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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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新たなスライム

 それから一週間後。セレーネは、総合研究室の研究棟にある実験室でスライムの感情に関する実験をしようとしていた。それは感情の表現方法に関するものだ。今日はフェリシアが一緒に来ている。

 感情の実験の他にも色々と実験をするので、その手伝いに来ていた。


「さてと、ついでだからフェリシア専用のスライムも作る?」

「特に保湿が必要なわけじゃないから良いわよ」

「今回の実験スライムは丁度良いんじゃない?」

「まぁ、居てくれると嬉しいかもしれないわね」

「じゃあ、作ろう」


 そういった約束をしたが、まずは感情面に関する実験から行う。


「でも、こんなので本当に感情が表現出来るのかしら?」

「理論上は問題ないはず。後は魔術と錬金術でゴリ押し」

「セレーネらしいわね」


 使うものは、様々な染料だった。感情に応じて色を変えるように制御の術式を組み込んだ【思考演算】を取り入れて錬金術にて錬成する。そうして出来た九番保湿スライムが出来上がった。


「うん。取り敢えずは成功なのかな」


 通常時は色が透明なので、染料が表に出て来ていない事が分かる。


「保湿機能も問題ないね。身体に問題ある?」


 私が訊くと、九番保湿スライムは身体を軽く揺らして答えてくれる。


「良かった」


 取り敢えず身体に問題がないみたいなので、身体を撫でてあげると黄色に身体の色を変えた。これは喜んでいるという感情だ。その状態で身体に手を入れる。そうして身体を引き抜くと手には保湿薬が付くけど、色は黄色ではない。


「手に色は付かないのね」

「うん。変化するのは膜だけだから。中身は保湿薬のままだよ。上手く出来るか心配だったけど、肝心な部分が上手く出来たから良かったよ。後は掃除スライムを作るかな。九番はフェリシアと一緒に居て」


 そう言って机に九番保湿スライムを置くと、フェリシアの方に転がっていく。九番保湿スライムをフェリシアが抱き上げると、九番保湿スライムが緑色に変わる。


「緑はどんな感情なのかしら?」

「楽しいだね」

「抱き上げられて楽しいのね。何が楽しいのかしら」

「さぁ?」


 セレーネは首を傾げながら、新しい掃除スライムを作り出す。掃除スライムは掃除する関係上膜はなく、核は平べったい形をしている。その掃除スライムをセレーネは床に置く。


「それじゃあ、三番掃除スライムは、ここら辺を転がって埃を食べて」


 セレーネがそう言うと、三番掃除スライムは緑色に変わりながら実験室を転がっていく。


「色が床に付く事はなさそうだね。布は大丈夫かな」


 カノンがわざと置いたタオルの上を緑色のまま転がっていくが、タオルにも色移りする事はなかった。


「よし。成功! 今のところ二つの感情しか出してないけど」

「まぁ、そうね。ところで番号呼びなら号の方が呼びやすいと思うのだけど」

「う~ん……じゃあ、掃除スライム三号って感じか。そっちは保湿九号ね」

「そうね」


 セレーネ達がそんな話をしていると、保湿九号が黄色くなって揺れた。


「そっちの方が嬉しいか……全く……どうせ名付けのセンスはないよ~だ」


 そう言いながらセレーネが保湿九号をぽんぽんと叩くと、保湿九号は緑色になる。セレーネに構って貰えている状況が楽しいらしい。


「う~ん……感情があるのは分かったから、次の実験にいこうか」

「そうね。氷スライムだったわね」

「うん。ひんやりと冷気を出すスライムを作ろうと思ってね。ただ膜は凍らせたくない感じかな」

「冷気だけよね」

「うん。これが成功したら温かいスライムも作ってみるつもり。成功しやすいだろうし」


 セレーネは凍るスライムではなく、冷えるスライムを作るつもりなので、そこから応用すれば、温かいスライムも作れるだろうと考えていた。


「さてと、じゃあ、まずは不凍液の錬金だね」

「錬金術でやるのよね?」

「うん。材料は基礎魔力水と凍結薬。調合に苦労したんだよね。これはフェリシアの方が得意だったから本当に助かったよ」

「何でかしらね。氷魔術が得意だからかしらね」

「そうなのかな? まぁ、そこは答えも出ないし、このまま錬成していこう」


 セレーネは基礎魔力水と凍結薬を錬金釜に入れて錬成していく。そのまま錬金を終えると、不凍液が完成した。不凍液である事の確認のために、フェリシアに不凍液の周囲の温度を氷点下まで下げてもらう。安定して温度を下げられるフェリシアには適任だった。


「錬金術で作ったからか異常なまでに凍らないね」

「まぁ、これを求めていた訳だから良いと思うわよ。これを核に持たせて膜で覆うのよね?」

「うん。核には氷魔術で身体を冷やせるようにする。そうすれば、膜を通して冷気が漏れてくるって感じ」

「まぁ、まずはやってみる必要はあるわね」

「うん。丁度良い出力を見つけないとね」


 セレーネ達は何度も試作を続けながら冷気を上手く出せる割合と出力を探していく。不凍液を使う事から氷スライム改めて冷気スライムと呼称するようになった。膜の内側に手を入れる必要がないため、膜は突き破れない強度になっている。

 途中どこかの兵器かというくらいに冷気を出すスライムが完成してしまい、冷凍庫行になった。


「これが一番かな。全部で十匹か。まぁ、良い方かな」

「これもメイドの皆に渡すのかしら?」

「うん。皆が一番近くて報告とかもしやすいだろうから。後は温かいスライムも作ろう。核に程良い温度に加熱する機能を付ければいけるはず」

「こっちも出力が大事ね」

「うん。あまり高熱にしたら、火のないコンロと同じだしね」


 こちらの呼称は冷気スライムに対して、熱気スライムとなった。

 こちらも一匹だけ異常な高熱を持ったヤバい熱気スライムが出来上がった。熱湯ほどの温度だが、普通に触れていては火傷を負う可能性が高い。セレーネは即座に処分しようとしたが、身体の色を初めて青くして悲しんでいる事が確認されたため、処分する事が出来なかった。


「う~ん……感情を分かり易くすると、こういう時に困るよね」

「そうね。お風呂にでも置いてサウナにしたらどうかしら?」

「あぁ……確かに熱気状態になった時に水を掛けたら丁度良いかもね。熱気七号もそれで良い」


 セレーネが熱気七号に訊くと、熱気七号は黄色くなって揺れる。熱気さえ出していなければ持ち上げられるので、取り敢えず【空間倉庫】にしまう事になった。


「後は様子見かな。多分熱気スライムの方が人気だろうけど」

「大分冷えてきたものね。まぁ、ちゃんとレポートを書いてくれるわよ」

「そこはあまり心配してないよ。皆しっかり者だもん」


 セレーネとフェリシアは、互いに顔を見合わせて笑い合っていた。

 新しく作ったスライムもメイド達に渡していき、熱気七号はサウナ用のスライムとなった。ここからは他のスライムと同じく実地試験で調べていくだけだ。

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