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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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自立思考型魔術道具試作品完成

 セレーネの【記録媒体】への情報記録は一週間掛かる事になった。情報の選別、種類分けなどをしないといけなかったため、時間が必要になったのだった。

 そこから自立思考型魔術道具の組み立てを始める。最初は起動試験をしないといけないので、そのまま実験室で組み立てている。


「これで良し……魔力線の繋がり問題は無し。詰まりも無し。ミーシャちゃん。起動試験するよ」

「はい」


 セレーネはコアを持って、台座に乗せる。コアはぴったりと填まり、魔力線の繋がりも問題ない事を確認する。ここでズレが生じていると魔術道具が上手く動かなくなるからだ。そこの合わせもセレーネは念入りに修正していたので、問題が起こることは万が一しかなかった。


「うん。これで大丈夫。起動するね」

「慎重に」

「うん」


 セレーネが魔力を流すと次々に魔術が起動していく。全てが繋がり連鎖的に発動していくのを感じ取れる。異常がない事が分かったのと同時に、セレーネは一つ気付いた事があった。


「……処理結果の投影先を用意するの忘れた」

「てっきり頭を繋げるものと思っていましたが」

「情報量が多すぎるよ。頭がパンクしちゃう」

「なるほど。その辺りの許容範囲は、セレーネ様が一番ご存知のはずですから、その通りなのでしょう。では、どうなさいますか?」

「箱に投影機能を付ける。これくらいならすぐに付けられるから」


 セレーネはコアを外して、ミーシャが作ってくれた箱を改良していく。改良の方法は、魔術結晶を填め込む事だ。魔術結晶の生成も何度もやっているセレーネには慣れたものだった。


「これは結界ですね」

「うん。詳細を文字にして、結界に映し出すの。結界の一部の色を細かく変える事でね。【空間探知】の投影と似たようなものだよ。向こうは形の変化だけどね」

「器用ですね。セレーネ様の発想力の賜物でしょう」

「ふふん!」


 セレーネは結界魔術【投影結界(とうえいけっかい)】と【演算処理】と【魔術高速演算】を取り付けて、投影機能を持たせる。【投影結界】は【空間探知】にも利用しているもので、【空間探知】では形を、ここでは色を変化させる事で処理した情報を投影させるような仕様になっている。


「それじゃあ、今度こそ起動試験をするね」

「はい」

「分析する対象は……【空間転移】で良いか」


 セレーネは【空間転移】の魔術陣を分析に掛ける。魔術陣を取り込んだ自立思考型魔術道具は、次々に情報を処理していき、【空間転移】を構成する要素を次々に映し出していく。


「う~ん……分析は上手く出来ているみたいだね。うん。情報の参照も出来てる。これなら新しい魔術陣を取り込んで分析に掛ける事が出来るし、それの最適化もやってくれるようになる」

「最適化もしてくれるというのは?」

「無駄な部分の洗い出しと訂正案を出してくれるの。いくつかあると思うから、それを自分で決める必要があるけどね。う~ん……これは改良しないと駄目だなぁ」


 セレーネは、今の状態を見て満足してはいなかった。



「上手く起動しているように見えますが」

「うん。分析はね。でも、これだけだとちょっと使いにくいから、もう少し利便性を上げたいかな。例えば参照する情報をこっちで選択したり、色々と出来るようにするの。だから……入力機能かな。そういうのを付けたいかな」

「なるほど。その機能は物理的に作るのですか?」

「ううん。魔術で作った方が機能的に使いやすいと思うし、壊れる要素が減るでしょ?」

「そうですね」


 セレーネは実際に起動して分析するのを確認した時、こちらから入力する事が出来るものが魔術陣しかないという事に気付いた。それでも十分な機能を持っているが、その他にキーワードを入れる事で、より正確にセレーネが欲しい情報を得られるようにするのと同時に、セレーネが求める魔術陣を出せるようにしたいと思ったのだった。


「う~ん……入力した情報を【演算処理】に入れる形で良いから、その入力機能だよね。入力内容は文字にするのが良い。文字から【記録媒体】にはちゃんと文字も記録してあるから、そこで参照出来ると思う。結界魔術で作るかな。紙に魔術陣を転写するみたいに、こっち側に紙に書かれた内容を転写する方法……いや、読み込みかな。よし! こんな感じ!」


 セレーネはミーシャの前で紙に構想を書いていく。


「なるほど。情報の入力は紙に書いたものを読み込ませるものと直接言葉を入れるようにすると……ふむ……読み込みは色の識別に特化させた知覚系統魔術にする……入力方法は魔力によって書き込む方式ですね」

「うん。アイデアとしてはあったからそれを使う事にしたの。問題なく使えるよね?」

「そうですね」

「ここまでいけば、後は出力装置も欲しいな。これは転写を上手く使えば出来るかな。ここに直接付けるよりも外部装置として取り付ける形が良いかな。うん。一つ一つ確実に作っていこう」

「はい」


 セレーネとミーシャは、より精密な入力装置と分析した結果を出力する装置を作り上げる。この装置を作るのには二日を要した。何度も調整を重ねていき、問題なく取り付ける事は出来たが、その分装置は大きくなる。


「う~ん……まぁ、仕方ないか」


 ここからの小型化を今後の課題として、セレーネは起動試験を行っていく。

 前回同様に問題なく起動する。ここから紙に書いた【水球】の魔術陣を読み込ませる。すると、しっかりと【水球】の名前と魔術陣、その効果が投影される。紙からの読み取りも問題なく出来ていた。


「よし。それじゃあ、こっちの入力も試そう」


 魔力で文字を書いて検索に掛けると、すぐに【水球】の魔術陣が出て来る。


「うん。こっちも問題なし。出力装置の方は……」


 出力装置に紙を通すと、結果に出ていた【水球】が紙に転写される。出力装置にはロール状にしている紙を用意しているので、長い結果になっても問題なく転写出来る。


「こっちも問題なし。後は色々と思考させていきながら、問題がないか確認していくかな。後は、【記録媒体】の量産だね。ここばかりは現状変えようがないから、替えは用意しておきたいし。これは私一人でも出来るから、次は【空間転移】だね。こっちはシンプルだから、そこまで時間が掛からないけど……素材が足りないから、また今度だね」

「はい。シローナ様のお帰りを待つ事にしましょう」


 ここからは魔術道具に問題が発生しないかの確認をしながら、シローナが素材を持って来てくれるのを待ちつつ、【空間転移】の構想を洗い直していく。

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