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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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再び試作品作り

 一週間後、ミーシャが屋敷を訪ねてきた。錬金釜の開発が終わったからである。

 その日は丁度ユイとメイも遊びに来ていたので、一緒に見学する事になった。


「本当に私も見学して良いの?」

「うん。ユイとメイだし。それでミーシャちゃん、庭でやるの?」

「はい。想定よりも大きくなってしまい専用のコンロなどを使わなければ使えなくなってしまいました」


 そう言うミーシャに付いて行って、屋敷の庭に出るとシローナが準備をしているところだった。そのコンロと錬金釜の大きさは、一般家庭のリビングの大半を埋めるようなものだった。一気に何百人分のご飯が作れそうな釜である。

 その大きさを見て、ユイとメイは唖然としていた。


「思ったよりも大きいね」

「大は小を兼ねると言いますから。セレーネ様の作り上げる魔術結晶がどのくらいの大きさになるか分かりませんので」

「なるほどね。実際にどれくらいの大きさまで作れたの?」

「この釜と同じ大きさの魔術結晶を作る事が出来ましたが、多重魔術陣でもなければ使わないでしょう」


 結晶部分の大きさが大きくなるので、魔術道具にするには不便になる。そのためセレーネが使う多重魔術陣でもなければ必要ない大きさとなる。


「そうだ。これが枠組みの設計図。魔力の吸収とかと安全機構を組み込んだの」

「なるほど。パーツで分ける形ですね。前回よりも複雑になりそうですが大丈夫でしょうか?」

「うん。もう作ってあるから大丈夫。後は、魔術結晶の削り出しを慎重にやる感じかな。シローナちゃんも素材集めありがとうね」

「どういたしまして」


 シローナはセレーネの頭を撫でながらそう言う。

 シローナが支度をしてくれているので、セレーネは錬金を始めるだけだった。問題があるとすれば、この錬金釜は複数で扱う事が前提という面がある。そうで無ければ、かき混ぜが不十分になってしまうからだ。

 今回は、セレーネ、ミーシャ、シローナ、ユイがかき混ぜを行う。セレーネが良い機会だからユイも色々なものに触れると良いと提案したからだった。

 素材を大量に注ぎ入れて【空間転移】の魔術陣を閉じ込める。セレーネ達は大きく釜をかき混ぜていき、巨大な魔術結晶を作り出す。カノンとシローナで慎重に鍋から取り出してシートの上に置く。そこにはしっかりと【空間転移】の多重魔術陣を封じ込めた魔術結晶が置かれていた。


「よし ここまでは成功! 後は削り出しだね。ふぅ……よし!」


 セレーネは慎重に魔術結晶を削っていき、セレーネの求める形にしていく。この際に使用するのが、【座標指定】だ。指定する空間の形を資格ではなく円柱状にして目安を付ける事で削りやすくしている。

 削り出した魔術結晶を枠組みで覆っていく。大きなものなので、カノンやシローナも手伝ってしっかりと覆った。


「意外と重労働なのね」

「魔術道具を作る時は基本的にこんな感じだよ。大がかりなものになればなるほどね。取り敢えず、本体完成!」

「本体?」


 セレーネの言葉に、ユイは首を傾げる。てっきりこれで終わりだと思っていたからだ。


「これだけで安定させるのは厳しいかもしれないっていうのと設置型だから、移動させる事は考えなくて良いから色々と方法を考えてるの。ミーシャちゃん、これも見て」


 セレーネはこの一週間で考えていた設計図を全部ミーシャに渡す。ミーシャが読んでいる間に、セレーネは軽く起動実験をしていく。


「魔力の通りに問題はなし。後はもう一つ作って転移試験をするだけだね」

「確か転移負荷とかいうのがあるって言っていたわね。これで軽減出来るの?」

「多少ね。後は他にも対策を色々と取っている感じ」

「そうですね。この形で置くのは私も賛成ですが、設置に場所を選ぶことになりますね」


 セレーネの設計図を見たミーシャが、二人の会話に入る。設計図を返して貰ったセレーネは、それをユイに見せる。


「これって……神殿?」

「神殿よりは遙かに小さいよ。でも一軒家分の土地は必要になるかな」

「そうですね。ですが、これで更なる安定化を見込めます。これが成功すれば、最悪の場合でも魔術結晶の入れ替えだけで済むでしょう。【座標記録】の書き換えは上手く出来そうですか?」

「うん。魔術陣の順番を調整したから大丈夫だよ」

「では、もう一枚の魔術結晶を作った後に、こちらも製作しましょう」

「うん! ユイも手伝ってね」

「え? まぁ、良いけれど……逆に私が手を出して良いの?」


 特に研究に参加している訳では無いのに、研究の中核に入り込んで良いのかとユイは心配していた。高等部時代であれば、同研究室という事で手伝うという選択もあったが、今はアカデミーと学園で全く違う所属になっている。更に言えば、セレーネは特定の研究室に所属しておらず自由な研究をしている。

 自分が手伝う事により、セレーネの研究で得られる単位に影響してこないかという心配が大きかった。


「別に大丈夫だよ。この研究はミーシャちゃんが大半を手伝ってくれてるから。ユイが手伝ったところで大して変わらないし。手伝ってくれる人がいるかいないかは、その人の人徳と人脈でしょ? 絶対に研究を一人でやらないといけないって決まりはないからね」

「まぁ、それなら手伝うわ。力になれるかは分からないけれどね」

「大丈夫だよ。ユイは手先器用だもん」

「セレーネに言われると嬉しいわね」

「うん! じゃあ、魔術結晶作るからかき混ぜてね」

「あっ、そこからなのね。分かったわ」


 セレーネはユイの手を借りながら魔術結晶を作り、二つの転移装置を作ったところで安定させるための装置の製作を始める。ユイは製作を手伝うために急遽泊まる事になった。王都の中に住んでいるので、簡単に泊まりの連絡をする事が出来た。


「金属の加工を魔力で行うって……本当に難しいのね」

「そう? 慣れたら簡単だよ」


 何千枚も鉄の板を加工していたセレーネは完全に慣れているが、そんな経験がないユイは多少苦戦していた。それでも時間を掛けてしっかりと加工しているので、セレーネは満足している。


「ユイもいっぱい経験しないとね」

「そうね。確かに良い経験になるわ」


 最終的にアカデミーの研究室に行っていたフェリシアも帰ってきて、全員で製作に取り組む事になった。ミーシャは、セレーネの設計図を見直しつつ細かい修正案を伝えていった。

 それがなくても製作には時間が掛かるので、ユイは製作が終わるまで泊まりで手伝う事になった。ユイとメイが泊まるので、セレーネは終始上機嫌になっていた。

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