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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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旅行二日目朝

 翌日。太陽が上がる前にカノンが起きる。そして、洗顔や着替え等の朝の準備をしながら、外の音に集中する。


(夜から変わりなし……魔物の数はそこまで多くないし、ここの結界のおかげか、一定距離から近づいては来ない。朝食を終えた後に、私が出て先に魔物を倒せば良いかな)


 朝の準備を終えたカノンは、キッチンに降りて朝食の準備を始める。それから十分後に、メイがキッチンまで来た。


「あれ? カノンさん。おはようございます。お早いですね」


 まさか自分のよりも先に起きている人がいるとは思わなかったメイは、少し驚いていた。


「おはようございます。周囲の警戒などもしたかったので」

「警戒……なるほど。猫人族としての聴力ですか。私には出来ない事ですので、ちょっと羨ましいです」


 そう言いながら、カノンと一緒に朝食の準備を進めていく。カノンの作業から作るものを予測して、足りないものを作り始める。


「種族の差は仕方ないと思いますよ」

「そうですよね……何かそういう探知が出来る魔術でも習ってみるのが良いのでしょうか?」

「探知系魔術ですか……色々と問題が多いものですよ」

「そうなのですか?」

「はい。例えば、振動魔術を用いての探知は、遠くの音の振動を耳元まで持ってきて増幅させる事にあるのですが、音量調整や振動の調整が繊細なので、少しの間違いで鼓膜が破れます。下手すれば気絶します。最悪死にます」

「えぇ……」


 メイは青い顔になりながらも、料理をする手は止めていない。カノンに関しても、話しながらも料理の手は一切止めていなかった。


「そもそも振動魔術を用いた探知は、全方位に放ったとしてもどこの音が聞こえているのか区別が付きにくく不便な点が多いです。それこそ音を聞き分ける力が優れていなければ厳しいでしょう。基本的には盗聴に用いるような魔術ですね」

「う~ん……私には難しそうですね……」

「そうですね……魔力を用いた探知方法もありましたが、これは論外ですし……」

「魔力探知でしたよね。それは私も聞いた事があります。一時期話題になっていたので」

「はい。魔力を放って魔力を持つ生物を感知するという方法ですが、第一に大気中の魔力にも反応するから情報量が多いです。第二に一番探知をしたい森の中などにおいて役に立たないのです。木々も魔力を保有しているので、生物の区別を付きにくいのです。魔物ほどの魔力を有していれば、ある程度区別は出来ますが……最初の問題である情報量の多さから魔力差を区別するのは難しいらしいですね」

「そんな問題があったのですね……」


 メイはそう言いながら、カノンの知識量に舌を巻いていた。


(セレーネ様達の教師を務めているという話は聞いていましたが、本当に納得の知識量です。それでいて、獣人族の身体能力などを兼ね備えている。セレーネ様の護衛兼お世話係としては、この上ない人選……私も頑張らないと!)


 カノンと自分の差を実感しながらも、メイは自分も負けないくらいにユイに貢献しなくてはと考えていた。

 そうして朝食の準備を進めていく中で、メイは一度ユイを起こしに向かう。それと入れ替わりに、テレサを連れてルリナがリビングに降りてくる。


「手伝います」

「お願いします」


 ルリナも朝食の準備を進めていく。その中でルリナはカノンに情報共有する。


「周辺に異常はありませんでした。近寄った形跡なども見当たりません。匂いに変化もありません」

「音に関しても同じです。結界は問題なく働いているということですね」

「一安心です」

「はい」


 ルリナも朝早くから起きていたが、朝食の準備はカノンに任せて別荘の周りを歩きながら周囲の確認をしていた。そこから戻って来て、テレサを起こし、リビングに連れてきたのだ。

 その後にフェリシアが降りて来て、ユイと一緒にメイも戻って来た。最後に来たのは、セレーネだった。横にいるマリアが疲労している事から、大分粘っていたのだろうとカノンは見抜いた。

 内心苦笑いをしながら、カノン達は朝食を並べていく。そして、セレーネ達が食べている間に、カノン、ルリナ、メイがお世話していき、マリアがそれぞれの部屋を掃除していく。


「今日はこれからどうするのかしら?」


 テレサがセレーネに確認する。


「う~ん……山歩きたい。カノン、良い?」

「はい。せっかく来たのですから良いと思います。では、私は先に出て魔物を倒して参りますので、ルリナさん、お嬢様とフェリシア様をお願いします」

「はい」

「気を付けてね」


 セレーネが上目遣いにそう言うと、カノンは優しく微笑みながら頭を撫でる。


「はい。すぐに戻って参りますので、しばらく良い子にしていてください」

「うん!」


 カノンは部屋に戻り短剣の準備をすると、屋敷を出て比較的近くにいる魔物を討伐しに向かった。

 カノンが討伐を終えるまでの間、朝食を食べ終わったセレーネは、テレサに膝枕をして貰いながら、フェリシアとユイと話していた。


「カノンって、どのくらい強いの?」


 ユイは純粋な興味から質問した。一人で討伐に行かせる程という事で、恐らく強いのだろうと予想出来るが、それがどの程度かは予想出来なかったからだ。


「魔術も使えるから、割と強いよ。私よりも強いし」

「え? でも、セレーネは剣も魔術が使えるでしょう?」

「カノンなら、普通に避けて近づいてくるから、魔術師からしたらやりにくい相手だと思うよ」

「えぇ……あれを避けられるって……」


 セレーネがフェリシアに使っていた結界の剣を飛ばす魔術をカノンなら避けられると言われて、ユイは唖然としていた。


「まぁ、ルリナもやろうと思えば避けられるんじゃない?」

「え? セレーネ様が魔術武闘会でお使いになられていた魔術でしょうか?」

「うん」

「あの速度が一定でしたら、身体強化をすれば避けられるとは思います。ですが、私であれば、盾で弾くように動くと思います」

「ルリナは、回避よりも防御に秀でているからそうなるわね」


 ルリナを理解しているテレサは納得したように頷く。魔術武闘会でセレーネが魔術を使っているところを見たというのも、そう言える理由になっていた。


「本当に強いのね。頭も良くて強いなんて、本当に凄い人なのね」

「うん!」


 セレーネは自慢気に笑いながら頷いた。カノンが褒められた事が自分の事のように嬉しいのだった。そんな調子でゆったりとしながら、セレーネ達はカノンが戻ってくるのをまっていた。

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