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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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無事(?)の再会

 セレーネ達は、屋敷の外にいた。瞬時に景色が変わったので、セレーネも少し驚いている。そこにフェリシアが駆け寄って来た。


「セレーネ!」

「フェリシア。無事で良かった」


 テレサの腕から降りたセレーネは飛びついてくるフェリシアを受け止める。フェリシアは、力強くセレーネを抱きしめた後、その身体を確認する。千切れた服と血塗れの身体を診て、フェリシアは顔を曇らせる。


「セレーネは……無事ではなかったみたいね」

「うん。でも、今は大丈夫だよ」


 セレーネがそう言うと、フェリシアは悲痛そうな表情になりながら、セレーネを更に強く抱きしめる。それだけフェリシアがセレーネの怪我を重く受け止めているという事が分かる。セレーネは、フェリシアの背中を撫でながら、【空間倉庫】を使う。


「カノン」

「はい」

「マリア、治療はしてあるけど、メイが怪我をしたから、メイの替えの服と身体を拭くタオルを用意して」

「分かった」


 セレーネは、すぐにカノンとマリアに指示を出した。カノンに関しては、名前を呼ばれただけで、やるべき事を察して行動している。マリアも二つ返事で行動を始めた。


「ルリナ」

「はい。旦那様への報告ですね。ユイ様から魔動車の使用許可を貰い次第、すぐにでも」

「許可するわ」


 カノンと一緒に【空間倉庫】から出て来たユイがテレサ達の話を聞いてそう言った。メイはカノンに背負われて、すぐに屋敷へと連れて行かれる。


「この事はお父様にも報告しないといけないから、私も手紙を書いてくる。ルージュ公爵家に届けて貰える?」

「ええ。分かったわ」


 ユイもすぐに屋敷に戻ってルージュ公爵に報告するための手紙を書く。その間に、テレサとルリナは、王都に戻るための準備を始める。今のテレサ達は寝間着の状態なので最低限着替えなければいけない。


「フェリシア」

「セレーネはお風呂からね」


 フェリシアは、セレーネを背負ってお風呂まで連れて行く。それと同時に、カノンがセレーネとフェリシアの着替えとタオルを持ってきた。セレーネ達の行動を先読みして、メイを連れていった後に用意していたのだ。


「お嬢様をお願いします。この場はマリアさんにお願いしておりますので、後の事はマリアさんに。私は周囲の確認をして参ります」

「でも、カノンは血が……」

「大丈夫です。既に大分回復はしていますので。お嬢様は、ゆっくりおやすみください」


 カノンは、セレーネを安心させるように撫でてから、短剣を腰に差して外に出ていった。その間に、セレーネはフェリシアによってお風呂で洗われる。こべり付いた血等を落としていくので、セレーネの身体から赤い液体が出てこなくなるまでに多少時間が掛かった。

 セレーネを洗い終えたフェリシアは、セレーネを後ろから抱きしめる。


「フェリシア?」

「セレーネが怪我を負った時、本当に怖かったのよ。セレーネが少し欠けたような……そんな感覚がしたの」


 フェリシアの抱きしめる力が強くなる。同時にシャワーを止めているのに、セレーネの身体に液体が滴ってきた。それがフェリシアの涙である事はセレーネにも分かった。


(実際、腕を引き千切ったから欠けてはいたんだけど……そういうのが原因じゃないよね……?)


 セレーネはそう思いながら、手を伸ばしてフェリシアの頭を撫でる。


「ごめんね。ちょっと無茶した」


 吸血衝動の昂揚感などにより、理性がほぼなかったセレーネは楽しみながら戦っていた。それは自身の怪我なども無視したものだった。セレーネが自身を制御出来る状態ではなかったという事もあるが、無茶をしていたのも事実だった。


「ううん。良いのよ。セレーネが無茶をする時は、誰かを助けるためでしょう? 私の時もそうだった。ユイ達を助けようとしたのよね?」

「まぁ、うん。割と考え無しではあったけど……」


 魔力が欠乏した原因は、セレーネが咄嗟に作り出した【空間探知】だ。魔力の消費効率が最悪の状態で使っており、そこに【空間接続】【空間倉庫】による大量消費が合わさった結果、魔力が枯渇しそうになり吸血衝動が起こった。ユイとメイを助けるという考えだけが頭にあったため、残りの魔力量をしっかり考慮していなかったのだ。


「セレーネの良いところであり、悪いところでもあるわね。でも、そういうセレーネだから、私は好きになったのよ」

「フェリシア……」


 セレーネは、その場で振り向き、フェリシアと対面になる。そして、ゆっくりと頬に手を伸ばして顔を近づけていく。二人の唇が付きそうになった時、セレーネが止まって浴室の入口を見た。


「マリア」

「げっ!? バレたか……」


 マリアは浴室の扉から顔を覗かせてそう言う。フェリシアは、少し顔を赤くしていたが、セレーネは特に気にした様子もなくフェリシアを抱きしめる。


「分からないわけないじゃん」


 セレーネの眷属になっている以上、セレーネはマリアの位置をある程度感じ取る事が出来る。なので、マリアが覗き始めた事に気付いたのだ。フェリシアは、セレーネに夢中になっており、全く気付いていなかった。だから顔を真っ赤にしていたのである。

 セレーネがフェリシアを抱きしめているのは、ただくっつきたいだけだった。


「どうしたの?」

「二人の様子を確認しに来ただけ。体調は大丈夫?」

「うん」

「なら良かった。メイさんは、まだ目を覚まさないから、先に皆でご飯にするよ。しばらくキッチンにいるから、何かあったら来て」

「分かった」


 マリアは、本当にそれを伝えに来ただけだった。それを言って戻ろうとしたマリアだが、何かを思い出したかのようにまた浴室に顔を出す。


「それとあまり裸でくっつくものじゃないよ。湯浴み着を着なね」

「分かってるよ!」

「あははは! それじゃあね」


 マリアはセレーネをからかうと、本当にキッチンに戻っていった。


「全くもう……」


 セレーネは、いつも通りなマリアに頬を膨らませつつ、フェリシアを抱きしめる力を緩めて少し離れる。


「失礼しちゃうよね」

「そ、そうね……」


 フェリシアは顔を逸らしながら頷く。そんなフェリシアの顔をセレーネは覗きこむ。


「フェリシア?」

「な、何でもないわよ」


 フェリシアはやはり顔を赤くしながら逸らす。そんなフェリシアに対して、少し眉を寄せたセレーネは、頬に両手を添えて、真っ直ぐ向かせる。


「セ、セレーネ?」


 戸惑っているフェリシアの唇に、セレーネは自分の唇を重ねた。フェリシアは驚いて固まる。


「したかったんでしょ? 私も同じだから分かるよ。それにフェリシアの事が大好きだからね」


 そう言って微笑むセレーネに、フェリシアは顔を赤くしながらも微笑んで返す。


「私も大好きよ」


 今度はフェリシアからキスをする。そうして、顔を離すと、二人同時に笑い合っていた。

 一方。そんな二人を隠れてみている人影があった。


(マリアに入ってくるように言われたけど……物凄く入りにくい状況じゃない! ど、どうやって入れば良いのよ!?)


 セレーネの眷属ではないユイは、セレーネ達にバレる事なく覗く事が出来ていた。だが、当人としては、この状況に困っており、どうやって入れば良いのか分からなくなり、二人が湯浴み着に着替えて湯船に浸かるまでの三分間ほど、ドキドキとしながら待つ事になった。

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