部品完成
二日後。両手足を作ったセレーネは、それぞれの駆動試験を行う。
「良し。一応、持てなくはないね」
魔術で繋いでいる関節の方でも荷物を持てる事を確認していた。関節が直接繋がっていなくても問題はなかった。
「【座標指定】で固定してるからかな。ちゃんと問題なく持てるね」
「はい。後は身体を作った際にどうなるのかが問題になります」
「だね。私が持ててもあまり意味ないし。今日は胴体の組み立てをしちゃおう。胴体は、動力を持たせるから、色々と複雑なんだよね」
セレーネはそう言いながら、設計図を見る。ジェニファーが描いてくれた設計図を元に部品を成形していく。女性型と言っても胸等を作るという事はしない。女性らしさを表現するような形状は持たせない。
ナタリアなどとの話し合いでそういう事はしないという風に決まったからだ。なので、胴体の動力などを守るための外殻は平坦なものになる。
「肩も魔術で浮かした方が良いかな?」
「そうですね……それでも良いかもしれませんね。そこはお嬢様のお考え次第というところでしょう」
「う~ん……でも、そうなると二の腕っていらなくない?」
「人の動きを模倣させるわけですので、ある程度は人と同じような形をしている方が都合が良いと思います」
「それもそっか。後は、実地試験をして不具合とかがあれば変える形にしよう。えっと、そうなると胴体を三種類作って、腕と脚も増やそう。作るのは、完全に魔術型、肩と腿の接合型、完全な機械型かな。はぁ……予定よりも長く泊まりそうだね」
「仕方ないかと」
これにはカノンも受け入れていた。セレーネが早く作りたいと思っている事を知っており、総合研究室の仕事として研究をしている以上、この場で研究をしなくてはいけない。これらの事情から、セレーネのお泊まりを許可していた。
セレーネは、三日掛けて胴体三種類ともう一種類の手足を作る。次に作るのは、動力と制御系となる頭だった。
「順調ですか?」
外での仕事があり、少し研究室を空けている事が多かったナタリアが、様子を見に来た。
「うん。ナタリア。もう大丈夫なの?」
「はい。予算の話し合いや、今後の研究予定なども話し終えました。設立初年度という事で諸々決める事が多かったので。ようやく提出書類諸々も終えられました」
「ふ~ん……そういうものなの?」
「総合研究室ですと何でも研究出来るし、他の研究室との折り合いとかも付けないといけません」
「そっか。じゃあ、ゴーレムとかスライムとかって大丈夫?」
「そもそも魔物を作り出そうとする人がいないので、専門の研究室もありませんから、セレーネ様が主導で行う事になっています。魔術道具である遠距離連絡用魔術道具に関しては、そもそもセレーネ様の研究の延長線ですので、問題ありません」
「そうなんだ」
ゴーレムとスライムに関する研究は魔物研究所と協力するかという話もあったが、向こうが生態などを調べて安全に狩る方法を模索する研究所であるため、魔物を作り出そうというセレーネの研究とは合わなかった。そもそも錬金術も魔術道具作りも知識として不足しているからだ。
そのためにセレーネが主導して研究する事になっていた。
「三種類のゴーレムを作るのですか?」
「うん。タイプが違う三種類ね。これが仕様」
セレーネが渡した紙にナタリアが目を通す。
「関節で分けているのですね。なるほど。コスト的には、魔術型が良さそうですね」
「うん。でも、どれだけ重い物を持てるか分からないから。そこで決める感じ」
「【座標指定】で、ある程度問題なくなるのでは?」
「ゴーレムが持てるかは分からないから」
「なるほど。後は動力と制御系ですか。一番大変な作業ですね。一時屋敷に戻って休んでも良いと思いますよ」
「う~ん……いや! 全部やっちゃう。そうじゃないと屋敷でも作業しちゃいそうだし」
「気を付けてください。予算で購入したものを外に持ち出すのは、あまり良い行いではないので」
「は~い」
ナタリアはセレーネに微笑んでから自分の研究室に戻っていった。ナタリアを見送って、セレーネは動力の製造を始める。これは危険なので、カノンがしっかりと監視をしている。魔力を集める機構に加えて、魔力を溜め込むための大きな魔力結晶を錬金し、それを守るためのカバーを作り、更にそこにも魔力を溜め込むための機構を作る。
「ふぅ……ここの魔力線はこんな感じで大丈夫かな。こんな大きな魔力結晶を扱ったの初めてだから緊張したぁ……」
「後三つですね」
「うへぇ……頑張ろう。動力に関しては、改良の余地があるから、こっちは後々研究かな」
セレーネは二日掛けて三つの動力を作る。動力はそのまま保存して、続いて制御系を製造する。頭には、様々な分析をするための目と周辺空間を把握するために【空間探知】を付けている。そして【音声分析】に加えて、思考した内容を発声するための機構も取り付けた。これは遠距離連絡用魔術道具の研究が活きている。
「う~ん……顔の造型が気に食わない」
「無機質なものになるのは仕方ない事だと思いますが?」
「う~ん……美人とか可愛いとかじゃなくて、普通に顔として嫌だ。怖いもん」
「なるほど。怖いですか……そうなると、目を精巧に作らない方が良いのでは?」
「真っ白な顔と同系色にすれば目を目として認識しないで済む?」
「恐らくは」
「うん。それは良いかも」
セレーネは即座に調整して目を真っ白な状態で作る。そうして顔に付けると、それはそれで恐怖を煽るような顔になっていた。
「これはこれで嫌じゃない?」
「他の色でも確認してみますか」
「うん」
そうして色の確認をしていった結果、黄色がマシだという事になった。
「瞳の再現とかは要らないかな?」
「使用目的から考えれば要らないかと」
「だよね。現実に寄せる必要はないもんね。これでよし。魔力を取り込むための機構を取り付けた髪を被せれば完成だね」
セレーネは金属で加工した髪を被せて頭を完成させる。
「どう?」
「女性にも人にも見えますが、一目で人ではないと分かりますね」
「取り敢えず、これが基本的な形って事にしようか。でも、頭は時間掛かるなぁ……頑張る!」
「はい」
そうして、また二日掛けてゴーレムの部品を完成させていった。




