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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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魔物解体と山登り

 三十分程でカノンが戻ってくる。返り血は落としているので、綺麗な状態で屋敷に入りセレーネに報告する。


「お嬢様。周辺の狩りを終えました。仕留めた魔物を解体しますので、保存をお願いします」

「あっ! 私もやりたい!」


 セレーネはテレサの膝から飛び起きて手を上げる。セレーネの頭頂部がテレサの顎を掠めていったので、ルリナは少しハラハラとしていたが、テレサは何事もなく平然としていたのを見て安堵した。


「内臓なども見る事になりますが」

「うん! 出来る事は増やしたいから」

「では、やりましょう。ルリナさん、何体か頼んでも良いでしょうか?」

「はい。お任せ下さい」


 ルリナが両手を握ってそう言ったので、カノンも頷き解体の準備をする。カノンが持ってきた魔物はブラックベア三体とグレーウルフ五体だった。

 カノンは、セレーネに教えながら解体するので、ブラックベア一体とグレーウルフ二体を担当する。残りはルリナが解体する。テレサから持っていくように言われた解体道具を持ってきて、早速解体を始めた。


「さて、フェリシア様とユイ様もやられるのですか?」


 セレーネと一緒に外に出てきているフェリシアとユイが来ているのを見て、カノンが確認する。


「見学よ」

「私も」


 フェリシアとユイは、解体には参加せずに見学だけする事になった。


「先に山に行っても良いのに」

「一緒に行った方が楽しいわよ。ほら、せっかくカノンさんが教えてくれるのだから、真面目に受けてきなさい」

「うん」


 フェリシアに背を押されてセレーネは、カノンの隣に並ぶ。セレーネは汚れても良い服に着替えている。


「では、ブラックベアは一緒に、グレーウルフは一体を一緒にもう一体を一人で解体しましょう。魔術を用いますので、しっかりと魔術陣を見ておいてください」

「解体も魔術を使うの?」

「はい。魔術を使わずに解体する方法もありますし、そちらでも品質に大きな差は出ませんが、解体が早く終わりますので。シローナ様も似たような解体をしていると思われます」

「ふ~ん……でも、道具は使うんだ?」


 セレーネは、カノンが置いている解体道具を手に持って言う。


「魔術だけでの解体は大雑把になってしまうので、道具を使った方が綺麗に解体出来る事が多いのです。初心者は、道具を使うのが良いでしょう」

「ふ~ん……どうやるの? 早く! 早く!」

「やる気があるのは良いことですが、刃物を持ってはしゃがないようにしてください」


 ナイフを持って跳びはねるセレーネをカノンが諫める。セレーネは、すぐに大人しくなる。


「は~い」


 セレーネは、カノンに習いながらブラックベアを解体し始める。一部内臓を魔術によって乾燥させて、瓶に入れる。そして、魔術で剥いだ皮の脂肪を落として鞣す。肉は枝肉の状態で、【空間倉庫】の食材冷凍庫に吊している。


「むぅ……」


 カノンと一緒にしっかりと解体出来たのだが、セレーネは不満そうにしていた。その理由は、皮に空いた穴と内臓を破いてしまった事により大きく切らなければならなくなった事に加えて、切り損ねた跡が残る枝肉にある。

 解体自体は全部出来ているが、失敗している箇所もあるので、セレーネとしては不満なのだ。


「では、次はグレーウルフの解体をしていきましょう。お手本を見せますので、今度はセレーネ様お一人で作業をしてください」

「うん!」


 セレーネは、カノンの手本を見ながらグレーウルフを解体していく。セレーネは慎重に作業していったが、それでもまた皮を破いてしまう。


「むぅ……ルリナ! もう一体頂戴!」

「えぇ!? もう解体しちゃいました……」

「むぅ……早い……」


 セレーネが解体する間に、ルリナは他の魔物を解体し終えていた。魔術での作業はテレサが手伝っていた。セレーネは姑のようにルリナが解体した皮を確かめる。


「綺麗……何で、そんな早く綺麗に出来るの?」

「慣れですね。テレサ様は解体をしてくださらないので」

「ルリナが適役というだけよ。手先が器用なルリナはこういうのが得意なのよ」


 ルリナが解体したものを全部【空間倉庫】に仕舞ったところで、セレーネは一度お風呂に入って身体を綺麗にしてから、動きやすい格好に着替える。フェリシアとユイも動きやすい服装に着替えて、ようやく山歩きが始まる。

 山には頂上までの道があるので、ある程度歩きやすくなっていた。それでもけもの道よりも歩きやすいだけで、疲れやすい坂道である事は変わらない。


「ふぅ……ふぅ……」


 ユイだけが息を切らして歩いていた。その背中をメイが押しているので、多少は楽になっている。


「ユイ大丈夫?」


 セレーネが少し下ってユイの隣に並びながら訊く。その顔に疲れた様子はない。


「よく……そんな元気で……いられるわね……」

「何でだろう? クロと走り回ってるからかな? ユイは運動が足りないね!」

「はぁ……本当ね……」

「あっ! あれ何!?」


 セレーネはカノンのところに走っていって、カノンの服を引っ張りながら近くにある木の実を指差す。


「あれは、オレンジですね」

「へぇ~、なんであるの?」

「偶々育ったのでしょうか。ユイ様から許可を頂けたのであれば、採っても良いですよ?」

「ユイ! ユイ! オレンジ採っても良い!?」

「い……良いわよ……」

「やった! カノン! カノン!」


 セレーネはカノンに肩車をして貰ってオレンジをもぎ取る。【水球】で洗い、果物ナイフを持ってきていたルリナが皮を剥いて、セレーネに食べさせていた。


「酸っぱ!? でも、美味しい!」

「それは良かったです。種に気を付けて下さいね」

「うん!」


 セレーネはルリナから次々に食べさせて貰う。嬉しそうに食べるセレーネに、ルリナも顔を綻ばせていた。


「テレサ様もこのくらい笑って頂けると分かり易いというのに」

「この子の感情表現が豊かなだけよ」


 ルリナの苦言を無表情で受け流すテレサに、ルリナは小さくため息を零した。テレサは、全く気にした様子もなく、セレーネを撫でている。


「本当に……セレーネは元気ね……」

「セレーネが言っていた通り、家でクロと走り回っているからでしょうね」


 ユイの隣に来たフェリシアがユイの独り言に答える。


「クロは大黒猫だから、身体が大きいし、体力も多いのよ。今回は初めて行く場所だから、お留守番して貰っているけど、普通に魔動車に付いてきて、そのまま遊び始めるくらいには体力のある子よ」

「つまり……セレーネは猫?」

「どちらかと言えば、犬っぽいけれどね」


 二人はどちらともなく笑い合う。


(普通にセレーネ様が怒りそう……)


 二人の会話内容を聞いていたメイは、内心苦笑いでそう思っていた。

 二人がそんな会話をしている間に、セレーネは、オレンジを食べ終えて、テレサに口の周りを拭かれていた。

 そんな寄り道をしながらも、セレーネ達は大自然の山を楽しみつつ登っていった。

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