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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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新しい研究とお手伝い

 セレーネは、軽く考えた装置の概要をナタリアに提出する。


「魔力結晶を動力にして、【思考演算】で装置全体の制御。魔力を通して攪拌棒や錬金釜を起動させるから、錬金術としてはある程度成り立つという事ですか。回転数などの指定魔力を込める量。素材の投入タイミング。これらは【思考演算】で制御出来ると見ているわけですね。なるほど……調整すれば汎用性を持たせる事も出来そうですね」

「うん。【思考演算】にゆとりを持たせれば簡単な錬金術だったら、色々と出来ると思う。今の考えはスライム特化だけど」

「そうですね。複雑な錬金術はなるべく手でやる方が良いでしょうから、それで良いと思います。この魔術陣の転写が肝ですね。複雑な魔術陣の転写になればなる程難しく……あっ、そういえば、魔術陣転写機を設計したのはセレーネ様とミュゼル様でしたね。その技術をお使いになるのですね」

「うん。ちょっと改良するけどね。転写先が錬金釜だから。どちらかというと魔術陣投入機って感じかな。これ専用の道具になるけど。これも予算出るかな?」

「そうですね。総合研究室に与えられている予算でどうにかしましょう。まだ発足して一年なので、まだまだ予算は少ないですが、このくらいの研究が出来るくらいはあります」


 ナタリアとセレーネの実績により、来年度の予算はかなり大きくなる。今年はまだ実績のない中では、割と多く貰えている方ではある。他にも個別で予算を引き出させるという方法があるが、それには少し時間が掛かる。スライムとゴーレムの予算もこちらの個別予算を引き出して得ていた。

 ただし、この個別予算はある程度上限や条件があるので、何でもかんでもとはいかない。一年経って立ち位置が決められた現在では、そう簡単には引き出せない。

 なので、ある程度はあてがわれた予算でやりくりしていく事になる。


「ナタリアの研究は大丈夫なの?」

「私は現状理論研究ですので、そこまでお金は必要ありません。セレーネ様の方が必要ですので、そちらを優先しています」

「本当に?」


 セレーネは自分の実験を優先してくれているのではないかと考えて確認する。そのセレーネにナタリアは優しく微笑み掛ける。


「はい」

「じゃあ、使うね。発注とかは私がやるね。ちゃんと出来るようになりたいから」

「分かりました。それでしたら、ユリーナから教わりながらお願いします。搬入などの仕事も兼任していますので」

「うん。じゃあ、材料が集まったら始めるね」

「はい。定期的に報告をお願いします」

「うん」


 セレーネは、ナタリアの部屋を後にする。


「このままお嬢様の研究室に戻りましょう」

「え? でもユリーナに教わらないと」

「ユリーナがこちらに上がってきていますので」


 セレーネ達の話を聞いていたユリーナは、セレーネに発注方法を教えるためにセレーネの研究室に移動してきていた。その音をカノンも聞いていたため、入れ違いにならないように待機するように言ったのだ。

 セレーネ達とユリーナはほぼ同時に研究室に着いて、発注方法を確認していった。


「こんなカタログがあるんだね」

「完成された部品を注文する事もありますので。セレーネ様の場合、ご自身で成形されますので、こちらの未加工素材の欄から必要数を注文してください」

「じゃあ、このくらいかな」

「もう少し買っても良いと思いますよ」


 セレーネが書いた個数を見たユリーナがアドバイスをしていく。


「そうなの?」

「はい。ナタリアから予算は聞いていますので。今回の試作は苦戦しそうですので、少し多めに買っておいた方が良いと思います」

「じゃあ、このくらい?」

「はい。良いと思います。では、こちらで発注しておきます。三日後に届くと思いますので、それまではお待ちください」

「うん」


 発注書を渡されたユリーナは、それを持って守衛室に戻っていった。そこからはユリーナの仕事となる。

 ユリーナを見送ったセレーネは、ひとまず材料が集まるまでの間、装置の設計を進めていく事にした。

 その翌日。セレーネの元にミュゼルがやって来ていた。遊びに来た訳では無く、アカデミー生として研究の一環でセレーネに協力を求めに来ていた。


「写し絵機?」

「う、うん。ま、魔術陣を転写するみたいに、見えている風景を紙に写すの。絵みたいに写すから写し絵機。色々な記録に使えると思って……無理かな……?」

「う~ん……どういう風に風景を転写するかだよね……早いのが鏡に映したものを転写する方法かな。それなら魔術的に転写出来ると思う。鏡に映ったものっていう条件指定を使えるから」

「な、なるほど……お、大きくなりそう?」


 風景なども撮れるようにしたいと考えているミュゼルは、大きくなるのはあまり歓迎しない。出来ることなら、持ち運びが出来るようにしたいと考えていた。

 ミュゼルの言葉からセレーネは、ミュゼルが考えていた事を見抜いたセレーネは小型のものを考え始める。


「う~ん……機構を魔術で組み立ててれば、小型化出来ると思う。そもそも科学でどう出来るか分からないから、魔術的なものしか出来ないけど。私に相談したから、そういうので良いんだよね?」

「う、うん」

「面白そうだし、手伝ってあげるよ。ナタリアに許可貰ってくるね」

「それは私が話してきましょう。お嬢様はミュゼル様とお話をお願いします。色々と詰める必要があるでしょうから」

「分かった。お願いね」


 セレーネはナタリアへの許可取りをカノンに任せて、ミュゼルと内容を詰めていく。


「鏡じゃなくても何かしら映すようなものを作れれば良いと思う。鏡だと中で割れたら困るし」

「か、鏡に転写したら、鏡は鏡じゃなくなる……?」

「ううん。あくまで転写だから、鏡は鏡だよ。でも、鏡が割れていたら風景がしっかりと映せないから。この部分の取り替えを出来るようにするってなってもコストがねぇ。出来る事なら、ここら辺も改良したいね。最悪、【記録媒体】で風景を記録するとかが良いかもね。その場合の機構も考えないとだけど。【思考演算】で何か出来ないか考えてみるか……」

「ボタンを押すと記録出来る方が良いと思うの。お、押してからすぐに記録出来たら便利だと思う。セ、セレーネちゃんも物の反応とか記録したい時、すぐに写せると良いでしょう?」

「確かに。記録用って考えたら、写すまでの速度は早ければ早い程良さそうだね。そうなると、鏡はやめるかな。少しでもブレたら記録に支障が出るし。他の方法を探そうか。風景を取り入れる……風景……」

「見る……映す……鏡を魔術で再現して筒を使って映す風景を限定するとか……?」

「ふ~ん……良いと思う。じゃあ、どんどんまとめていこう」

「う、うん!」


 セレーネは自分の意見もしっかりと出しつつも、ミュゼルの意見を尊重していき、ミュゼル主導で進められるようにしていく。ミュゼルは、セレーネから肯定的な意見を貰える度に嬉しそうに笑っていた。

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