表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

176/423

自立思考型魔術道具の構想

 論文を提出した後、セレーネは【空間転移】の最適化作業を【最適化演算】に任せながら、情報処理魔術の研究を進めていた。


「う~ん……」

「まだ悩んでいるの?」


 唸りながらベッドを転がっているセレーネには、マリアとの買い物から帰ってきたフェリシアが訊く。この時、フェリシアはマリアに着替えさせられていた。


「うん。自立思考型魔術って名前で進めてるけど、この自立思考が難しくてさ。記憶域を増やさないといけないし、そうなると魔術陣を無限に大きくする必要が出て来るし。やっぱり、これも魔術道具として構想するしかないって思っても、その構想が上手く出来ないし。今の構想は、設置型【空間倉庫】の入口と同じで、複数の魔術結晶を繋げる事による情報処理の循環。これが思考に繋がってくると思うんだよね」

「情報を処理して処理して処理して処理してを繰り返す事で、私達が今しているような考え方が芽生えるって話?」


 セレーネの考えでは、人も自分が得た情報を頭の中で何度も処理してから知識にしている。それを魔術的に再現するとなれば、情報処理魔術に情報を循環させて処理し続けるのが一番と考えていた。


「うん。一回の情報処理で得た事を更に処理して精度を高めていく。処理する度に、魔術は知識を蓄える事になる。情報の取得手段は、口頭とか魔術陣への打ち込みでも良い。あるいは、それ専用の道具を作って、それを繋げる事で情報を仕入れるか……いや、それは手間過ぎるかな。それならパッと思いついた事を投げかけられる口頭が望ましい。

 ただし、これには弱点もある。そもそも知らない事の情報処理をどうやるか。今の情報処理魔術は、私の頭を連結して使ったり、ただの地形情報の読み取りだから大きな問題は無い。

 でも、詳しい事を知らない知識……例えば、最初から【空間倉庫】の魔術陣を教えても、この情報処理魔術は、『これは何?』って感じで処理に失敗しそうだし。処理した情報が溜まり過ぎたら、新しい情報は入らない。そう考えた結果が、記憶域の拡張。でも、沢山の事を記憶出来るようにするという事は魔術陣が大きくなる。

 これは、魔術道具に関しても変わらないでしょ?」

「そうね。大きなものになるかもしれないわ」


 魔術陣が大きくなるのに、魔術道具にすれば小さくて済むという都合の良いことはそうそう起こらない。なので、魔術道具を作るにしても、その道具の大きさはかなりのものになるだろうと考えられた。


「前から魔術道具の構想はしてたけど、改めて構想し直すと、色々と無理がある気がしてきてさ。まず記憶域の入れ替え。【記録媒体】を付与した道具を入れ替えるにしても、一回一回何の思考が必要かって考えないといけないでしょ? そこが邪魔かなって。むげっ……」


 ここで着替えを終えたフェリシアがベッドに座り、セレーネの転がりを止めた。転がりながら喋られると上手く聞き取り辛いからだ。


「【記録媒体】を付与するものを小さくしたら、記録出来る量は減るの?」

「う~ん……十を維持するくらいなら、トランプくらいの大きさがあればいけると思う。ん? トランプくらいの大きさ……薄さはさすがにそうはいかないけど、大体十枚束くらいかな。その一枚で記憶出来るのは、大体……本が十冊程度。それが、記録数十の根拠。

 でも、自立思考に必要な記憶量、記録量を考えると、万単位は欲しいから、それが最低でも千枚。それを格納出来るものとなると他の魔術陣の分も含めて、机くらいの大きさになるかな?

 やっぱり持ち運びが出来ないから、微妙な気がする……」

「【空間倉庫】に入れるのは? 【空間倉庫】は、セレーネの魔力から広がる空間だから常に傍にあるし、思考させて答えを聞く分には、直接触れている必要もないでしょう?」

「……【空間接続】で音声のやり取りをするって事?」

「それなら持ち運びながら使えると思うわ。ただ【空間倉庫】を一々開かないといけないデメリットがあるけれど」


 フェリシアの考えをセレーネは頭の中で反芻していく。その際思考を早めるために【高速演算】の力を借りた。


「う~ん……確かに……【空間倉庫】に専用の部屋を作って使うのは良いかも……それなら持ち運びって点が解決するから、設置型でも問題ない。私一人が使う分には何も問題は……ない。【空間倉庫】と繋げる【空間接続】を音声のみに絞る事で消費魔力は格段に減らす事が出来る。長時間使用するのであれば、【空間倉庫】に籠もれば良い。外の時間が分からなくなるから時計は必須だけど。じゃないと、カノンが怒るし」

「当たり前です」


 廊下などの掃除を他のメイド達とやっていたカノンがセレーネの部屋に来てそう言う。カノンに聞かれていた事を知り、セレーネが苦い顔をするのを見てフェリシアは小さく笑う。


「そもそも【空間倉庫】に籠もる事すら反対です。お嬢様から完全に目を離す事になってしまいますから」

「カノンの場合、目じゃなくて耳じゃん」

「どちらでも同じです。お嬢様を確認出来ない状況は受け入れられません」


 セレーネの侍従として、セレーネの居場所等は把握しておく必要がある。外で掃除をしていたとしてもカノンは耳でセレ-ネの様子を確認している。だが、入口を閉じた【空間倉庫】の中となると、カノンにはセレーネの居場所を見失う事になる

 本当に【空間倉庫】の中にいるのか。それすらも分からなくなるという点から、カノンはセレーネが【空間倉庫】の中に籠もるという事に反対していた。


「じゃあ、入口を開けっぱなしにする。別に入口に維持には魔力を消費しないし」


 入口を構成しているのは、【空間接続】だ。これは最初の発動と魔術陣を超える際の距離と物量以外に魔力を消費しない。なので、開きっぱなしに出来なくはない。ただ、入口を常に構成するので、そこをある程度意識し続ける必要がある。

 マルチタスクが得意なセレーネにとっては、特に困る事ではないが、面倒くさいというのが大きかった。


「いっそ、カノンも一緒に入るのは?」

「私が仕事を出来ないと、マリアさんが困りますから。別邸の運営も私とマリアさんで管理しているわけですので」

「そっか。う~ん……じゃあ、ひとまずフェリシアの案で行こうかな」

「それか分解をしやすくするという方法もあるわよ」

「分解か……組み立てるのが面倒くさいからなぁ。でも、良い案かも。思考部分を外せるようにしよう。【記録媒体】を入れ替える事も必要だけど、【記録媒体】が入った箱を複数用意して、思考して貰う事柄によって思考部分を入れ替えれば、ある程度の手間を省ける気がする」

「最初に記録や記憶する内容を選別する必要があるわね」

「まぁ、最初が面倒くさいのは仕方ないでしょ。魔術道具にするからミーシャちゃんの意見を聞いてくる。カノン」

「はい」


 セレーネはカノンを連れてミーシャの元へと向かっていった。セレーネの自立思考型魔術道具の製作が始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ