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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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久しぶりのユイ

 一週間後、お茶会用のドレスを着たセレーネとフェリシアは、ルージュ公爵家の別邸に来ていた。ユイに招待されたお茶会に参加するためだ。お茶会の参加者は、セレーネ、フェリシア、ユイ。傍付きとして、カノン、マリア、メイがいる。

 十七歳となったユイは、美しく成長しており、同年代と比べても大人びていた。ドレスを着ている事もあって、その美しさが更に引き上げられている。メイも、二十五歳になり大人な女性という雰囲気が強くなっていた。カノンの成長が止まっている事もあり、この中で一番大人の見た目となっている。


「さてと、久しぶりね。入学した時に誘おうかと思ったのだけど、セレーネが忙しそうにしていたから先送りにしていたら、フェリシアまで忙しそうになっていたから、声を掛ける機会が中々なかったのよね」

「まぁ、途中からフェリシアも結界の構築で忙しくなったからね。でも、よく私達が暇になったって分かったね?」

「ええ。お父様が教えてくれたのよ。一応、お父様のところにも報告が来るようになっているから。私がセレーネ達と会いたいと思っている事を知っていたから教えてくれたのだと思うわ。それで、もう終わったの?」


 詳しいところは聞くことが出来ていないので、ユイはセレーネ達に直接聞く事にしていた。


「ええ。私は終わったわ。現状結界を新しく作る必要がないのよ。だから、氷魔術をより幅広く使う研究をしているわ。今は魔術研究所で実習させて貰っている最中ね。氷属性研究員になる予定だから」

「属性研究員になるのね。でも、学園にいた頃から氷魔術ばかり使っていたものね。納得だわ。卒業単位は満たしているの?」

「今回の事業で結界の開発を手伝っていたから、そこで沢山の単位を貰えたのよ。それくらい画期的な開発だったから」

「【対魔物結界】よね? フェリシアの論文読んだわ。範囲を広げる事が出来たら、街ももっと安全になりそうよね」

「そっちの開発もするわよ。まぁ、一朝一夕にはいかないものだから、地道にという形だけれどね。でも、それは派遣研究員として総合研究室でナタリアさんとやる事になっているの。スピカさんも教会からの派遣研究員として来るわ。昨日辞令の手紙が来たから間違いないわね」


 この結界研究に関しては、昨日辞令が下りた。まだアカデミーを卒業していないフェリシアだが、魔術研究所の所属は決まっている事に加えて卒業単位を満たしているために、ほぼほぼ研究員として扱われている。

 現在、研究所の実習生としては活動している。講義がないので、ほぼほぼ研究所に入っているような状態だった。


「それはそれで結構大変そうね。セレーネは?」

「う~ん……私がやる事は終わってるから、基本的には暇かな。何か問題があったとき動かないといけないから、まだまだ安心は出来ないけどね。まぁ、おかげで自分の研究が出来るようになったよ」

「それは良かったわね。それじゃあ、ここ二年くらいは自分の研究は出来ていなかったのね?」

「うん。まぁ、移動時間とかに出来たりはしたけどね。それで遠距離連絡魔術道具の開発がある程度出来たし。まぁ、陛下から許可貰って時間を貰ったりもしたけど」

「聞いた事がない魔術道具ね?」

「試作品だから、論文にもなってないしね。遠距離で書類の共有が出来る魔術道具だと思ってくれて良いよ。それの改良とかも私の研究の一つかな」

「それじゃあ、セレーネも魔術研究所に?」


 セレーネが魔術と魔術道具が好きだという事を知っているユイは、セレーネも魔術研究所に所属するのだろうと予想していた。


「うん。総合研究室にね。ナタリアと私しかいないけど。フェリシアとかみたいに専門的な研究員が派遣される感じで進めていくみたい。私とナタリアは、複数の研究を同時に扱ったりしているし、分野が似通ったものばかりを研究しているわけでもないから、そういう研究室にしているみたいだよ。その方が私達の研究を活かせるって考えたみたい。基本的に二人しかいないから、割と小さな研究所になるらしいよ。まだ出来上がってないから分からないけど」

「そうね。私も既存の魔術研究所の共有研究室で理論的に話し合いをしているだけよ」

「まぁ、新築で用意するのならそうなるわね。それじゃあ、卒業したらそのまま研究所入りなのね」

「うん。ユイは? 単位順調?」


 セレーネが心配そうにそう言うので、ユイは少し苦笑いしてしまう。セレーネからすれば心配にもなるかと納得もするが。


「大丈夫よ。来年度には卒業単位を満たすわ。基礎を重視するような教育のやり方を提唱したりしているわ」

「教育関係に進んでるの?」

「ええ。セレーネ達が色々と教えてくれたでしょう? あれで基礎の大切さを理解したから、それをこれからを担う子供達に伝えていきたいのよ。そうすればセレーネのような子が増えてくれるかもしれないでしょう?」

「セレーネのような子が増えたら……大変そうね……手綱を握れる人が必要になるわ」

「それは……そうね……」


 フェリシアの言葉に、ユイも同意する。それに対して、セレーネは頬を膨らませて不満を伝えていた。


「私、そこまでじゃじゃ馬じゃないよ。ねぇ、カノン?」

「じゃじゃ馬です」

「むぅ!」


 カノンも同意見だったので、セレーネは怒りながらケーキを食べる。


「それじゃあ、ユイは卒業後に教師になるのかしら?」


 フェリシアの問いにユイは首を横に振る。


「私は婚約者と結婚するから、教師にはなれないわね。だから、今の内に出来る事をしたいのよ」

「ふ~ん……教師すれば良いのに。働く事も禁止されるの?」

「家に入ったら、色々とやる事があるのよ。教師をしているような暇があるか分からないわ」

「大変だね。でも、お茶会くらいは出来るでしょ? もし結婚しても、ちゃんと誘ってね? もし何か言われるようだったら、私達の繋がりを持っておく事が家のためになるかもしれないとか言っておけば大丈夫だろうし。私とフェリシアは、そのくらいの実績を残しているから」


 セレーネの言葉に、ユイは思わず吹き出してしまう。


「ふふっ、そうね。でも、今度はセレーネ達の方から誘って欲しくはあるわね」

「えっ、私達が? う~ん……時々陛下が突撃してくるけど大丈夫?」

「大丈夫よ。これでも公爵家の人間だもの。陛下と会話した事は何度かあるわ。家に突撃してくる事はないけれど……本当に突撃していらっしゃるの?」

「うん。何か思い付いた事があるから、少し話を聞けって。まぁ、面白い話が多いから良いんだけどね。最終的にお父様とか他の側近の人達とかが回収していくよ」

「そういえば、お父様が困っているみたいな話を聞いたわね……そう……セレーネのところに行っていたのね。余程セレーネの事がお気に入りになったのかしら?」

「う~ん、そうなのかな。私には迷惑じゃないけど、お父様達には迷惑だから一報入れてから来れば良いのにね」

「セレーネの陛下への扱いが雑な気がするのだけど……」

「何度も会っている事と無茶な要求をされる事とかが重なって、敬語こそ使うもののほぼほぼ友人のような関係になっているのよ。それでも怒られないのは、セレーネが時々出す苦言が、側近の人達と同意見という事が大きいみたいよ」

「ああ……なるほど……」


 二年程会っていなかったセレーネ達だが、その仲の良さは一切失われておらず、お茶会は楽しいまま進んで行った。

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