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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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起こる災難

 翌日。セレーネは日が昇る前のまだ暗い時間に目を覚ました。その理由はトイレに行きたいというわけではなく、周囲に違和感を覚えたからだ。


(カノンはいる……皆もいる……ユイとメイは……うん。多分いる)


 セレーネは、カノンとメイが話していた振動魔術の探知を使って、ユイとメイの寝息を確認した。周囲の人に変化はない。だからこそ、今感じているものが気持ち悪いと思っていた。


「カノン、カノン」


 セレーネがカノンに呼び掛けると、最初の一回目で目を開いた。


「どうされま……」


 すぐに身体を起こしてセレーネの話を聞こうとしたカノンは、耳を動かしながら周囲を見回した。


「何か変な感じするでしょ?」

「はい……近くにいた魔物が消えています。一体何が……取り敢えず、お嬢様は着替えていてください。私は皆さんを起こしてきます」

「うん」


 セレーネはカノンが全員を起こしている間に、服を着替える。その途中でセレーネは目眩を起こしたかのように視界が回るのを感じた。


(何で……いや違う……身体は直立してる……空間が歪んでる?)


 セレーネは、【空間接続】を使おうとしたが、その前に歪みが酷くなり魔術を使うどころではなくなった。そもそも自分が今いる座標が指定出来なかった。


「え? 座標が絶え間なく動いてる? いや、それだけじゃない。魔力の圧縮……?」


 セレーネは、感覚的に周囲の魔力が一箇所に集まっていくのに気付いた。それはセレーネが使う魔力圧縮そのものだった。


「ダンジョンの生成」


 この現象が起きる理由としてセレーネが考えた答えはダンジョンの生成だった。そもそも魔力圧縮自体がダンジョンの生成からヒントを得て編み出したものだったからだ。


「お嬢様!」


 視界が安定しない中で、カノンはセレーネの部屋に入って来た。セレーネに手を伸ばすが、その前に空間の歪みが悪化して、互いの姿が消える。

 視界が戻った時、セレーネがいたのは、石で出来た遺跡のような場所だった。セレーネ達はダンジョンの生成に巻き込まれた結果、その中のどこかに取り込まれてしまったのである。


「ダンジョン……カノンが近くにいないし、皆もバラバラ……いや、フェリシアとマリア、お姉様とルリナは一緒にいる。多分接触していれば一緒に飛ばされるんだ。皆は大分近くにいるのかな。私からは結構離れてる……う~ん……どうしようかな。ん?」


 セレーネがどう行動しようか迷っていると、カノンの気配だけが高速で動きセレーネを目指している事が分かった。


(まぁ、カノンならそう行動するよね。私がいるのは、ダンジョンの下の方。感覚的には、皆から十層以上離れてる。カノンと合流するのに十時間近く掛かるかな)


 セレーネが十時間と考えた理由は、ここが未開拓のダンジョンだからというのが大きい。さすがのカノンでも自分のところまで降りてくるのにとんとん拍子とはいかないはずだと考えているのだ。


「問題は皆が武器を持っていない可能性が高いって事かな。ユイとメイは大丈夫なのかな?」


 フェリシアとマリア、テレサとルリナは、それぞれ前衛後衛とバランス良く配置出来るが、メイの戦闘力を知らないので、ユイとメイが無事でいられるかが分からなかった。


「【空間接続】……は、無理か。阻害されている感じがする。魔力が濃すぎる? まぁ、いいや。取り敢えず、私も動こう」


 セレーネは【氷剣】で氷の剣を作りだす。そして、一度周囲を見回す。

 遺跡のような石材が積まれた通路は割と広い。人が四人並んでも歩ける程度の幅があり、天井も大人が三人積み重なってようやく触れられるくらいの高さがある。


「動き回るのに支障はなさそうだけど、その分大きな魔物が出るって考えた方が良いかな」


 セレーネが見回していると、正面から足音が聞こえてきた。カノンの気配はまだ近づいていないので、それが魔物である事を瞬時に察したセレーネは、氷の剣を構える。

 視線の先には、赤い体毛に筋肉質な身体を持ち、湾曲した太い角が側頭部から生えている牛顔の魔物がいた。セレーネは、その魔物の姿を授業で見たため覚えていた。


「ミノタウロス……」


 とあるダンジョンのボスとして数えられているミノタウロス。それが鼻息荒く歩いてきていた。武器は持っていない。だが、セレーネの顔の倍はある手のひらは、それだけでセレーネを殺すのに十分な凶悪さを持っている。


『ヴモオオオオオオオ!!』


 ミノタウロスは、セレーネを見つけると四足歩行で突っ込んで来た。それに対して、セレーネは土魔術【石杭(いしくい)】でミノタウロスの進行方向に杭の絨毯を敷く。その絨毯はどんどんと伸びていき、ミノタウロスの下からも生えてきた。

 しかし、それはミノタウロスの身体を貫く事なく砕かれた。


「皮が硬いのは教科書通りか……」


 ミノタウロスは、石の杭を砕きながら進んでくる。

 対して、セレーネは【風槌】の効果範囲を極端に狭くして放った。風の密度が通常の【風槌】の倍以上になり、ミノタウロスの頭に命中した。頭を貫く事は叶わなかったが、ミノタウロスを怯ませる事には成功した。

 セレーネは身体強化して、ミノタウロスに接近した。そして、その身体を斬りつけて後ろに抜けていった。


「浅い。これじゃあ、駄目だ。戦わない方が良いかも」


 セレーネは【氷槍】で作り出した氷の槍を圧縮して強度を高めたものを放つ。すると、貫通はしなかったものの身体に氷の槍が突き刺さった。


「強度の問題かな。う~ん……でも、多分こうすれば……」


 セレーネは即興で【氷槍】を改造する。

 その間に肩に刺さった氷の槍を引き抜いて、鼻息荒くセレーネを睨み付けた。


『ヴモオオオオオオオオオオオ!!』

「うるさいっての!」


 突っ込んでくるミノタウロスにセレーネは黒ずんだ氷の槍を放った。黒い氷の槍は、四足歩行で突っ込んでくるミノタウロスの肩に命中すると、突き刺さるだけでなく、そのまま臀部まで抜けていった。身体の半分を削り取られたミノタウロスは、地面にめり込んで倒れた。そして、灰となって消える。


「うん。闇魔術を組み込んだら、貫けるね」


 セレーネは【氷槍】に闇魔術の吸収と消滅の特徴を盛り込んで放ったのだ。その結果、触れた箇所を吸収して消滅した事によって、ミノタウロスの硬い皮を貫く事が出来たのだ。


「不格好な魔術陣。最適化したい……」


 ぶっつけで改造したので、効率が悪い魔術陣になっている。セレーネはそれを作り直したいと思っていたが、こんなところでそんな事をする余裕があるわけもなく諦めるしかなかった。

 ジッとしている訳にもいかないので、セレーネは歩き出す。


「ミノタウロスは傷を付けて、そこに魔術を撃ち込むのが正攻法なんだよね。でも、闇でコーティングしたら、しっかりと貫けるから、これで良いか」


 セレーネがやっている魔術の改造は、魔力の消費が激しくなるという欠点を持っている。だが、セレーネは真祖の魔力量でゴリ押ししているので、特に問題がないというだけだった。常人は正攻法としては使いたくないものとなっている。


「でも、ここがミノタウロスがいっぱいのところだったら、ユイとメイが危ないかも。ん?」


 セレーネは、カノンの動きが自分に一直線にならなくなった事に気付いた。


「カノンも同じように判断したかな。私達は死なないけど、ユイとメイは違うもんね」


 セレーネもユイとメイを探す事を最優先にして行動を始める。

 唐突に起こったダンジョン生成に巻き込まれたセレーネ達は、ここから全員で脱出するために動き出す。

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