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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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遠距離連絡用魔術道具の開発

 翌週。セレーネは、遠距離連絡用魔術道具の開発に勤しんでいた。科学研究所から協力も取り付けられて、向こうからのアイデアも送られてきた。


「電波。中継地点を作っておく事で、遠くまで飛ばす事が出来る。ただし、中継地点は有線で繋げる。う~ん……結局有線になるのかぁ……有線だと工事がなぁ」

「魔物が壊す恐れもあります」

「ね。その点を魔術で解決出来ないかだって」

「優先部分の解決は難しいと思います」

「だよね」


 カノンからの率直な意見に、セレーネも頷く。電波という方法が確立しているという事に驚いていたセレーネだが、結局中継同士を有線で繋げる必要があるという点から、そこまで有用ではないようにも思えていた。


「でも、現実的かどうかで言えば、これが一番現実的だよね?」

「そうですね」

「う~ん……どうするか……中継が必要なのは分かる。この国は大きいし。有線部分は埋めるか何かで対応可能だと思うけど、その工事が大変だと思う。断線させちゃいけないし、森を突っ切るように埋めるのも結構厳しい気がする。線路とは違うし……線路? 線路って結構張り巡らされてるよね?」

「そうですね。路線図を持ってきます」


 カノンは、部屋の片隅にある棚から新型輸送用魔動列車開発の際に利用した路線図の予想図を出してテーブルに広げる。


「この線路沿いに埋めればある程度安全なんじゃないかな? それか線路に同じ信号を送る機能を付ければ。中継地点も線路沿いなら、ある程度破壊されたかどうかの確認がしやすいし」

「なるほど。今から線路に機能を持たせるのは、現状の機能に影響してしまう可能性がありますので、近くに埋めるのが一番かと」

「それもそっか。この路線図から最適な位置を割り出して……」


 セレーネは、科学研究所から届けられた情報から中継地点の候補を決めていき、それをメモしていく。


「こちらの距離は遠すぎるのでは?」

「有線だから、そこまで距離に拘らなくても良いと思う。ここら辺は森の中だから、もう少し外側に近い方が良いと思うの」

「なるほど。こちらにも結界を張れば良いと思いましたが」

「結界を付けると、予算が嵩むよ?」


 国家事業になっている訳では無いので、予算を気にせずというわけにはいかない。【対魔物結界】を付ける事を考えると、予算が嵩んでいくとセレーネは考えていた。


「確かにそうですが、この中継地点を破壊されては元も子もないと思います」

「むぅ……ナタリアに相談かな。私の一存で決められる事じゃないし」


 研究の代表者はナタリアになっているので、こうしたものは全てナタリアに提出して確認を受ける事になっている。セレーネとしてもナタリアが間に入ってくれる方が研究もしやすかった。


「無人でも良い中継地点も欲しいかな?」

「仮に作るとして、どういう規模感になるのかが重要かと」

「う~ん……箱に入れるくらいの中継地点かな。この音の信号が途絶えないように信号を増幅する装置が必要かと思ったんだけど」

「なるほど。信号がどこまで続くかを確認して増幅が必要な地点を割り出すところあらですね」

「だね」


 カノンと話していく事で、セレーネは少しずつ必要な情報を書き込んでいく。これをナタリアに提出する事で研究が進んでいく事になる。


「音を電気信号に変える変換術式は出来てるから、これも提出しないと。他に何かあったっけ?」

「お嬢様のやる事はこれで全てだったと記憶しています」

「じゃあ、提出しに行こう」

「はい」


 報告書として纏めたセレーネは屋敷から総合研究室の研究棟に移動してナタリアの部屋に来ていた。ナタリアはナタリアで様々な書類仕事があるので、そこそこ忙しくしていた。ナタリアの部屋にも思考機などを置いてあり、情報の記録と分析がやりやすくなっていた。


「ちゃんと使えてる?」

「はい。情報の記録と引き出しに重宝しています。本日は提出物ですか?」

「うん。これ読んで」


 セレーネに渡された報告書にナタリアは素早く目を通していく。読む事に慣れているナタリアは、速読をしても内容を八割以上理解出来る。


「なるほど。確かに現在進行中の新型輸送用魔動列車のレールは、国全体に広がっていますし、通常の路線も使えばさらに範囲を広げる事が出来ますね。増幅器に関しては科学研究所にも伝えておきます。魔術的に増幅する方向でセレーネ様はお考えという事で良いですか?」


 ナタリアの確認にセレーネは頷いた。


「うん。それが一番安定するかなって。そこら辺は向こうとも話し合って。私よりも良い方法があるなら、そっちを優先して良いよ」


 セレーネは、自分が思い付いている方法が一番良いとは考えていない。自分よりも良いアイデアがあるのであれば、そちらを優先した方が良いと考えていた。

 ナタリアも同じ考えを持っているので頷く。


「はい。変換術式も上手く出来ているようですね。問題ないと思います。取り敢えず、この方向で進めていきます。セレーネ様にも現場に行って貰う事になるかもしれませんので、そこは頭に入れておいてください」

「うん。分かった。私にも何か手伝える事ある?」


 セレーネが担当している部分が終わったので、他の事で手伝えるところがあればそっちに移るつもりだった。この研究はセレーネにとっても重要なものなので、出来る限り早く進めたいのだ。


「こちらの話し合いが終わるまではないですね。別の研究をしても良いですし、これに関して深く考えるのでも良いです。本当に個人的な研究ではないのであれば、研究室内で研究してください。定期的に報告書を提出して頂ければ、こちらでも予算を出せるので」

「分かった。じゃあ、屋敷に戻ってるね」

「はい。話し合いが終わり次第知らせます」


 提出を終えたセレーネは、総合研究室を後にして屋敷へと戻っていった。ナタリアの方で科学研究所との話し合いが行われ、セレーネのアイデアを採用する方向で決まった。増幅に科学的な装置を使うよりも安価で済む事に加えて装置自体を小さく纏める事が出来ると判断されたからだった。

 中継地点の建設地点に関しては、まだ話し合いが進められている。信号の増幅が必要になる距離を算出してから改めて決められる。有人無人に関しても、この算出が終わってから決められる。セレーネはそれまでの間に魔術陣の見直しなどをして、万が一がないように務めた。

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