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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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空間転移装置の設置作業2

 翌日は本屋に向かい面白そうな論文集を購入して、カノンの膝に乗りながら過ごしていった。その翌日は、街の観光を行っていく。鉱山などは巡らないが、金属製品などの店を見ていった。ただし、全て大通り沿いの店だけだった。細かい通りの店には行かないようにして、最大限安全を優先して観光を行った翌日。セレーネは、カノン達を連れて空間転移装置を設置する。


「それじゃあ、後はここの警護をお願いね」

「はっ! 命に替えても!」

「いや、命は大事にね」


 セレーネがそう言うと、ラングリドに雇われた警護員は少し驚いていた。命に替えても守るというのが、自分達の仕事なので、命を優先しろと言われるとは思わなかったからだ。さらに言えば、貴族の大半は、命に替えてもと言えばよろしく頼むと返す。そういう意味でもセレーネの対応は、警護員達の常識とは違っていた。

 セレーネは特に気にせずに、そのままカノン達を連れて帰っていった。


「ああいうのが、カリスマってやつか」

「セレーネ様は、お優しい方だから」


 ベネットとスピカがセレーネ達の後ろから付いてきていると、セレーネが振り返ってスピカに飛びつく。セレーネはスピカとカノンと手を繋いで上機嫌で宿へと向かっていった。


「まぁ、あの姿を見たらカリスマ性よりも子供っぽさが勝るか」


 子供らしさでいっぱいのセレーネを見て、ベネットはそう呟きながら周囲の警戒に移る。今のところセレーネに害を与えようとする者は五人程いたが、その全てをセレーネにバレないうちに拘束して尋問させていた。その尋問結果は、既にベネットの元に届いており、それはカノンにも共有されている。

 ただし、依頼主に関しては吐かないので、大きな情報は手に入らなかったが、それでもセレーネの事業を妨害しようとしている事は判明していた。未遂で終わっているため、懲役刑で済んでしまう。


「それじゃあ、明日は別の街に出発?」

「いえ、明後日に出発となります。明日は、準備を整え魔動列車の車両を確保します」

「そっか。そういう準備も必要になるよね。ベネット、次の街への連絡って先に送る事は出来る?」

「ん? ああ、なるほどな。次に行く場所は予定通りで良いんだな?」

「カノン」

「基本的に予定を崩す事はありません」

「だって」

「了解だ。嬢ちゃん達が宿の部屋に入ったら、連絡を送ってくる」


 先にセレーネがいつ到着予定かを伝えておく事で、騎士団の警備を厳重にしておく事が出来る。先手を打っていれば、相手の行動もある程度制限出来るので、セレーネ達も行動がしやすくなるという事だ。

 初日から観光出来る程度の状態には出来ると思われるので、セレーネとしても重要な事だった。

 セレーネ達が宿に戻ったので、ベネットは次の街に情報を共有するための手紙を書くため部屋に入っていった。

 部屋に戻ったセレーネは、すぐに【空間転移】を使用して王都に戻った。戻った先は屋敷内で転移に利用していた部屋なので、中には誰もいない。だが、すぐにマリアが部屋に入って来た。


「思ったよりも遅かったね。建設が遅れてるの?」

「遅れてるわけじゃないみたいだよ。工期は予定通りらしいから。私が来るのが早かったみたい」

「そっか。それじゃあ、空間転移装置に座標を記録しに行こうか」

「うん! フェリシアは?」

「屋敷に残っているようにお願いしたから大丈夫」

「そっか。早く済ませてフェリシアとも少し話して戻りたい」

「はいはい。それじゃあ行こうね」


 セレーネは、マリアと手を繋いで王都にある空間転移装置にゴールデンの空間転移装置と繋げる。相互転移を可能とさせてから、セレーネは屋敷に戻って自分の部屋に来る。そこではフェリシアが研究の内容を纏めているところだった。

 セレーネが来ている事は知っていたので、ペンを動かす手を止めてセレーネの方を向く。それを見て、セレーネはすぐにフェリシアに飛びつく。


「まだ三日くらいしか経ってないわよ?」

「フェリシアとは毎日一緒にいたいもん」

「そんな事言って、カノンさんやスピカさんに甘えて毎日過ごしているくせにね」

「むぅ……分かるの?」

「眷属の感覚がなくたって分かるわ。セレーネは甘えん坊だもの」

「むぅ……」


 フェリシアにここまでの行動を全てお見通しにされたセレーネは、少し頬を膨らませてからフェリシアの首を甘噛みする。ただの照れ隠しだという事をフェリシアも見抜いているので、その頭を優しく撫でる。


(二人って同い年のはずなのに、ずっとフェリシア様の方がお姉さんって感じなんだよね……そろそろ年相応に落ち着くかと思ったけど、セレーネはいつまでも子供のままかな。まぁ、その方がセレーネらしいか)


 二人の様子を見ていたマリアは、そんな事を考えていた。そのくらいに二人の間には精神的な年齢差があるように思えたのだ。


「向こうでは問題ない?」

「うん。ベネットが色々とやってくれてるみたい。今のところ問題が起こる前に対処出来ているって感じなのかな。時々いなくなる事があるし、その時に限ってカノンの警戒度が増すから」


 ベネットが妨害者を拘束しに向かっている事にセレーネも薄々気付いていた。気付いた最大の理由は、カノンの僅かな変化からだ。ベネットが拘束しに向かっている間は、カノンが唯一の護衛となる。スピカもいるが、護衛という世話係という側面の方が強い。

 そして、長年共にいて、カノンの事を知り尽くしているセレーネには、カノンが警戒を強めている事などお見通しだった。


「色々な手を打ってくれてるみたいだし、筋肉お馬鹿じゃないのは前から知ってから安心して良いと思う。フェリシアの方は? 私がいなくて寂しい以外に問題はない?」

「マリアさんがいるから大丈夫よ。セレーネと何ヶ月も会えないならまだしも、こうして時々会えるのなら、寂しさも和らぐしね」


 フェリシアはそう言って、セレーネの首にキスをする。それを受けて、セレーネはより一層フェリシアに密着して喜んでいた。

 そんな中で、マリアが手を鳴らす。


「はい。そろそろ向こうに行かないと駄目だよ。カノンさん達も心配するでしょ?」

「むぅ……は~い」


 渋々頷いたセレーネはフェリシアをもう一度力強く抱きしめると、マリアの方にも向かってきて抱きついた。


「またね」

「うん。カノンさん達によろしくね」


 マリアから離れたセレーネは、【空間転移】を使ってゴールデンの宿屋に戻る。セレーネの空間転移装置の設置作業はこのような形で進んで行き、三ヶ月掛けて全ての街への設置と座標の記録を終える事が出来た。

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