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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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ひとまずの安堵

 セレーネとフェリシアが湯船に浸かっている間に、身体を洗い終えたユイは湯浴み着を着て、同じく湯船に入った。


「セレーネ。今日は本当にありがとう。おかげで、命を拾うことが出来たわ」

「ん? うん。どういたしまして。ユイ達を助けるのが第一目的だったから、ちゃんと助けられて良かったよ。ユイ達は私達と違って死んじゃうから」

「っ……」


 それを聞いたユイは、湯船に浸かっているというのに、身体が冷え切るような感覚に陥った。自分が死んでいたかもしれないという事の再認識に加えて、そんな状況をセレーネに押し付けていたという事の再自覚したせいだった。

 自分の公爵令嬢という立場から、最優先されるという事に関しては慣れている。それでも友人となってくれたセレーネ達に危険を押し付けていたというのは、ユイの罪悪感を刺激するものとなっていた。


「それに、あの状況だとユイとメイから血を奪っていただろうから」

「えっ?」

「魔力が限界過ぎて、吸血衝動が起きてたんだ」

「そういえば、あの時セレーネの髪色が変になっていた気が……」


 ユイは、助けに来てくれた時にセレーネの髪色が変色し始めていた事を思い出した。その時は極限状態になっていたため、ユイもあまり気にしていなかった。だが、改めて考えてみればおかしな事だったという事に気付いたのだ。普通の人は、そんな簡単に髪が変色しないからだ。


「うん。吸血衝動が起きると、真祖としての面が強くなって、髪の色も変わっちゃうんだ。まぁ、今みたいにちゃんと戻るんだけどね」


 セレーネは、自分の金髪を見せながらそう言う。カノンとテレサの血を飲み、完全に魔力と血を補給したので、吸血衝動も治まり髪も元に戻ったのだ。


「本当に危険な事を強いてしまったのね……」

「私が好きでやった事だから気にしないで良いよ。二人が無事だっただけで嬉しかったし」


 これはセレーネの本心だ。そう思う強い理由は、やはりシフォンとジーニーの事があったからだった。また親しくなった友人を失う事になる事になるかという恐怖もあった。友人を失わないで済んだ事をセレーネは嬉しく思っていた。

 セレーネがそう考えている事にユイも気付いた。なので、ユイもこれ以上は何も言えなかった。セレーネが得た気持ちを否定する事に繋げてしまうかもしれないと考えたからだ。


「それに、おかげ色々と学びを得たしね」

「学び?」

「うん。新しい魔術のね。【風探】を空間魔術に置き換えたものとか氷魔術と闇魔術の複合魔術とか知覚系の魔術は、全然適性がなかったから、このまま改良して、ちゃんと使えるようにするつもり。これが新しい研究かな。また空間系になるけど」


 セレーネの言葉に、ユイは少し困惑していた。


「そんな簡単に魔術を作る事って出来たかしら……?」

「元にしている魔術があるし、既存の魔術を組み合わせただけだから、割と簡単だよ」

「そう言えるのは、セレーネくらいのものよ。私も即座に作り上げる事は出来ないもの。私よりも魔術陣に触れている時間が長いからかしらね。最適化するためにも色々と触れ続けていたでしょう?」

「そんなものなのかな? まぁ、最近複合魔術の論文を読んでいたっていうのもあると思うけどね」


 セレーネはそう言いながら、フェリシアの肩に頭を乗せて寄りかかる。のぼせた訳ではなく、ただ疲れが出ているだけだった。


「そろそろ出た方が良さそうね」

「そうね。セレーネ。出るわよ」


 浴室から出たセレーネ達は、タオルで身体を拭き着替える。髪もしっかりと乾かした後、リビングに来ると、マリアが食事を並べていく。一人で三人の世話をする事になっているのだが、マリアは滞りなく全員の世話をしている。

 そこにカノンが戻ってくる。手洗いなどを済ませた後、メイド服に着替えてリビングに入ってきたのだった。


「カノン。どうだった?」

「一部地形の変化で崩れている場所がありましたが、大きな問題などはなさそうです。魔物除けの結界も問題なく機能しているようですので。途中騎士団の方と鉢合わせたので、事情を説明し、周辺警戒をお願いしています」

「そっか……そういえば、ここがダンジョンの入口になったんだよね? なんで、屋敷は無事なの?」


 ダンジョンの入口になったのなら、屋敷も消えているのではないかとセレーネは考えていた。


「そのまま放置しておけば、当然屋敷はなくなります。ですが、ダンジョンを壊せば、元の空間に戻りますので、こうして屋敷は戻ります。一時的になくなっている事は事実ですので、戻った際に多少のズレのようなものが起こるのです」

「それが地形の変化?」

「はい。これが何故なのかは分かっておりません。そもそも元々あったものがどこに行っているのかも分からないのです。ですが、お嬢様は何か気付いておられるのでは?」


 カノンがそう言うので、他の全員がセレーネを見る。見られたセレーネは、マリアに口を拭かれているところだった。


「ん? うん。まぁ、ある程度は分かるけど、どこに行っていたかは分からないかな」

「ある程度は分かるの?」


 ユイの確認に、セレーネは頷く。


「うん。あれは、【空間接続】に似た魔術だよ。私が見た限りだとね。多分空間を繋げるわけじゃなくて、空間の入れ替えか移動をしてるんだと思う。多重魔術陣だから、ちゃんと全部の魔術陣の構成を見られたわけじゃないんだけど、まぁ、一部からでもそう想像出来るかな。ただ、普通は使えないような魔術だと思う。カノンがダンジョンコアを破壊した時、膨大な魔力が魔術陣に流れていったから。仕組みはよく分からないけどね」


 セレーネは、カノンがダンジョンコアを破壊した際に見えた魔術陣と現象からそう考えていた。


「さすが、空間魔術に精通しているセレーネね」


 セレーネの説明に唖然としつつも、ユイはセレーネだからという事で納得出来た。それだけセレーネが空間魔術について詳しいという事を知っているからだ。


「セレーネの魔力でも無理なの?」

「うん。あの時の魔力の量は異常だったから。あの大きな魔術結晶も魔力を多く蓄えるためっていう事じゃないかな。そうだ! 紙に書いとかないと! 先に部屋に戻ってるね!」


 セレーネはそう言って部屋へと駆け出していった。


(疲れもあるのに……まぁ、お嬢様は魔術好きだから仕方ないか)


 セレーネを見送ったカノンは、セレーネが使った食器を流し台に持っていく。


「マリアさんは、メイさんをお願いします。こちらは私が」

「分かりました」


 カノンとマリアは、いつも通り役割を分担して行動していく。フェリシアとユイはしっかりしているため、少し放っておいても問題ないという事も大きかった。セレーネの位置は二人とも逐一確認しているので、そちらも問題ない。


(想定外が重なったけれど、ひとまずは脱したかな)


 カノンは、洗い物をしながら内心安堵していた。

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