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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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複数の研究

 翌日。セレーネはカノンを連れてミーシャの元に来ていた。当然リーシアもいたが、今日はシローナも戻って来ており、セレーネはシローナの膝の上で抱きしめられていた。


「セレーネちゃんは、あまり成長しないね」

「これでも成長したけど」

「ちっこくて可愛いままだよ」


 シローナはセレーネの頭を撫でて愛でていた。セレーネはちゃんと成長していると主張しているが、平均と比べれば小さい方だった。


「もう……今日はミーシャちゃんに確認したい事があったの」

「何でしょうか?」

「錬金術でスライムって作れる?」


 セレーネの質問に、ミーシャだけではなく他の二人も困惑する。因みに、カノンも前日にこういう理由でミーシャのところに行きたいと伝えられた時に困惑している。理由を聞いて納得はしていたが。


「実はね。こういう事考えてるの」


 セレーネは昨日メイドから集めた意見を元に作成したメモをミーシャに渡す。ミーシャはそれを読んで少し考え込む。


「なるほど」


 リーシアがミーシャから紙を取って中身を読んでいく。


「面白いですね。確かに入れ物に関わらず存在出来るというのは水仕事をする人達も使いやすいでしょう。スライムというよりも立体で維持するという形で調整すれば良いのでは?」

「スライムにしたら持ち運びが簡単でしょ? 手を突っ込めば潤うし、勝手に付いてくるようにしたら便利! スライムの消化で常に綺麗に保てるし、保湿薬を常に補給出来るでしょ?」

「消化したものを保湿薬に変化させると。確かにそうすれば永遠に使える保湿薬が出来ますね。それで出来るの?」


 リーシアは、ミーシャにスライムを作る事が出来るのか確認する。


「そうですね……スライムを構成するのは、全てを消化する身体と中央の核ですので、中央の核を作る事が出来れば問題なく調合出来ると思います。通常の核を用いる事はやめた方が良いでしょう。元々のスライムと同じ特徴を持たれれば、人を襲う事になりますので。人を襲わないように調整しつつ、主に忠実になるようにする必要がありますね」


 ミーシャの話をセレーネはすぐにメモしていく。


「じゃあ、核を作って保湿薬と結びつけるって感じ?」

「はい。そもそも核の製造方法が分かっていませんので、そこから開発する必要があります。製造法は魔物素材からの錬金か、魔術道具として作り出す方法が考えられますね」

「魔術道具を核にして錬金術でスライムを調合するの?」

「いえ、最終的に錬金術を使わずに作り出せる可能性はあります。その辺りは作りやすい方法を選ぶと良いと思います」

「なるほど。分かった! ミーシャちゃんも何か思い付いたら教えてね」

「はい」


 シローナの膝から降りたセレーネは三人に手を振って、カノンと一緒に総合研究室に戻る。そしてナタリアにスライムの研究の資料を渡す。


「今度はスライムですか……人工魔物……面白い視点ではありますね。危険な実験を行う際は最低でもカノンの監視の下に行う事。私がいる場合は、一応私も呼んでください」

「は~い」


 セレーネは返事をしてから、自分の研究室に戻る。すると、そこにはジェニファーがいた。


「家で作業してくれても良かったのに」

「家よりも集中出来るから。一応、肩幅とかも考えて設計してみたよ。今のところ四パターンかな」


 ジェニファーはそう言って、移動式黒板に設計図を貼りだしていく。


「女性型が三つ?」

「うん。男性型も設計してみたけど、ちょっと問題があってね」

「あっ、肩幅?」

「うん。女性型だと、少し肩幅を狭く設計出来るけど、男性型にすると肩幅を広げた方が良いかなって感じ。でも、結局力の強さは出力で決まるから、肩幅は要らないかもって思って女性型を多くしたよ。まぁ、身体付きは人間らしさがないけど」

「華奢な体型って事ね」

「そういう事」


 ジェニファーからの説明を受けて、セレーネは設計図を見ていく。


「う~ん……これかな」


 セレーネが選んだのは、中間の身体付きをしている設計図だった。


「何で?」

「あまり身体が大きくない方が良いけど、小さすぎると出力が低下しそうだから、このくらいが丁度良いかなって。ジェニファー的には?」

「同じ意見かな。後は表面積とか内部に組み込める魔術陣の数が丁度良くなるかなって感じ」

「なるほどね。大きすぎるのは魔術陣以前に邪魔だから無しとして、これで作るか……部品作りが難しいかな……頑張ろう」

「うん。一つ疑問があったんだけど、普通のゴーレムは岩の集合体とかでしょ?」

「らしいね」


 セレーネもゴーレムの実物を見ていないので、はっきりと言い切る事は出来なかった。


「関節ってここまで複雑なのかな?」


 ジェニファーにそう訊かれて、セレーネは答える事が出来ずにカノンを見た。こういう時はカノンから聞くのが良い。


「ゴーレムの関節は、基本的に魔力で繋がっています。ですので、関節を破壊するには剣で斬るよりも魔法で破壊するのが効果的です」

「だって」

「そうなると、関節の機構をそのままじゃなくても関節を浮遊させておくって事も出来ないかな? 一応、それ想定で少しだけ設計はしておいたんだけど」


 そう言われて渡された設計図を見たセレーネは、少しだけ首を傾げる。関節を浮遊させておく事は【座標指定】の応用で出来るが、これのメリットを考えていた。


「関節部のメンテナンスが要らないって事くらいかな……力の入り具合が問題だから、そこは試作して確かめる必要があるかな。ジェニファー、ありがとう」

「ううん。役に立てて良かった」


 セレーネでは複雑な関節部分などの機構は思い付かないので、ジェニファーの力を借りた事は正解だった。これらの試作をして、どういうタイプが一番良いかを試験していく事で、最終的な機構を決めるという形だ。


「う~ん……ゴーレムの試作もだけど、スライムの実験もしたいし……そろそろ中継基地の方にも行かないといけないかもしれないし……大忙しだね!」

「セレーネちゃん楽しそうだね」

「うん! 一つの事で忙殺されるよりも色々な事を沢山したいからね! また頼るかもだけど、その時はお願いね」

「うん」


 魔動列車開発とは違い、複数の研究を同時並行して進めていく。だが、新しい事ばかりなので、楽しみな表情になっていた。それを見たジェニファーは、セレーネが楽しそうで良かったと内心安堵していた。

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