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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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製作開始

 理論を整えたセレーネは、早速自立思考型魔術道具の製作に取りかかった。並行して、【空間転移】の魔術道具の製作もしていく。これにはミーシャも手伝っていた。

 二人の姿は別邸の実験室にあった。セレーネは、魔力の通りが良い金属を選定していく。


「魔純鉄よりも魔力を含ませられる金属が良いな……魔純金は使えるかな?」

「鉄よりも柔らかいものですから、ミスリル覆いつつ、更に魔純鉄で覆うのが良いかと」

「それって何か意味があるの?」

「中核を担う部分を守りつつ、中心から外側、外側から中心へと魔力を伝導していきます。ただ一周させるよりもこうした方が処理回数は増えます」

「へぇ~、じゃあ、中央に頭を作る感じかな。全体の掌握をするための魔術結晶を入れるって事でしょ?」

「はい」


 セレーネは事前に作っておいた情報処理魔術【制御術式(せいぎょじゅつしき)】の魔術結晶を取り出す。これは接続されている魔術が暴走しないように調節するためのもの。一定以上の出力を出そうとすれば、そこで中断させるようになっているのだ。

 まずは【制御術式】の魔術結晶を収納する容器を、魔純金を成形する事が作り上げる。大きさは両手では包み込めない位の小ささだった。

 半球状の状態にして、その中央に魔術結晶を入れる台座を作る。そして、そこから魔力の通り道を刻み付けていき、外周上に作った窪みに繋げる。その窪み同士も一周回って繋がるように魔力線を繋げていく。ミーシャにも見てもらいながら細部を修正していき、二重、三重に確認をしてから、【制御術式】と【演算処理】の魔術結晶を填め込んでいく。


「【魔術高速演算】も入れたいなぁ……」

「それでしたら、上下に入れて補助するのは如何でしょうか?」

「それが一番無理がないかな」


 セレーネは、球体の上下に一つずつ窪みを作って、【魔術高速演算】の魔術結晶を填め込む。それを全ての【演算処理】に接続させる。これで二つの【魔術高速演算】が全ての【演算処理】をサポートする事になる。


「これで良し。魔力も全部に通るし、問題なく魔術結晶も発動してる」


 起動確認を行った後、魔純金よりもある程度硬い緑色の金属であるミスリルを加工して先程開発した球体を包み込むような窪みのある半球を作った。大きさは一回り大きい程度。そこに同じような処理を施して、魔純金で作ったコアを包み込む。

 起動確認をしてから、更に魔純鉄で覆い同じような処理を施す。結果、その大きさは人の頭とほぼ同程度となった。


「う~ん……大きいかな? それに結構重い……」

「中身が詰まっていますので、そうなるのは仕方ないかと。起動確認に問題はないようですね。この調子で進めましょうか」

「うん。中心装置はこれで良しとして……記憶領域だね。これを量産するの。ミーシャちゃんも手伝って」

「はい。こちらは魔術結晶ではなくて良いのですか?」

「うん。これなら結晶にしなくても機能するでしょ?」

「そうですね。量産する事を考えればこちらの方が良いでしょう。魔純鉄で作る事になりますので、重量も上がりますが」

「まぁ、一枚一枚取り出す事も出来るから大丈夫だと思う。まずは板の量産。このくらいの薄さと大きさね」

「はい」


 板を何千枚も用意しないといけないので、セレーネとミーシャは、軽く談笑しながら板を増産していく。そうして出来た板は全て【空間倉庫】にしまっていく。


「よし! 後は情報を刻むのと入れる箱とコアを置く台座だ!」

「はい。それは明日にしましょう」

「えぇ~……」


 セレーネは不満そうな表情をするので、ミーシャが実験室の入口を指差す。その誘導に従って視線を向けると、そこには優しく微笑むカノンがいた。


「お嬢様。実験室に入られる前に私が伝えた事をお忘れですか?」

「う~ん……あっ、ご飯前にお風呂」

「はい。今のお時間はお分かりですか?」


 セレーネが窓を見ると、外はかなり暗くなっていた。どう見ても夕食の時間が近い。カノンが迎えに来てもおかしくない。ミーシャも外を気にせずに作っていたため、カノンの気配に気付いてようやくもうそんな時間だったのかと気付いたのだった。


「全く……先にお風呂に入りますよ」

「は~い。ミーシャちゃん、また明日ね」

「はい。また」


 セレーネとカノンはミーシャを見送ってからお風呂に入り、夕飯を食べてからいくつかの板に【記録媒体】の魔術陣を刻んでから眠りに就いた。

 そして、翌日。同じ時間に来たミーシャと一緒に魔術道具作りを再開する。作るものは【記録媒体】を収納する箱だ。セレーネは昨日の夜に全部を一気に入れる箱ではなく、一定数を入れられる箱をいくつか作って利便性を上げようと考えていた。


「こんな感じ。大体百枚くらいかな。似たような記録で合わせておいて、この箱を入れ替えるだけで内部の記録を変えるって感じ」

「なるほど。それは良い考えです。作るものは増えますが、このくらいの箱でしたら、私が作れますので、セレーネ様は魔力線などをお願いします」

「うん」


 分担をして次々に箱を作っていく。ミーシャの箱作りの方が早く終わるので、その後にミーシャは大元の箱を作り始めた。セレーネから設計図を見せて貰っているので簡単に作る事が出来る。

 その間に、セレーネは魔力線などを丁寧に引いていった。こればかりは適当にやる事は出来ないので、しっかりと丁寧にやる必要がある。


「こんな感じかな」


 箱は棚のようになっており、十枚ずつ収納する事が出来る。それが十段あるので、全部で百枚入れる事が出来る。セレーネは一つ目の箱が出来た段階で起動試験をしていく。


「セレーネ様。こちら箱は、このような形で良いでしょうか?」


 ミーシャに言われて、そっちの確認をしていく。


「うん。これなら全部入れても余裕がありそうだね。ちょっと大きすぎたかな?」

「こちらは置いたままにするものですから、このくらいの大きさでも問題はないと思います。もし別の場所で使うとなれば、そちらにこれと同型のものを作れば良いかと」

「【記録媒体】とコアは持ち運び可能だから、これは気にしなくても良いって事?」

「はい」

「う~ん……まぁ確かに。それじゃあ、後は魔力線を引くだけかぁ……それが一番の難関だよね……」

「こればかりは私にはお手伝い出来ませんので、セレーネ様に頑張って頂くしかありませんね。この間に、私は【空間転移】の魔術道具の方の構想を見ます」

「うん」


 【空間転移】の方もミーシャに手伝って貰っているので、セレーネの構想メモを見てある程度修正した方が良いものや素材の選択などを書き加えていく。

 その間にセレーネはせっせと魔力線を刻んでいき、魔術道具として成立するようにしていく。この作業は翌日も続いた。

 そして、それが終わった後は【記録媒体】に必要な情報を記録していく作業もある。これらもミーシャが手伝う訳にはいかないので、ミーシャは常に見守るか【空間転移】の方の構想を修正するだけだった。

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