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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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分析機と最適化機の論文提出

 翌日と翌々日で【空間転移】の構想を洗い直しながら、自立思考型魔術道具にいくつもの魔術陣を読み込ませて、不調がないかを確認していく。ミーシャに頼るところではないので、素材が集まるまではミーシャはお休みとなった。


「うん。検索機能は上手くいってるね。類似部分を出して、この魔術がどの魔術に近しいかが分かり易くなってる。これで、基礎魔術化がやりやすくなるね」

「そうですね。最適化の方は上手く出来ていますか?」


 一緒に実験室にいたカノンが確認する。それがセレーネの目的の一つだったからだ。


「う~ん……複数ある魔術陣から参照してパターン別に出してくれるようにしたけど、私の頭に繋げるよりも精度は悪いかな。最適化は最適化で別のものにした方が良さそう」

「なるほど。では、二機になると?」

「うん。二機を繋げて分担すれば、魔術陣の分析と最適化がスムーズに出来ると思うんだ。まぁ、結局大きくなるからあまりやりたくないんだけどね」


 何度か繰り返している内に、最適化作業に関してはセレーネの満足いく結果を出せないという事が分かった。そのためセレーネは最適化と魔術陣を調べるという作業を分担させる事にした。

 急いで作る必要もないので、ゆっくりとコアから作り出していく。セレーネは、一週間掛けて、もう一機作り上げた。初号機を作った経験が活きており、作業の流れに淀みが一切なかったのが大きい。それと同時に初号機から最適化機能を取り除き、分析に特化させていく。

 そうして完成した最適化装置の起動試験をして、【最適化演算】がしっかりと働く事を確認する。


「ふぅ……う~ん……良し! ちゃんと出来た!」

「良かったわね。でも、最適化もこういう形式で出て来るのね」


 一緒にいたフェリシアが試験で出した最適化案の紙を見てそう言った。そこにはいくつかのパターンが描かれている。


「うん。フェリシアも使いやすいでしょ?」

「そうね。【凍結結界】を掛けてみて良いかしら?」

「うん。良いよ。そっちの方がちゃんと機能しているか分かり易いだろうから」


 フェリシアは、【凍結結界】の魔術陣を初号機に掛けて、魔術陣の分析をしていく。そうして分析したデータを二号機へと送る。そこで【最適化演算】が始まり、一分程で結果が出て来る。少し長めの紙を受け取り、フェリシアはそれを見ていく。


「意外としっかりしているわね。全体的に間違いがないわ」

「ふ~ん……どれどれ」


 セレーネはフェリシアの横から覗く。フェリシアの言う通り最適化として間違った提案は一つもなかった。中にはフェリシアも考えていたものも含まれている。人が考えるものと遜色のない結果を出せるという事がよく分かる。


「うん。成功だね。良し。取り敢えず、後は色々と魔術陣を分析していって調べるだけだ」

「良かったわね。ところで、これの名前は決めたの?」


 フェリシアは、自立思考型魔術道具を見ながらそう訊く。


「う~ん……そうだなぁ。分析機と最適化機かな」

「そのままね」

「だって、分かりにくい名前だと困りそうなんだもん。その方が良いでしょ?」

「まぁ、そうね」


 セレーネとしては、何か凝った名前よりも分かりやすさを重視した方が良いだろうと考えていた。凝った名前でそれが何の魔術道具だか分からないという状態は避けたいからだった。論文にする時にも相手に伝わりにくいというのもある。

 分析機と最適化機の最終調整を行いながら、セレーネは論文を書いていく。そんなセレーネの元に被災地で救護活動をしていたスピカが帰ってきた。


「スピカ!」


 眷属の繋がりでスピカの帰宅に気付いたセレーネは、すぐに玄関に向かって行き、スピカに飛びついた。スピカは、セレーネを受け止めて頭を撫でる。


「セレーネ様。ただいま戻りました。カノンもただいま」

「おかえり。向こうで問題はなかった?」

「色々と酷い惨状だったよ。ただの災害ならまだしも、そこから火事が発生していたりして街が半壊状態だったの。負傷者も多くて、何とか私が来てからは死者を出さずに済んだけど、それまでに亡くなった方々が多くてね……」

「そう。しばらくは休めるでしょ? ゆっくりして」

「うん。そうする。セレーネ様は、何か用があるのですよね?」

「うん! 来て来て!」


 セレーネはスピカの手を引いて、分析機と最適化機を見せるため実験室に向かう。スピカは長旅で疲れているはずだったが、セレーネが存分に甘えてきてくれているので、疲れが吹き飛んでいた。

 そして、セレーネの分析機と最適化機を見て、疲れなどが全く気にならない程に驚いていた。


「これは……凄いですね。教会の魔術も分析して欲しいくらいです。禁じられているので出来ませんが」

「もし許可が出たら使って良いからね。スピカが使っている魔術とかも使ってくれたら、最適化案が出て来るから」

「なるほど。セレーネ様に必要なデータも集まるので丁度良いという事ですね。では、お言葉に甘えて、私も魔術の最適化をして貰います」

「うん!」


 スピカに褒められ頭を撫でられるセレーネは嬉しそうに頷いてから、再び論文に戻っていった。こうしてセレーネ以外にも魔術の分析などをしていく事で、次々にデータを取る事が出来た。こうしたデータが、セレーネの論文にも使えるので、一週間掛けて論文もしっかりと纏める事が出来た。

 出来上がった論文は、情報処理魔術の論文ではなく魔術道具の論文なので、魔術道具研究室に提出したところ、再びアカデミーに呼び出される事になった。セレーネは面倒くさいという内心を表に出さずにカノンを連れて、アカデミーの研究室に来ていた。

 魔術道具研究室の講師は、ユルグライア・エバーグリーンという二十代後半の比較的若い女性講師だった。

 ユルグライアは、セレ-ネの論文をテーブルに置く。


「こちらの論文ですが、いくつか魔術に関して確認したい事がありお呼びしました。情報処理魔術に関しての論文は拝見させて頂いたものの、まだ魔術界に出て来て間もないという事もあり、私では全てを理解しているか怪しいのです」


 ユルグライアがセレーネを呼び出した理由は、分析機と最適化機に使われている魔術への理解度が低く魔術道具として機能している事の確認が論文上では出来なかったからだ。

 情報処理魔術の講師がいれば、そちらに確認を取ることも出来たのだが、開発者兼研究者がセレーネしかいないのでセレーネを呼び出すしかなかったのだ。

 セレーネは情報処理魔術について説明をしていく。それを聞きながら、ユルグライアは、論文にある疑問点を確認していった。


「なるほど。納得しました。論文が大きくならざるを得ない理由もはっきりしましたので、この論文は受理します。単位は三です。こちらは小型化を目指す等はするのでしょうか?」

「一応考えてはいますが、目処は立っていません。現状【記録媒体】のために大きなスペースが必要になりますので。【記録媒体】に記録出来る量を増やす事が出来れば、ある程度の小型化が可能だろうとは思いますので、そこの開発を進めるつもりです」

「分かりました。この小型化が出来るのでしたら、そちらも論文にしてください。三単位を差し上げます」

「分かりました。では、失礼します」


 セレーネはユルグライアに頭を下げてから、カノンと一緒に帰路に着く。


「これで十五単位だ。本当に一年の内に全部の単位が取れそう」

「そうですね。せっかくですので、アカデミーの施設も利用してみては如何でしょうか?」

「う~ん……使うような研究を始めたらね」


 セレーネの情報処理魔術の研究である分析機と最適化機の開発が終わった。これからは改良を目指す事になるが、ひとまずの研究は終了である。ここからは、【空間転移】に集中する事になる。

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