スライム市販の計画
それから二ヶ月後。セレーネは中継基地の建設で様々な場所に向かって魔術を使う作業をしていった。いつもは魔動列車を使って移動するが、セレーネは【空間転移】で移動するために移動時間は存在しなかった
この二ヶ月の間に大型の洗濯スライムを錬成して、屋敷の洗濯室に常駐させていた。おかげで、セレーネ達の下着だけでなく、住み込みメイド達の下着なども優しく洗う事が出来ていた。
更に温調スライムも多く錬成していき、メイドや執事も凍える事なく風邪なども引かずに生活する事が出来ていた。その分、多くの情報がやって来るのでセレーネも改良点などを調べるのに役立っていた。それらとゴーレムに関する報告も合わせてナタリアに提出しに来ていた。
「なるほど。スライムに関して古いスライムが問題を起こしたという事はなかったのですね?」
「うん。少なくともメイド達が大切に扱ってくれてるから、大きな問題はないよ。要望として出して来ているのも、もう少し便利にして欲しいみたいな内容ばかりだし」
「スライムの感情面での問題は、接し方をしっかりとしていれば無しと。これは注意書きを出しておく事にしましょう。その義務を果たせば、責任は購入者のものとなります。ペットと似たような扱いのようになりますので」
販売時の不良品などの問題は店側や製造側の問題となるが、客の手に渡って世話の仕方の問題になれば、そこからは客の問題となって責任は世話の仕方を誤った客側の問題となる。
この四ヶ月でメイド達が世話をした結果問題がなかった以上、客側に渡って問題が起きたら世話の仕方を間違えたという事がほぼ確定する。これらは不良品ではないという事が前提となる。
「そうなんだ。まぁ、ちゃんと意思と同じものはあるから、ペットと似たような扱いは良いかもね。名前を覚える機能もあるから、自分だけのスライムに出来るし」
「機能的にも、これで問題はないと思います。サウナに出来るスライムは、サウナ屋に売り込みに行くのも良いかもしれませんね。問題はスライムの扱いが客によって変わってきそうというところですが、そこはサウナ側の注意書きでどうにかして貰うのが良いでしょう」
サウナに使う温調スライムは、素手で触れれば火傷する程の熱さになる。そこに水を掛けることでサウナとして機能している。中には水の中に温調スライムを入れて、温度を上げる事で一気に蒸すという者もいる。
屋敷で使っているサウナでは、温調スライムを専用の仕切りに入れる事で不注意で触れる可能性を減らすようにしていた。なので、セレーネの管理から離れる場所ではしっかりと注意書きをして、客の方に意識して貰う必要がある。
ナタリアはそこまで考えていた。
「なるほど。ナタリアは色々と考えてるね」
「魔術道具や魔術の売り込みは必要不可欠ですから。商品として登録する事に加えてスライムの製造を委託するかの話ですが、セレーネ様は如何されますか?」
「う~ん……そもそも制御系の魔術陣を扱えるのが私だけだから、しばらくは委託出来ないかな。多重魔術陣にして放り込んでるわけだし。ゴーレムに関しても割と精密な魔力の扱いが必要だし、職人の育成と魔術陣に関する授業の改善待ちかも」
製造方法には情報処理魔術を一緒に錬金釜に入れる必要がある。情報処理魔術を扱える人は、セレーネとナタリアだけだ。そのため製造するには情報処理魔術をしっかりと理解している人材が必要となる。そうでなければ、魔術陣の間違いなどにも気付く事が出来ないからだ。
「情報処理魔術の教科書はセレーネ様の協力の下、大分仕上がってきていますので、再来年になれば少しずつ人材が育ってくるでしょう」
「それまでは私が作る形で。でも、需要に合わせて製造はしないよ?」
「それで良いと思います。需要を調べるために、少しずつ流通させていく事にしましょう。販売時期は来年の四月。三ヶ月と少し先ですので、それまでに出来る限り改善する形でお願いします。ゴーレムに関しては、来月か再来月にルージュ公爵家の別邸に一体を納品。そこでの作業を見て、改善点を見つける形でいきます。その分の材料は既に手配済みですので、製造をお願いします」
「うん。スライムの方は予算から作るわけじゃないよね?」
「はい。研究予算では製造しません。そちらは生産用の予算を貰うので、そちらで作って貰います。そちらの話し合いは、こちらで進めるのでこちらで指示する数を錬成して下さい。そこまで多くはならないようにしますので、そういう形で良いですね?」
「うん」
感情を持つスライムが一切問題を起こさないという事が判明したため、スライムの方が少し繰り上げで流通させるべく動く事になった。ゴーレムの方は倉庫での作業を考えると、もう少し問題が起こらないのかを調べる必要があるので、予定通りユイが住んでいる別邸での試験を受ける事になる。
「じゃあ、スライムの改良を行いつつ、ゴーレムの動力の改良とか服の改良とかを考える感じ?」
「そちらの研究に関しては、その形でお願いします。中継基地での作業はこれまでと変わらず要請があり次第向かうという形で」
「は~い」
報告も終えところで、今後の予定も決まっていった。セレーネがしないといけない作業は、市販の保湿スライム、温調スライムの製造。洗濯スライムと掃除スライムに関しては、まだ様子見。ゴーレムはユイのところでの試験用に一体製造。
そうして更なる試験と需要の見極めを行いつつ、中継基地の建設を進めていく形になる。遠距離連絡用魔術道具は、識別番号を設定して、その番号に掛ける形になっているので市販を目指しているが、現状高級品となる予定だ。
スライムなどもある程度は高額となる。セレーネの使う魔術の価値が高いためにそうなっている。
ナタリアが次の会議の際に報告して売値の相談を行う事になるが、全員がその価値を知っているために、高額になる事は受け入れていた。スライムの販売による利益の三割がセレーネに入り、一割が国に入る事になる。三割になった理由は、製造にセレーネの魔術の理論が多く使われている事が大きかった。
科学研究所との協力で作っている遠距離連絡用魔術道具に関しては、中継基地の維持費などもあるので、利用費を定期的に払う事になっていた。更に本体価格も高いという事で購入する層は貴族になるだろうと予想される。
セレーネ的にはいずれ市民全体にも行き届くようにしたいと考えていたが、それは後々になる。




