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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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大臣達との会議

 セレーネが会議室を出た後も、ガンドルフ達は会議を続けていた。

 会議のメンバーは、リンド・ルージュ。ルージュ公爵家の当主。リンドは、現在魔物からの防衛大臣を務めている。騎士団の実権を握っている。


 黄色い髪と黄色の瞳をした男性のリーリガル・クロムイエロー。クロムイエロー公爵家の当主。リーリガルは、経済産業大臣を務めている。現在ラングリドと共に仕事をしており、空間転移装置による輸送業はラングリドに一任している。


 青い髪と青い瞳をした男性のギンガナ・シアン。シアン公爵家の当主。国外との交渉などを任される外交大臣を務めている。仕事柄セレーネを知る機会は少ないが、ウルトラマリン家と親戚であるために、フェリシアの婚約者としては知っていた。


 緑の髪と緑の瞳をした女性のヒルデブランド・グリーン。グリーン公爵家の当主。魔術の開発や科学開発の管理を任される魔術科学大臣を務めている。学園とアカデミーの管理も兼任している。魔術研究所全体の管理と科学研究所全体の管理を任されている。総合研究室も例外ではないので、セレーネの研究も報告されている。


 紫色の髪と紫の瞳をした女性のチルチナ・パープル。パープル侯爵家の当主。魔物に関する研究を管理する魔物対策大臣を務めている。防衛大臣をしているルージュ公爵家と連携をとっている。魔物研究所の管理をしており、セレーネの研究には興味を抱いていた。


 橙色の髪と橙色の瞳をした男性のビルギントン・キャロット。キャロット侯爵家の当主。法を司る法務大臣を務めている。基本的に法律が変わるという事はないが、新しい法を作る必要が出て来ると動く。特にセレーネが作っているものに関する規制を整えるために動く事になっていた。ゴーレムやスライムに関してもある程度の規制も考えなくてはいけないと考えている。


 黒髪と黒い瞳をした男性のウィリアム・ブラック。ブラック公爵家の当主。魔王が現れた際に動く対魔王大臣を務めている。定期的に現れる訳でもない魔王に即座に対応するため、部隊を用意して日々精進させている他、平時はルージュ公爵家と共にダンジョンの管理も行っている。


 白髪と白い瞳をした女性のヒナタ・スノーホワイト。ホワイト公爵家の当主。魔術道具開発や錬金術、魔術薬の管理を任される調合開発大臣を務めている。セレーネが作る魔術道具に興味があり、機会があれば近づこうと考えていたが、機会はなかった。


 そして、この国の王であるガンドルフだ。議題は、先程のゴーレムに関するものだ。


「さて、ゴーレムに関してだが、セレーネからの資料にある通り戦闘用には作られていない。加えて、セレーネ自身も戦闘用に作る気はないそうだ。純粋な手伝い用の存在として配備する事になる。リンドも異論はないな?」

「本音を言えば、盾役として欲しいところではあります。形としては魔物のゴーレムと同じようなものが好ましいですが」

「私もリンド殿に賛成です」


 リンドの意見に賛同したのは、ウィリアムだった。戦闘に関する仕事をしているので、出来る限り兵への損害を減らしたいという風に考えているのだ。


「ですが、作られているのは魔物です。彼女の懸念通り感情が出ないという保障もない。こちらに歯向かってくる事もあり得るとすれば、逆に邪魔になるのでは?」


 反論したのは、チルチナだった。魔物研究所の管理を任されているため、魔物に関する報告書や論文などには多く目を通している。そこから魔物の危険性を知っているが故の懸念を持っていた。


「それに盾役というなら、人がやった方が確実だと思うが。いざという時に動かないという事があれば、それこそ危ないだろう」


 リーリガルの懸念は、ゴーレムの反乱などではなく、そもそもの故障だった。いざ戦闘になった時に動かないとなれば、それこそ兵達の動きが悪くなるのではと考えられるからだ。


「安全に戦闘用に変更出来る保障がない以上、ゴーレムの戦闘利用は規制する。良いな」

『はっ!』


 飛び交った意見を総括して考えたガンドルフがそう纏めると、全員が異論無しという返事をした。これで戦闘にも利用出来るという方向に持って行ければ、リンドとしては良かったのだが、これだけ反対意見や懸念点を突きつけられれば納得せざるを得ない。それはウィリアムも同じだった。


「これらの規制法はビルギントンに任せる」

「はっ!」

「スライムに関しては、もう少し様子見だな。ゴーレムと違い既に感情が出ている。下手をすれば、利用者の命を脅かす可能性がある。セレーネの報告待ちとする。取り敢えずは以上だ。それで、お前達はセレーネを見てどう思った?」


 これが本題だった。ゴーレムに関する説明も求めていたが、ガンドルフとしては大臣達にセレーネを見せておくというのが一番に考えていた事だったのだ。


「物怖じしないというのは、良いところかと。堂々と説明している姿は印象が良くなります。社交界などに顔を出していないので、ミュゼル殿下のように人見知りをする性格なのかと考えておりました」


 ギンガナは率直な意見を言う。セレーネに対して悪い印象は一つも抱いていないが、それが故にこれまで表に出てこなかった事が不思議に感じていた。


「セレーネの事情は知っているだろう。先祖返りの真祖だ。下手をすれば家を乗っ取るとも考えられる。ラングリドはそれを予期してセレーネを表には出さなかったそうだ」

「確かに永劫を生きる存在ともなれば、永遠に裏から実権を握る事も可能となりますね。当人にそのような意志はなさそうでしたが」


 ヒルデブランドは、セレーネの資料を一通り読みながらそう言う。これには全員同意見だった。セレーネからは研究者としての矜持などを感じさせられたが、強い野心などは一つも見えなかった。そして、それを隠しているという風にも考えにくい印象を与えられていたため、誰もセレーネが家の乗っ取りなどを考えていないと考えていた。


「魔動列車開発や空間転移装置の開発など、魔術道具職人としての一面も強いですが、魔術の開発者としても優秀な方です。永遠に時間があれば、野心的な行動よりも研究を優先しそうな気がします」

「分かります。こちらのゴーレムもそうですが、魔動列車に使われる魔術道具や空間転移装置も職人としての矜持を感じ取れます。確かウルトラマリン家のご息女と婚約されているのでしたね」

「ああ。フェリシアが婚約者になっている。十八になった時に結婚するそうだ。今から許嫁を付ける事は不可能だと思うぞ」


 ヒナタの確認に、ガンドルフが答える。ヒナタの口振りでは自分の息子を婿に出して縁を作ろうとしているようにしか聞こえなかったからだ。それに対して、ヒナタは少し考える。


「では、娘を妾として送りましょうか」

「やめておけ。嫌厭されるぞ」

「あら、残念です」


 ヒナタは冗談のようにそう言っていたが、ガンドルフには本気にしか聞こえていなかった。全員がセレーネに対して良い印象を持った事を確認したところで、会議は終了した。

 この間、セレーネはミュゼルとお茶をしながら話をしていたが、時折くしゃみをしていた。カノンが即座に対応していたが、風邪を引かないセレーネは終始困惑していた。

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