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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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スライム販売開始

 二日後。セレーネはカノンを連れて、スライム販売店の様子を見に来ていた。スライムを販売しているという事もあり、ちらほら売れていても完売はないだろうと考えていたセレーネは、お昼までに閉店と完売の看板が掛けられているのを見て少し驚いていた。


「もう完売してる」

「思ったよりも需要はあったようですね。危険性の話も出回っているはずですが、それ以上に興味などが勝ったのかもしれません。中に入って確認しましょう」

「そうだね」


 スライム販売店の前に着くと、セレーネは店の看板を見た。そこには月の桜桃と書かれている。セレーネが吸血鬼族であり、吸血鬼族は真祖と眷属以外太陽の下では活動しないため月が近しい存在という事で月。桜桃は、リーナが好きな果物から取った名前だ。

 最初はセレーネ様の桜桃という名前にしようとしていたが、セレーネ自身が却下したため、かなり遠回しにして名付けていた。


「う~ん……何か果物屋っぽいよね?」

「良いと思いますよ。これで果物屋ではない方が印象に残ります」

「印象には残るけど……まぁ良いか」


 セレーネはそう言って、店の中に入る。


「あっ、すみません。もう売り……って、セレーネ様。カノンさんも」

「様子を見に来たよ。順調みたいだね」

「はい。一気に売り切れです。色々と情報を流していた事もあると思いますが、予想外の売れ行きです。特に女性から人気があります。保湿効果と冷え対策になるスライムという事で人気のようです。使い方も同封していますので、大きな問題になる事があれば、あちらの責任になるかと」

「不良品でもない限りね」

「はい。二種類を一匹ずつ購入される客が多かったです。どちらも欲しいのでしょう。予約出来ないかという話も頂きましたが、現状は難しいという風に伝えておきました。お嬢様一人での製造になりますから」

「うん。ありがとう」


 セレーネは他の従業員が軽く纏めていた報告書を受け取って目を通していった。売上に関する報告と客からの要望が書き留められている。


「まぁ、その感じなら在庫補充を求める声が多くなるよね。う~ん……量産を魔術道具で出来るようになれば……工場みたいな感じで……うん。ちょっと考えてみる。でも、現状では無理だから、在庫が入り次第開店予定にしておいて。今日は持って来たから、倉庫に並べよう」

「はい。ありがとうございます」


 リーナ達はセレーネの【空間倉庫】からスライム達を倉庫に並べていった。そこまで大量生産はしていないので、それでも在庫に不安は残る。


「そこそこ高級品なんだけどねぇ」

「それだけ魅力満点という事です! セレーネ様と同じですね!」

「私は値段がないけどね。この売上から素材費を出して……皆の給料と土地代も考えると……うん。大丈夫そうだね」

「在庫以外は大丈夫だと思います」


 在庫がなければ売る事は出来ない。店としては重要な問題だが、製造出来るのがセレーネただ一人だけであるためこれは仕方のない事だった。


「在庫問題の解決が優先かな。この調子だと洗濯スライムと掃除スライムも売れそうかな。ここまで需要が高いとはね……う~ん……品数を増やすとその分素材が必要になるからなぁ。総合研究室の予算は使えないし……しばらくはこのまま二種類でやっていこう。専売権は持ってるけど、問題があったら言ってね」

「はい。それと一つ提案なのですが、掃除スライムを店内に配属するのはどうでしょうか? 後日品揃えに追加予定の見本として出しておけば、需要の見極めに使えるのではないでしょうか?」

「あ~……それは有りだね。どのくらいの人数が欲しいって言ったか報告してね」

「はい!」


 セレーネは掃除スライムを一匹預ける。店の清掃も合わせて行えるので、掃除スライムを置く事自体に、セレーネは反対しなかった。


「お店は常に綺麗じゃないとね。そこまで汚れる事もないと思うけど。それじゃあ、定期的に素材を貰っていくからね」

「はい」


 素材費は月の桜桃の運営費から引かれる。それを抜いても利益になるくらいの値段になっている。その事もありスライム自体が高額に設定されている。それでも売り切れになるくらいには、興味を持たれているのだ。


「大量生産の方法をちゃんと考えないとね。思ったよりも需要が高いみたいだから」

「はい。それまでは細々と繋いでおきます」

「うん。よろしくね」


 セレーネはリーナ達に手を振って月の桜桃を後にすると、そのまま総合研究室の研究棟に来た。そして、ナタリアの部屋まで向かう。


「セレーネ様。店の方は順調ですか?」

「売り切れだった」

「売り切れですか。好調ではありますが、その分在庫補充が大変ですね。既に研究からは離れていますので、こちらから予算を出す事は難しいですね。やろうと思えば、投資も出来なくはないですが」

「お金は売上があるから大丈夫だよ。問題は私しか作れない事。だから、工場の生産ラインみたいな感じにしようかなって」


 セレーネがそう言うと、ナタリアは目を瞬かせていた。セレーネの言っている事は理解出来るが、それを可能にする方法が思い付かなかった。


「既に構想はあるのですか?」

「う~ん……ちょっとだけかな。もう少し色々と考えたいところだけどね。錬金術を人の手以外で行うのは、割と難しいと思うから。でも、私の考えが正しければある程度は出来ると思う。ちゃんと纏めたら提出するね」

「はい。お願いします。それが可能になるのならば、錬金術を使った産業に革命が起こりますね」

「そうだね。上手くいくならだけど」

「では、その方向で」


 報告を終えたセレーネは、自分の研究室に戻って、スライムの生産をセレーネの手では無く自動で行われるようにする。これによりセレーネが時間を掛けて作らなくても、安定供給が可能となる。

 セレーネは頭の中にある小さな構想を形にして書き込んでいく。かなり曖昧なものになるが、それでもある程度の形は出来ていた。


「カノン、これどう思う?」

「そうですね……動力に魔力結晶を使って、攪拌棒を回すというのは分かりますが、回す速度や回数など細かく調整出来るようにしなくては、安定して錬成は出来ないと思います」

「そうだよね……そこら辺は【思考演算】を調整して学習させていく形にするかな。後は、これって専用に作るしかないよね? 汎用性がない」

「投入出来る素材の数を増やせれば色々な物に使えるでしょう。後の問題は転写ですね」

「うん。これは、ちゃんと考えないと上手く出来ないから、もう少し詰めるかな。ちょっと頑張ってみよう」


 セレーネはスライムの大量生産を手軽に行えるようになる装置を作るために設計を進めていった。カノンは、時折お茶を出してセレーネの頭がしっかりと冴えるようにサポートしていった。

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