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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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その他スライムの錬成

 三日後。セレーネはナタリアの部屋にいた。話し合いが終わったので、ナタリアから報告とセレーネから個人的に研究した結果の報告を行っていた。


「予算はかなりの額を手に入れました。セレーネ様の実績のおかげですね。既にゴーレムの素材は発注していますので、明日には届くでしょう。スライムの方は自費で研究したそうですが」

「うん。これが必要な材料。今のところ三日は問題なく持ってるよ。実地試験もしてる途中。メイドの意見は、これね」

「なるほど……スライムだから持てないというのがいざという時に不便と。膜で覆うのはどうでしょうか? 一定以上の力を込めれば内側に入れる事が出来るようにすれば問題は解決すると思います」

「う~ん……その仕組みを作るのが難しそう。そこら辺は魔術で良いかな?」

「そうですね。素材の変化と条件付けでどうにか出来ると思います。魔術道具として作るよりは錬金術の方が良さそうですね。こちらで進めましょう。材料の発注もしておきます。一応、保管庫にある分でいくつかの試作は出来ると思います。膜有りの保湿スライムの試作をお願いします。力加減は力を強く込めた時にしましょう」

「うん。分かった。実験室使うね」

「はい」


 報告も終えたので、セレーネは新たな試作をするために保管庫から材料を持って実験室に来た。


「膜……膜……程良い弾力……難しいなぁ……」


 セレーネは実験をする前に理想の弾力を考えていた。触れられるようにする以上、触り心地は良くしたいというのがセレーネの考え方だった。弾力を押し退けて手を入れるという形にするのが一番分かり易いと思っていた。


「弾力の指定とその上限値を条件にして突破出来るようにする。その術式は出来るし、この魔術陣に組み込む事は出来る。程よい弾力……どうしようかな」

「お嬢様が好きな弾力にすれば良いと思います。万人に合わせる事は難しいのですから」

「好きな弾力?」

「はい」


 セレーネはそう言われて自分の好きな弾力を考える。そもそもそこまで弾力のあるものを持っている訳でも無いので、好きな弾力と言われてもすぐに思い付くものはなかった。


「う~ん……」


 セレーネは悩みながらカノンを見る。セレーネに見られたので、カノンは微笑みを向ける。だが、セレーネはカノンの顔では無く全身を見ていく。


「う~ん……あっ!」


 セレーネは椅子から降りて、カノンの胸に手を伸ばした。


「これ!」

「駄目です」


 カノンの胸を持ち上げるセレーネに、カノンは即答で却下した。せっかく見つけたすきなものを即答で却下されたので、セレーネは頬を膨らませる。


「むぅ……まぁ、カノンの胸を誰かに触られるって考えたら嫌かも。じゃあ、適度に男女区を持たせる感じにしよ」


 カノンに抱きついたセレーネは、しばらく顔を擦り付けてから試作を始める。試作で変えるのは弾力のみなので、弾力の違う保湿スライムが五匹出来上がった。


「整列」


 セレーネが指示を出すと、保湿スライム達が整列する。


「一番、二番、三番、四番、五番ね。名前を覚えておいて。カノンは、どれが好き?」


 セレーネの確認に、カノンは一番から順番に触っていく。


「私は三番ぐらいが好きですね」

「普通の弾力の保湿スライムね」


 セレーネは三番の身体を触って、そのまま中に手を突っ込む。それによって手に保湿薬が付く。三番は、身体をプルプル揺らすだけで特に問題ない。


「うん。良いね。問題は埃を取る事が出来なくなったくらいかな?」

「そもそも機能に付ける予定ではないので良いのではないでしょうか? 誤食を防ぐ事にも繋がりますし」

「なるほど。それもそっか。掃除なら掃除戦用のスライムを錬成するのが良いよね。汚れを食べるのが欲しいって言ってたし。そういう感じのスライムも作っていこうか。皆は私が呼ぶまで実験室をコロコロしてて」


 私がそう言うと、保湿スライム達が実験室内を転がっていく。膜の耐久度を調べるための行動だ。その間に、食べるものを別に設定したスライム達を錬成する。


「洗濯スライム完成。カノン、布はある?」

「はい。こちらを」


 カノンは布きれをセレーネに渡す。その布を軽く汚してから、洗濯スライムに投入する。洗濯スライムは、自分の身体の中で布を回転させていく。すると、埃汚れなどが取れていった。


「もう良いかな」


 カノンが洗濯スライムの中から布を取りだして、カノンに渡す。カノンは、その布をジッと見ていく。


「そうですね。乱暴な洗い方ではないので、手洗いの代わりに使えるかもしれません。こちらは私が実地試験を担当しましょう」

「分かった。洗濯一号はカノンに付いていってね」


 セレーネが指示を出すと、洗濯スライムがカノンに近づいていく。カノンは洗濯スライムを持ち上げて軽く抱えた。あまり力強く抱えると膜の内側に入ってしまうからだ。


「後は掃除……埃取りとかはさすがに膜が邪魔になるよね?」

「膜の性質に粘着性を持たせれば埃取りになりますが、結局捕食出来ませんね。膜越し食べる機構を作る必要がありますね」

「う~ん……時間で膜をひっくり返して食べる?」

「どうやってひっくり返すのですか?」

「う~ん……分からない。やっぱり掃除スライムは膜無しで、少し液状にしようか。試作で出来たあれみたいに」

「核の保護が課題ですね」

「核を膜で包もうか?」

「核の内側に消化液が入るのでは?」

「ああ……じゃあ、掃除スライムは普通に膜無しのスライムにしよう」


 現実的な方向に考えて、セレーネは普通のスライム型で掃除スライムを作り出した。消化するものは埃と生物に繋がっていない抜け毛である。


「掃除一号も転がっていって」


 実験室内の埃掃除に掃除スライムを転がしていく。そんな実験室にナタリアが入って来た。


「試作は……順調そうですね……」


 ナタリアは実験室内を転がり続けているスライム達を見てそう言った。


「これは何をしている最中なのでしょうか?」

「耐久試験と掃除スライムの実地試験かな。後で屋敷でもやるけど。これが今作ったスライム達の資料ね」


 セレーネは錬成しながら纏めていた資料を渡す。


「なるほど。保湿、洗濯、掃除が出来るスライムと。家事の現場では欲しい人材……スライム材ですね。洗濯スライムは、食器にも使えるのですか?」

「ううん。食器洗いも考えてたんだけど、食べ残しとかソースとかを食べるようにしたら、普通の食材も食べそうでしょ? 現実的に厳しいかなって感じ」

「なるほど。では、ひとまずはこの三種類を調整していくという形ですね」

「うん。実地試験を繰り返すのと、現場の意見を取り入れるつもり。うちの屋敷のになるけど、大丈夫かな?」

「メイドの意見という事なら大丈夫だと思います。どこの屋敷のメイドも同じような悩みを持っているでしょうから」

「そっか。じゃあ、このままスライムの研究は続けるね。完成するまでは論文にしない方が良い? 報告書形式だけでも纏めてこまめに提出する?」

「後者で。そちらの報告書から進捗を伝えていけば、順調に進んでいる事を知らせる事が出来ますので」

「分かった」


 メイドの何気ない案から始まったスライム研究は順調に進んでいった。

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