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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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魔動列車の設計完成

 それから一ヶ月と少しが経った。魔動列車の開発は、少しずつ形となってきている。セレーネが考案した魔力圧縮による出来る弾力性のある魔力の塊を魔力結晶と同じく魔力を貯蔵する素材として活用する方法をミーシャが見つけた事により、魔動列車全体の魔力貯蔵量が倍増する事になった。

 これはランゲル達がその加工法を見つけてくれたという事が大きい。魔力が切れる事による被害が大幅に抑えられるので、セレーネとナタリアは、さらに使用する魔術陣の再調整を繰り返していく。


「レールの補強と位置ズレを防ぐための魔術陣は完成しました」

「これで先にレールを敷設出来るね。問題は車体の幅を決定しないといけないって事だけど、今は開発部が試作品を作ってるから、それ待ちかな」


 車両のバランスが取れていなければ、満足に走らせる事が出来ない。なので、ジェニファーの設計通りに試作品を作って問題点を見つける必要がある。

 その待ち時間の間もセレーネ達は開発を続けていた。


「素材の問題はある程度目処が付いていますが、問題は人手です。セレーネ様と同等の技術を持つ学生は少なく、魔術研究所から人を呼ぼうにも現在はダンジョン調査をしているので、人数が少ないという話ですから」


 ミーシャは、現在の問題点の一つを突く。リーシア、ミーシャ、ナタリアが加わるのは、かなり大きいが、それでも魔術道具として魔術陣を刻む作業をするには人手が足りない。

 ミーシャの指摘は、ナタリアも頷いて肯定する。


「私は丁度調査を終えたところだったので、陛下からの王令に応えるという条件の下、調査から外れていますが、ほとんどの人員は調査に出払っています。現在研究所に残っている人員では、少々力不足ですので」

「育てるのは? やり方を教えれば大丈夫じゃない?」

「セレーネ。やり方を知れば何でも出来るようになる訳ではありません。学び自分の中に取り入れる事が出来て、初めて人はその技術を会得するのです。それは、セレーネも分かっているでしょう?」

「それもそっか」


 リーシアに諭されて、セレーネも納得する。セレーネが今のように魔術を扱えるようになったのは幼少期からの経験が大きいという事をセレーネも自覚する。最初から今のように扱えたら、もっと多くの事を知ることが出来たはずだからである。


「でも、それだと結局魔術的な部分で止まる事になるよね。簡単なところだけやってもらうのは?」

「セレーネ様。今回使用する魔術陣や術式などは、私とセレーネ様で大きく改造しています。魔動列車に合わせる形にするためですが、そのせいで通常の魔術の要素はかなり減っています。つまり、簡単なところもないのです」

「…………」


 ナタリアにそう言われてしまい、セレーネはジェニファーをちらっと見る。セレーネの視線を感じたジェニファーは、顔を上げてから頷いた。ジェニファーは、開発に関わっているためギリギリ理解出来ているが、初めて見れば混乱するのは間違いないという認識だった。


「王宮魔術師は動員出来ないのですか?」


 リーシアは、ナタリアに確認すると、ナタリアは困ったように眉を寄せる。


「無茶言わないで下さい。彼等には、王と王城を守るという使命があります。王令で動員する事も出来ません。彼等の業務は、それだけ重要なのですから」

「う~ん……少しずつ進めるって事で様子見しつつ陛下にもう一度頼んでみる」

「それが良いかと」


 そんな風に魔術師問題に関して話していると、勢いよくランゲルが入ってくる。


「おう! 試験結果が出たから持って来たぞ!」


 セレーネとジェニファーはすぐに結果を受け取って中身を確認していく。


「問題なし……全体的なバランスとかも問題ないから、車幅も確定で良さそう。これならレールの敷設を先に進められるね」

「うん。少し微調整は必要みたいだけど、それが車幅に大きな影響を出す事はなさそう」

「ああ。本格的に製造に入る。ジェニファーの嬢ちゃんは、開発部で仕事だ。行くぞ」

「あ、はい! じゃあ、セレーネちゃんまたね」

「うん。頑張って」


 ここからはジェニファーも製造側に入る。大きな設計が完全に終わったからだ。残ったセレーネは、魔動列車に取り付ける魔術道具の試作などに入る。

 体育館程の広さがあった研究室は、今や様々な試作品で溢れかえっている。ここで列車も製造する事を考えた故の広さだったが、現在はセレーネによる魔術道具の試験場になっていた。


「お嬢様、試作二番が停止しました」

「えぇ……まぁ、魔力を沢山食べる設計だったから仕方ないか。解体で」

「はい」

「セレーネ様、試作十番も停止です」

「魔力結晶をケチりすぎたかな……そっちも解体で」

「はい」


 カノンとスピカが管理をして、長時間運転がどれだけ出来るかの確認をしている。セレーネも基本的に稼働時間を把握しているので、使い物にならないと判断すれば、即座に解体指示を出す。


「内部の魔術結晶の問題が二番で、魔力結晶の節約の問題が十番ですね。やはり、魔力結晶の量はある程度多くしておかなければなりませんね」

「そこまで長時間運転しないと過程しても、一時間で停止するのは早いからね。魔術陣は、やっぱり五番以降の調整が良さそう」


 ナタリアもどの魔術陣をどの番号の試作品に用いているかを把握しているので、即座にセレーネが言った魔術陣が描かれた紙を取り出す。


「では、こちらを仮採用にしましょう。循環機能的な問題は現在のところなさそうですね」

「うん。そこの部分で障害が出ている感じはないからね。停滞魔術の管理もこれで問題ないはず。後はコアの配置をもう少し考えた方が良さそうかな」

「魔力線を工夫すれば、大きな干渉はないと思いますが」

「出来れば最短で結びたいかな。特に全体統率用コアは、全体に問題が無いことを素早く分析して欲しいから」

「では、一度見直してみましょう」

「うん」


 コアにより管理される機構は速度調整、魔術的ブレーキ、【装甲結界】、車両内部の軟質結界、車両全体の破損状態の確認、車両全体の【座標指定】の管理だ。そして、それら全てのコアに異常がない事を確認する統率用コアも付ける。

 それらを干渉させないように注意しながら、統率用コアが即座に問題を確認出来るように最短で魔力線を繋ぎたいというのがセレーネの考えだった。

 ナタリア、ミーシャと話し合いコアの配置などを改めて決めていく。

 ジェニファー達が車両の製造に入った事もあり、セレーネ達も本格的に魔術道具部分の構築を進めていくために、次々に試作品を作っていく。

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