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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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情報処理魔術

 夏が過ぎ、少しずつ冷えてきた頃。セレーネはようやく情報処理魔術【|演算処理

《えんざんしょり》】【記録媒体(きろくばいたい)】【高速演算(こうそくえんざん)】【最適化演算(さいてきかえんざん)】を完成させた。

 【演算処理】は、【空間探知】に組み込んでいるように知覚系統魔術の情報を処理して次の魔術に送り出す魔術。

 【記録媒体】は、【演算処理】にて処理した情報を記録し保存する魔術。保存する情報の数は最大で十個。

 【高速演算】は、【演算処理】と組み合わせる事により演算速度を上昇させる事が出来る。更に、これを自分に使う事で脳の演算処理を補助する事が出来る。これにより魔術の発動時間が短縮される。

 また、自分の頭でも【空間探知】を使う事が出来るようになっているが、情報量が増えれば頭痛がする事は変わらない。

 【最適化演算】は、最適化したい魔術陣と多重魔術陣にする事で魔術陣を最適化していくという魔術。様々なパターンの処理後、消費魔力が最も低く効果が高い魔術陣を組み立てていく。しかし、これは自分の頭と繋げる必要があり、【演算処理】に繋いで独立させて最適化させる事が出来ない。セレーネは、魔術陣を最適化するための情報は【演算処理】内にないために、自分の頭を使うしかないのだと考えていた。

 これによって、【空間探知】を完成させるに至った。消費魔力もかなり抑える事が出来たので、セレーネとしては満足だったが、それでもセレーネと同等かそれ以上の魔力を持つ者でなければ、気軽に使う事は出来ない。ここからの最適化作業は【最適化演算】でも出来ないので、自分で見つけていくしかなかった。

 セレーネは、これらをレポートとして纏めてミルズに提出した。


「ふむ。計五つの魔術を開発したと……なるほどな」


 ミルズは、【空間探知】のレポートと情報処理魔術のレポートを何度も読んでいく。不備はないというよりも、ミルズはその点を一切心配してない。セレーネの傍にはカノンとマリアがいるからだ。

 問題は内容がミルズの知らない内容だという事。中間報告なども含めて細かく報告を受けているが、それでも何度も確認する必要はあるくらいに知識が不足していた。


「消費魔力の問題はあるな」

「うん。でも、それ以上の最適化は時間を掛けないと無理かなって」

「そうだな。【空間探知】は、結局自分では使えないようだな。【高速演算】を用いても頭痛は残るか……」

「うん。大丈夫かなって思ってたんだけど、結局脳のサポートをするだけだから、脳への負担を無くすまでは出来ないみたい」

「そうか。【高速演算】の使い道は魔術の発動時間が短縮されるとあるが?」

「魔術陣を描くのに、頭で魔術陣を考える必要があるでしょ? その処理が早くなるの。だから、こうして魔術が発動するまでの時間が縮まるの。フェリシアの【低温空間(ていおんくうかん)】と似てるけど、氷魔術限定で氷の物質を作る速度が早くなるのに対して、私のは魔術陣の構築速度が早くなるってだけ。氷魔術が発動するまでお時間なら、【低温空間】の方が早いよ」


 フェリシアが研究を編み出した【低温空間】は、氷魔術を使った時に凍るまでの早さを短縮するもの。なので、セレーネの【高速演算】とは違う。セレーネの【高速演算】とフェリシアの【低温空間】を合わせれば、魔術陣の構築速度と凍るまでの時間が短縮されるので、魔術を使うまでの時間が通常の半分以下になる。


「ふむ。なるほどな。つまり常時展開型か。今も使っているのか?」

「ううん。使いすぎると吐くから」

「ん? 負担が大きいとは書いてなかったが?」

「うん。一日使い続けて解除したら、何か脳が違和感を覚えるらしくて目眩みたいな感じがして吐いちゃった」

「論文にする時は書いておけ」

「は~い」


 【高速演算】のデメリットとして、長時間使用後の感覚齟齬がある。これまで【高速演算】によりサポートを受けて高速で処理していた情報が、唐突に通常速度に戻ってしまうからだ。この速度の差により、脳が混乱状態に陥って、一時的に情報処理がパンクしてしまう。

 その結果、目眩などの症状を引き起こし、酷い時には吐き戻してしまうのだった。セレーネは、そもそも長時間使用を視野に入れていなかったので良いかと書いていなかったが、その注意事項は書いておけとミルズからお叱りを受けた。


「しかし、【空間探知】か。もう一度使ってくれるか?」

「うん」


 セレーネは、すぐに【空間探知】を使う。学園の一部の立体地図が現れる。生徒が教師などの人の姿が映し出された。コマ送りのように進んでいくところは変わらない。


「これに人の形を残している理由はあるのか?」


 ミルズは、【空間探知】で地図に人の形をしたものが映し出されているのを見て訊く。


「形が分かった方が、ダンジョンとかでどんな魔物がいるかが分かり易いでしょ? 変に生き物の気配とかで作ると、小さな鼠とかでも反応して困惑すると思うし」

「なるほど。言われてみればそうだな。下手すれば、虫にも反応するという事か。そこを除外して処理は出来ないのか?」

「えぇ~……でも、虫の魔物もいるでしょ? 鼠の魔物とかも。だから、除外しての処理は欲しい情報を得られない可能性があるよ」

「都合良くはいかないってわけだな。その理由が聞けたなら良い。このままでやるとするか……だが、これの公表か……レイアー、どう思う?」


 ミルズは、レイアーに話を振る。


「これに関しては、公表しても問題ないと思います。悪用しようにも【空間探知】を使う事も出来ないですし、そもそも多重魔術陣が基本になりますから」

「そうだな。【空間探知】と情報処理魔術に関してはセレーネの名前で公表する。これでこの魔術を使用した商品が作られる事になった際に、セレーネに金が行くだろう。まぁ、そもそも使えるかどうかが問題だけどな」

「ふ~ん……了解。じゃあ、論文にしてくるね。二つに分けた方が良いんでしょ?」

「ああ、情報処理魔術と【空間探知】で分けておけ。だが、情報処理魔術は、【演算処理】と【記録媒体】だけにしろ。【高速演算】と【最適化演算】は、別の論文に出来る」

「え~……じゃあ、全部で四つ?」

「そういう事だな。デメリットも全部書くんだぞ?」

「は~い。じゃあ、今日は帰るね。先生またね」

「はい。お気を付けて」


 ミルズへの報告を済ませたセレーネは、教室に戻っていってフェリシア達と共に屋敷へと帰った。

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