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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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報告

 王都に戻ったセレーネ達は、ユイ達と別れてすぐにシフォン達のお墓参りに来ていた。花を手向けて、二人に旅行やこれまでの事について話していった。


「さてと、これくらいかな。私もフェリシアも前より仲良くなったよ。だから、安心してね」

「また話したい事が出来たら来るわ」


 二人がそう言うと、風が吹く。今日は一度も拭いていなかった風が。

 二人はそれをシフォンとジーニーからの返事だと受け取り、カノン、マリアを連れて屋敷に戻る。その途中で、クリムソン家の執事が前に立ちはだかる。


「……お父様?」

「はい」

「はぁ~……仕方ない。フェリシアは……」

「私も行くわ」

「じゃあ、一緒に行こ」


 セレーネはフェリシアと手を繋いで、本邸へと向かって行く。そして、本邸に入った瞬間に、ラングリドから抱きしめられた。


「ああ、セレーネ! 話を聞いた時には心臓が止まるかと思ったぞ!」

「お父様は眷属じゃないから死んじゃうね」

「本当に大丈夫なのか!?」

「血を吸えば大丈夫だよ。カノンとお姉様から貰ったから大丈夫だよ」

「あなた。セレーネが苦しそうですので、それくらいに」

「あ、ああ、そうだな」


 ラングリドから解放されたセレーネは、ミレーユから優しく抱きしめられる。


「身体に変調はないのね?」

「うん。元通りに再生したから大丈夫。すぐにカノンも来てくれたし」

「そう。カノン。ありがとうございます」

「いえ。もっと早くお嬢様を優先すべきだったと考えています」


 ミレーユは、カノンが反省している内容を理解する。


(ユイ様を優先して考えるのは、爵位の関係で当たり前。それでも自分の主を優先するべきだったと考えているようね。肯定も否定も出来ない内容ね)


 娘を優先して欲しいという気持ちはミレーユにもある。だが、それでも覆してはいけない優先順位も存在した。そのため、ミレーユには何も言えなかった。


「そういえば、お兄様にも会ったよ。調査で向こうにいるんだってね」

「ああ。ダンジョンの破壊は珍しい事だからな。それにより起こる被害を確認するという事で派遣している。今後ダンジョンを破壊する際に想定される被害を算出するためだな。何十年もダンジョンを破壊する事はなかったからな」

「改めて調査してみる必要があったって事?」

「そういう事だ。とにかく無事を確認出来て良かった。テレサからダンジョンについては聞いているが、セレーネ達からも話を聞かせて欲しい」

「は~い」


 セレーネ達はラングリド達にダンジョンに関する情報を伝えていく。フェリシアとカノン、マリアの報告は、テレサと同じような情報だったが、セレーネのものは違った。


「全ての魔物はミノタウロス。ボスは大剣を持つミノタウロスと……確かに、これまでも他ではボスとして扱われるような魔物が道中に出て来るという事があり得た。問題はダンジョンが出現する際に起こったという違和感か……」

「私もよく分からないけど、これ私が感じた事を元にフェリシアとマリアと一緒に考えた推測のメモ」


 セレーネは【空間倉庫】の中からメモを取り出してラングリドに渡す。カノンが整理していたので、簡単に取り出す事が出来ていた。


「ダンジョン生物説か……ふむ……なるほどな。これを調査隊に渡しても良いか?」

「えぇ~……まぁ良いけど」


 まだ完全に調べ上げられた訳では無いので、セレーネとしては中途半端な情報を渡すのは気が乗らないのだが、必要な事だと考えたので渋々頷いた。


「それじゃあ、私達は帰るね」

「ん? 学園はまだなのだから、こっちに泊まっても良いんだぞ?」

「向こうにメモ残してるし、普通に研究がしたいから。お父様、お母様、またね」

「ええ。元気な姿が見られて良かった。今度夕食を食べに行くから」

「うん!」


 セレーネはラングリドとミレーユに手を振って、フェリシア達を連れて屋敷へと戻った。そして、【空間倉庫】を開けっぱなしにして、カノン達が荷物の整理をしている間に、セレーネは次々とメモを書いていく。このメモは、【空間探知】の改良案を更に細かく分解していくためのメモだった。


(必要なのは処理能力の向上……いや、それだけじゃないか。私の脳を使っている間は、向上させたところで頭痛は続く。処理する場所を脳以外にしないといけない。あっ……)


 そこまで考えたところで、セレーネは【空間探知】が【風探】を元にしている事を思い出した。


「お姉様! お姉様!」


 セレーネが大きな声でテレサを呼ぶと、テレサが部屋に入って来た。セレーネの【空間倉庫】に入っている荷物を回収しに来ていたので、屋敷の中にいたのだ。


「どうしたの?」

「お姉様って【風探】使うよね!?」

「ええ。知覚系は基本的に【風探】で済ませるわ」

「どういう風に使ってるの!?」


 セレーネは、テレサから【風探】の使い方を聞く。それが、【空間探知】の使い方に繋がると考えたからだ。


「風を放って当たった場所を知覚するだけよ。脳への負担を考えて、知覚するのは一瞬。それが広がっていくという形ね。だから、遠くまで行くと軽い頭痛を起こすけれど、ある程度は痛みがないのよ。その分、知覚した内容を覚える必要があるけれど」

「……カノン、これって普通?」

「【風探】を使いこなすには、必須の技能と言われています」

「そっか……やっぱり私には向いてないな。そうなると、やっぱり別処理が必要になるかぁ」


 セレーネはそう言いながら、紙にペンを走らせていく。そのメモをテレサも覗いていた。


「空間魔術で探知ね。でも、頭が痛くなると」

「うん。最適化して魔力消費を抑えるのは当たり前だとして、この頭痛がキツいから、これを頭以外で処理する方法を考えたいの。そうしたら、お姉様の【風探】にも使えるかもよ」

「そうね。仮に別処理にしたとして、それを頭に送ったら頭痛が発生すると思うわよ?」

「あっ……じゃあ、紙に転写?」

「紙がないと使えないわね」

「…………何かで映し出す?」

「そうね」

「空間魔術で作れるかな?」

「そこはセレーネ次第ね。それじゃあ、ルリナが呼んでいるから屋敷に戻るわ。頑張りなさい」


 テレサはセレーネの頭を撫でると、ルリナが待つ外へと向かっていった。セレーネは部屋を出るまで見送ると、すぐにメモに戻っていった。それだけ【空間探知】への興味が強いという事だった。

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