシアに、セレーネは少しだけ頬を赤くしていた。真っ直ぐなフェリシアの愛を受けて、少し照れているのだ。

 そんなセレーネの頭をフェリシアが撫でる。セレーネが可愛いからだ。


「でも、取り敢えず私で作るわ。最近は属性魔術の研究ばかりで、こういう事はやってなかったから」

「そういえば氷魔術の方に進展はあったの?」

「そうね。氷魔術で雷を出せるようになってきたわ」

「何それ?」


 セレーネは自分の知らない情報に目を輝かせる。照れていた顔は一瞬にして好奇心でいっぱいになっていた。


「普通の雷の原理を再現するのよ。氷魔術だけじゃなくて、風魔術を使うと早く作れるわね」

「細かい氷の摩擦で静電気を溜め込むって事ね。雷の制御は?」

「出来ないわ。地上に落ちるだけね。だから、空に作る必要があるって点ではあまり使い道はないわ。でも、ここから何かしらに繋がるかもしれないから、しっかりと調べないといけないのよ」

「分かる!」

「セレーネは新しいものが好きだものね。時間魔術の研究は進んでいるのかしら?」

「あれはあまり進めてない。危険過ぎるから。魔術道具で必要になった時だけかな」

「そう。まぁ、仕方ないわね」


 セレーネはフェリシアと一緒に楽しみながらスライム生産装置を作っていった。

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