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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
アカデミー

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論文提出

 二週間が経過して、設置型【空間倉庫】の問題点は無しと判断された。空間の維持から温度の維持まで全てが基準を満たしたからだ。その論文を仕上げて、【空間接続】【空間倉庫】【空間探知】の論文と一緒に空間魔術の講師の提出箱に入れたところ呼び出しを食らってしまい、カノンを連れて研究室に来ていた。


「失礼します」

「来たか」


 そこにいたのは、痩せ細っている男性教師だった。眼鏡を掛けており、真っ白な髪から高齢と思われる事もあるが、まだ三十代である。


「私はハイネン・パールグレーだ。空間魔術研究室の講師をしている。君の論文だが、これは一体……」

「書いてある通りですが」


 相手がミルズやレイアーではないため、セレーネも丁寧は話し方になっていた。カノンから事前に言われていたからでもある。


「学園にて、君が所属していた研究室の教師にも確認を取った。この空間魔術の数々を君が開発したというのか?」

「はい」

「信じられん……空間魔術の発展を一人で何十段階も進めているようなものだぞ……情報処理魔術の論文も君が著者だった……こんなことが……」

「疑わしいのなら、論文の内容を全部説明しますか?」

「……頼む」


 ハイネンからそう言われたため、セレーネは論文に書いた【空間倉庫】に関する説明を一からしていく。それを聞いていくと、ハイネンは眉を寄せてため息をつく。


「はぁ……分かった。論文として認めよう。他の論文に関しても評価対象とする。正直、常人には使えなさそうだが、この理論などは興味深い。単位は全て三だ」

「ありがとうございます」


 一気に十二の単位を稼いだ。二年分の単位数を一気に稼いだ事もあって、セレーネは一安心していた。これで少なくとも一年以上は論文を提出しなくても問題はないという事だからだった。焦る必要がないという事は、じっくりと研究が出来るという事に繋がるのだ。


「他にも空間魔術に関する研究はあるのか?」

「はい。今研究している最中です。一、二ヶ月の間に論文として提出出来ると思います」

「……そ、そうか」


 ハイネンの背筋に冷たいものが走った。自分が立っている場所よりも遙か先にいるセレーネという存在に恐怖を感じていたからだった。


(これが天才か……? いや、彼女の論文からは、試行錯誤の繰り返しを感じ取れる。これの基礎段階から常に試行錯誤をしていたような……そうか。何故高等部で基礎魔術研究室に入っていたのかと思っていたが、彼女は基礎を疎かにせずに学び続けた。その結果、魔術陣への造詣が深くなったのか)


 ハイネンは、セレーネがそこまで辿り着いた理由に、基礎魔術研究室での経験があるのではと考えた。実際セレーネにとって基礎魔術研究室での経験は大きな影響を与えている。ただし、それは中等部時代の話になる。高等部に入ってからは自由に研究していたからだ。


「あの……もう帰って良いですか?」


 早く帰りたいセレーネは、表情を隠さずにそう訊いた。言われてハイネンも自分が無言だった事に気が付いた。


「あ、ああ。すまない。もう帰って良い」

「失礼します」


 セレーネは頭を下げてからカノンと一緒に研究室を出て行った。それを見送ったハイネンは深々とため息をついてソファに深く座り込んだ。


「はぁ……自信喪失だな……初心に返るか」


 ハイネンは後頭部を掻きながら、自分の本棚に向かっていった。


────────────────────


 アカデミーから帰ってきたセレーネは、ベッドに寝転ぼうとしてカノンに捕まって着替えさせられた。


「疲れた~」

「高等部の研究室でも丁寧な言葉遣いにするべきでしたね」

「むぅ……」


 セレーネは頬を膨らませながら起き上がって、クロの元に向かう。丸くなって寝ていたクロは、セレーネの接近に気付いて首を上げる。そんなクロの首を撫でてあげてから、セレーネは背もたれにして寄り掛かる。そして、カノンを手招きで呼んだ。

 セレーネのしたい事が分かったカノンは、小さく笑ってからセレーネの横に座る。セレーネはカノンの膝に頭を乗せる。そのセレーネの身体にクロが顔を乗せる。


「ちょっと寝る……」

「はい。おやすみなさいませ」


 カノンに頭を撫でられてセレーネは昼寝に入った。


────────────────────


 セレーネが昼寝に入って一時間程すると、マリアを連れたフェリシアが帰ってきた。


「ただいま」

「ん……おかえり……」


 セレーネは身体を起こして、クロを撫でてからフェリシアの元に向かっていき抱きついた。


「どうだった……?」


 フェリシアも論文を提出していたので、セレーネはその結果が気になっていた。


「三単位貰ったわ。【凍結結界(とうけつけっかい)】を正当に評価して貰えた感じね」


 【凍結結界】は、フェリシアが開発していた氷の結界だ。物理干渉しない結界を自分の周囲に張り、その結界内の温度を自分に吸収させるもの。自身の体温を維持しながら周囲の温度を氷点下まで下げる。平均体温以上になる熱は、結界外に放出する。そのため結界外の温度は高くなる傾向にある。

 効果で言えば、氷魔術による氷の生成速度が大幅に短縮される。また結界内に入ったものの熱を奪う。火魔術すらも熱を奪われて消える事になる。攻撃に加えて防御にもなるという点を評価されていた。

 欠点として常時展開型となるために、常に魔力を消費するという事がある。しかし最適化をしていき、消費魔力を削減しているために長時間の維持が可能となっているため、大きな欠点とはならない。これも評価の一つだった。


「良かったね」

「ええ、セレ-ネの方はどうだったのかしら? 四つぐらい論文を持っていったでしょう?」

「うん。全部三」

「まぁ、驚きもないわね。セレーネの研究は、そのくらいの価値があるもの。でも、全部で十二単位って……もう三年になるまでは論文を提出しなくても大丈夫ね」


 フェリシアは、セレーネの論文を読んでいたので、ほぼ確実にそうなるだろうと思っていた。そのため全てが三と言われても一切驚きもしなかった。


「まぁ、提出するけどね。【空間転移】があるし、情報処理魔術の方もあるし」

「一年の間に単位を全部修得してしまいそうね」

「う~ん……情報処理魔術の方は時間掛かりそうだから厳しそうだけど……まぁ、出来たら良いかな。そうしたら卒業になっちゃう?」

「卒業出来るだけの単位という話だから、四年は通えるはずよ。アカデミーで色々と学ぶ事もあるかもしれないし……そもそも講義すら受けていないわね」

「まぁ、大丈夫かな。色々と論文で出しちゃおっと」


 こうしてセレーネ達の初めての論文提出は終わった。セレーネもフェリシアも高等部で培ったものを出した結果を発揮出来ていた。

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